314 そういや居たなこんな奴
「……拙者、何故こんなところに居るのでござろう」
「にゃー」
「むむ。緑目殿、知るかと答えるのなら答えないでいただきたい」
緑の目をした子猫だから緑目殿なのでござる。聞いてない? では聞いてくだされ。
…………。聞きましたな? 緑の目をした子猫だから緑目殿なのでござる。
一t法師でござる。
拙者、何故ここに居るのでござろう。
裏山なのでござるが……はてさて、何故ここまで来たのでござろう。
もうこうなったら、山伏にでもなってしまおうか。……あれ? どうなったら山伏になるのでござるか?
「にゃー」
「知るかと答えるなら初めから答えないで欲しいと言ったでござろう?」
「にゃー、にー」
「む? 一人でぶつぶつとうっとうしいからつい答えてしまった……拙者、全部口に出していたでござるか!?」
「にゃ」
しまった……もう口には出さぬ! 拙者は誓うぞ!
「なぁー」
「緑目殿! アホらし、とはどういう意味でござるか!」
そして何ゆえそのまま去って言ってしまうのでござるか! はっ!
また思ったこと口に出していたぁああっ!
「うわ、何だこれ!? 小人!? 袴はいた小人!?」
はて、誰でござろう……。いつか見かけたことがあるような気がしないでもないでもないでござる。
忍殿が話していたことがあったようななかったような……。
あ、はんばーがーとやらを売っている店でバイトしているのを見たことがあるでござる! 写真店とか、こんびに、とやらでも!
思い出したでござる!
「サンゴの兄ちゃんでござるな!」
「いやいや、誰から聞いたんだ、それ。……ウソ、喋った!? 動いてる!? 人形じゃねぇのかこれ!」
人形とは失敬な。拙者はれっきとした、妖怪一t法師でござる!
「自分で妖怪っつったよコイツ……。えぇと、どうすればいい? で、出たぁー」
めっさ棒読みでござるな。何故逃げていかれるのでござるか。
……あれ? ま、また心に思ったこと喋ってしまったでござるぅうう!
「みぃぃつぅけたぁああ! 水攻弾!」
へ?
な、何でござるか!? 何でござるか!? いきなり水の塊が飛んで来たでござる!
「えぇいっ!」
ぎゃぁあ! こ、子供が……六つか七つくらいの女子がでっかい鎌を振り下ろして来たでござるぅっ!
「成」
痛っ、め、目の前に見えない壁が……!?
「凍」
こ、氷付けにされたでござる……てぇ、なんでござるかこの子供たちはぁあ!
「天! 斬! 剣! めっ、でしゅ! 妖怪違いでしゅよ!」
み、耳で歩く妖怪まで来たでござる……。
「えー、違うのかよー。似たようなもんじゃん!」
「全然似てないでしゅ! みゅーちゃん達が探してるのは猫娘でしゅよ!」
そりゃ確かに全く違うでござる。
「でも、世界間を勝手に行き来するのは禁じられているんだから、どちらにしてもこのチビ妖怪、もと居た世界に戻さなきゃいけないだろう?」
チビで悪かったでござるな。
「それもそうでしゅね! 捕まえるでしゅ!」
「おー」
何か追ってきたでござる! 訳分からないけど、摑まるのはごめんでござる!
「山の奥に逃げた!」
「追っかけるぜー!」
「おー」
「いくでしゅ!」
だ、誰か……助けて……。
む? 木の裏に人影が。手のひらを上に向けた手招きをしているでござる。
えぇい、ままよ!
木の横にスライディングでござぁる!
どしゃ。
……お、落とし穴……? しかもやたらめったら深いでござるぅううう!
「あーれぇー」