327 彼等を覚えていましたか?
「おもちー」
「うん、餅だね。おいし」
忍です。
今日はおとーさん以外の家族皆、おばーちゃん家でお昼ご飯食べてます。黄粉餅です。
なんか、餅ついたから食べにおいでーって。餅ついたって言っても、餅つき機でだけど。
で、従弟妹と叔母さん、神谷、菜美、なっちゃんと一緒に餅です。間違えた。餅食べてます。……って、最初に言ったか。
……従弟妹、とか叔母さん、とかってわざわざ言ったのは、覚えている方がどれだけいるのか不安だったからです、はい。
『…………』
しっかし、何て静かなんでしょうこの居間。
大人組(純兄込)の方は色々話したりしてるのに、なんで子供組はこんなに静かなんだ!
理由は簡単、食べてるからです。もぐもぐ。
食べ終わったら騒がしくなるよー。
「ふー」
「菜美ちゃん~、黄粉ふ~しちゃダメだよ~」
「あーい」
黄粉散った後なんだけど。光、なんでもうちょい早く言ってくれなかったかな……。
『…………』
で、また沈黙と。
「ごちそっさまー!」
「神谷もごちそさまー」
あ、岳と神谷が食べ終わった。
あたしも後二口くらい。ぱく、ぱく。
「ごちそうさまー」
「ごちそさまー!」
「菜美はまだ残ってるじゃん」
餅、丸々一個。
「うー……おなかいっぱい」
お代わりしてたもんねー。入りきらなかったのか。
「なっちゃ~ん~。菜美ちゃんお腹いっぱいだって~」
「どれくらい残ってるの?」
なっちゃん、口の端っこに黄粉ついてるよー。
「お餅一個~」
「あぁ、じゃあこっちに貸してー。私が食べるよ」
はいはい、あたしが食器下げるついでに持って行きますよー。光まだ食べてるでしょ。
「のこしてごめんなさい」
うん、それ言える子って少ないよ。いい子いい子。
なっちゃんに皿ごと残したの渡して、流し台に食器下げて、さぁこれから何しよう。
……と、考える間もなく。
「しのぶちゃん! ボールなげて! アタックするー!」
「あ、あ、神谷も! レシーブ!」
うん、なんでバレーボール?
「光がまだ食べてるでしょ? それ終わったらねー」
『えー』
光ー、さぁ早く食べなさーい。無理に詰め込まなくていいから。のどに詰まらせなくていいから。
「たけるくん! ボールなげて!」
またんかコラ。
「光がまだ食ってるだろー。って姉ちゃんが言ったろ」
あたしが言ったって事をわざわざ言う必要あるの?
「じゃあ、じゃあ、たかいたかいして!」
「はいはーい」
「神谷もー」
あたし一人で二人を高い高い出来るわけがないでしょうに。
「じゃあ菜美、菜美は岳にやってもらって」
「たけるくーん! たかいたかいしてー!」
……素直でいいわぁ。
「ほい、おいで神谷」
うわ、重。当然っちゃ当然だけど重い。
まぁ、高い高い出来ないほどでもないか。
「ほい」
いっかーい、にかーい、三かーいも投げたら流石にきついです。
「純兄ー」
「俺やったら他界他界になっから」
そりゃマズい。でも
「流石にそれはないでしょ」
「ん。正直に言う」
はい、正直にどうぞ。
「今餅と塩昆布に忙しい」
…………まだご飯中だったのね。
「忍姉ちゃん、もっかい!」
あーいよ。
この『もっかい』これから何回続くのかなぁ。