318 ペーラン好きって珍しくない?
「…………し~の~ぶぅ~」
「桜ー? 大丈夫ー? 息できるー?」
「は~、す~、は~、す~、は~、す~」
うん、よかった。出来てるみたい。
忍です。
体育はペースランニング。走るの遅いのは前半、速いのが後半。
あたしはサボり、もとい見学。ちなみに理由はお腹痛い。勿論仮病。
先生が言ってたからね。受験に必要な成績には入らないって! 心置きなくサボれるというもの。
ごめんなさい、ちゃんと真面目にやってる人。
「後半組ー! アップしなさーい」
うん、前半組でなければ後半組でもないので関係なし。
ちなみに授業に出てたら前半組です。持久力無いから。20mシャトルラン40数回だし。
「はぁ~、ふぅ~」
「落ち着いた?」
「大分~」
「そか。脈計った?」
「うん~、15秒で37回~」
ハイハイ、37かける4は……7×4、28足す3×4、12の10倍で……
「148回かー、いいんじゃないの? あれ? 先生が言ってたいい脈拍ってこれ位だった気がするけど、違う気もしてきた」
まぁ、どっちでもいいけど。
「忍、記録用紙書いてくれ」「忍、コレ、書いてくれない? 別に書いてほしいんじゃないわよっ!」
了解ね、しーちゃん、玲奈は、どっち? 書いてほしいのほしくないの。
「あ……し、篠の書くのなら、別にいいわよ……」
いや、玲奈、無理しないでよ? 書いてくれる人居ないんでしょ? 皆もうペア組んでるしね。
「貸して、玲奈のも。2人分くらい余裕だって」
「あ、ありがとっ。別に、感謝なんかしてないんだからねっ!」
してください。書かないよ? 書くこと放棄しちゃうよ? いいのそれでも。
「忍さん。私のも」
中森も!? あぁ、そっかぁ、中森が前半だったら玲奈はそっちに記録頼むよな。
「一体あたしは何人分のタイムを記録しなくちゃいけないんですか」
「わたしを入れて4人分~」
……桜、君は気付いてないけどね。実は田中さんのもやってたんだよあたし。
5人分だぁ。
「頼みましたよ」
勝手に頼まれましたよ。頑張ろう……。
「ってか、桜も手伝ってよ」
「ごめんね~、わたし飛山さんの頼まれちゃった~。ラップの計算よろしく~」
いやいや、なんで手伝ってって言ったのにあたしの仕事増やしてるのよ。ラップの計算くらい自分でやってよ。
「よーい、スタート!」
なんかもう勝手に始めてるし。えーい、もう、やってやる!
……1周目。
2周目。
「忍~、これ、ラップ何秒~?」
「ちょっと待って。今しーちゃんと玲奈と中森が一気に来たから」
はい、1分の48、49、49秒っと。皆速ぇー。
「ん、どれ?」
えっと、1週目が49秒、2周目が1分37秒……速い。これ、最後まで走れるの?
「48だね」
「はいはい~、48~。忍は計算速くて頼りになるんだよね~」
言っとくけど、ペーランのラップの計算だけだからね。
速い人のは、60から1周前の秒だけ引いて、それを次のタイムの秒に足せば出るし。
ほら、飛山さんのは60引く1周目が11で、二周目の秒の部分は37だから、それを足して48。
とか言ってる間に3周目来たし。しかもちょっとばらけてきてる……当たり前かも知れないけどさ。
3人のラップ出してないよ。後で出しゃいいか。
「忍~、開いてる~?」
「開いてない!」
だからちょっと待って!
「はぁ、はぁ……忍、大丈夫か?」
しーちゃん、息きれてるのはそっちなんだけどね。
「ハッ、ハッ、ハッ、ふぅ……あら、全部ラップ出してくれてる」
えぇ、頑張りましたよあたしゃ。玲奈、褒めて?
「ありがとうございます、忍さん。やっぱり忍さんに頼んで正解でしたね」
中森や、そりゃぁラップを自分で出す手間が省けるという事か?
頭が疲れたぁ。
ペーラン、嫌い!