324 メリークリスマス、の朝
んー……寒ぃ。しかも暗い。
今何時だ? 時計時計。
五時七分……あぁ、暗いわけだ。
と言っても、眠くもねぇし、起きるかな。一階に下りてストーブ付けたほうが暖かそうだし。
純だ。
起きた。階段下りて、ストーブ点けた。
……そらすぐには点かんわな。石油ストーブだし。
さっさと顔洗って着替えるか。
がた
ん、誰か起きたか?
ぱたぱた
足音からして光だな。あ、静かになった。
…………
ぱたぱたぱた
また動き始めた。
光と忍が話してる……って、忍も起きてたのか。今日は早ぇな。
あ、さらに岳の声が加わった……おいおい、皆起きてんのかよ。クリスマスだからか? プレゼント確認するためにわざわざ起きてんのか?
そういや、昨日はいつもより早く寝てたな、あいつ等。
「お兄ちゃ~ん~! 純お兄ちゃ~ん~!」
ん、大分ストーブが暖かくなってきた。
「ん、メリークリスマス」
これは二十五日につかうのが正解。
「メリークリスマ~ス~! 見てみて~! サンタさん来たよ~!」
「そか、よかったな。何が来た? サンタが着てる服とスイカ頼んだんだろ」
まっかっかだな。
「どっちも来た~!」
……マジで来たのか。
「ほら~、スイカ~!」
……よくあるスイカのビーチボール。
そうだな、本物のスイカなんて一言も言ってねぇもんな……どちらにしても季節外れだけど。
あれ、でも今ならスイカって冬でも買う事は出来るんじゃ。
楽に手に入って、しかも安い方を買ったな?
「で~、ほら~! サンタさんが着てた服~! ぶかぶかだしきっと本物だよ~!」
あ、きゅうにどっか行ったと思ったら、パジャマの上からサンタ服着てたのか。
「あぁ、帰り、サンタ寒かっただろうな。ちょっと来な」
「え~? な~に~?」
「後ろ向け」
「はいはい~」
よし、この襟にくっついてた『大人用サンタ服 L』って札の紐を指で引きちぎって、札ごと回収。
片手で襟を直すふりをしながら(でないと何してたか怪しまれるから。面倒な事に)もう片方の手と口で、厚紙でできた札を破いてすぐそこにあったゴミ箱にポイ。
証拠隠滅。
「これでよし」
「ありがと~。襟直してくれたの~? 言ってくれたら自分でやったのに~」
自分でやられたらまずいから言わなかったんだよ。
「兄ちゃん兄ちゃん! お早よー」
「ん、お早よ。忍も起きてたんじゃねぇのか?」
さっきから全然音聞こえねぇんだけど。
「あぁ、姉ちゃんはサンタが持ってきた本読んでる」
……あぁ、ちゃんと持ってきてもらえたんだな、狩人シリーズ。
「それよりさ、見てこれ」
ん? つるつるの紙に黒い文字が書かれた細長い紙……
『毎度ありがとうございます
12月1日トイニャラス
ミンテンドー3D○ 1点
ビーチボール スイカ 1点
大人用サンタ服 L 1点
合計 26365円
お預かり 30065円
おつり 3700円』
どこの世界にわざわざレシートを同封するサンタが居るかっ! あぁここに居た。
何だよこれ。 金払えってか?
「凄くね?」
「……まぁ、ある意味すげぇよ」
「とっとこ」
「ちょい、岳」
「あん」
もうちょっとこっち来い。光がまだ居るから。
という意味で手招き。
なのに、
「……何で光も来るんだ?」
「内緒話なんて酷いよ~」
「…………やっぱいい。悪ぃな、岳」
「や、別にいんだけど。あ、光光! さっき見せ損ねたんだけどさ、見ろよこれ」
あーあー、もう俺知らね。一応ちゃんとフォローしようとはしたからな。
「サンタさんの馬鹿ぁ~!」
元はと言えば、サンタが現在進行形で着てる服を貰おう、なんて考えた光が悪い。
…………っつーことにしといてやろう。