313 怒らせちゃいけません
「どーこだぁー! 岳くーん!」
「お兄ちゃん~! 修也くん~! 隠れても無駄だよぉ~!?」
あー怖。ひー怖。あー怖。
「ったく、修也が筆箱なんか投げなきゃこんな事にはなんなかったんだぜ?」
「…………だよ」
あぁ? なんて? 声小っちゃくて聞こえねーぞー。
「岳がムカつく奴じゃ無かったらこんな事にはなんなかったんだよ」
えぇ!? なんだよそれ!?
岳だ!
校舎の曲がり角に隠れて何とか光たちはやり過ごせたな……とりあえず。
何で追っかけられてるのかは全話参照!
あの後、落っこちてきたのがオレの筆箱って事がバレて、オレの筆箱投げるのは修也位だろうっつー、何ともばっちりあたりの推理を展開されてだな……とにかく、逃げるが勝ちっつーことで逃げた。
あ、でも家帰ったら絶対会うんだ……。
はー、なんで美代の奴あんなトコに居たんだよー。っと、これじゃ修也と同じじゃねーかよ。
「お前さ、さっきの授業ん時みたいに正直に言えねー訳? 正直に言って謝れねー訳?」
「お前の妹と友達は何するかわかんねぇもん」
「なっさけねぇー!」
「ならお前行けよ」
「無理。話聞いてくれなさそうだもん」
「なっさけねぇー」
まんま返してくるんじゃねーよ。
はー、二つ下相手に何やってんだろ。
あれだぞ? 兄ちゃんだったら、流しつつ解決の方に向かうし、姉ちゃんだったら、ちゃんと謝って、その上で何かされたら逃げるぜ?
オレ等謝ってもねーよ。
「…………アイツ等落ち着くまで、保健室のカーテンに隠れてようぜ」
でも謝る勇気持ってないのであった。ちゃんちゃん。
「うん」
修也も。
保健室。
被害者……つまり美代が居た。
しまった! そうか、美代の頭の上に筆箱落としたんだったぁ!
「ひーちゃーん! はーちゃーん!」
「村田さん、保健室で大声出しちゃダメでしょう」
「……ごめん、なさい」
び、びっくりした。美代がこんな大声出すなんて……。
ほら、修也もちょっと引いてんぞ。普段と違う事するだけで人の印象って全然違うのな。
「あー……美代ちゃん、ごめん。岳の筆箱当てちゃって……」
おい『岳の』って、いるか? なんでわざわざ俺のって言った?
「……いいよ。……そこまで、痛くない」
おー、石頭だな。
よしよし、これで一件落着!
……かと、思いきやぁ!
「お兄ちゃん~!」
「修也くん!」
『袋叩きの時間だよぉ~?』
一番問題なのが残ってた! 全然落着してねぇ!
「修也、逃げるぞ! 今日だけは仲間だ!」
「……逃げるのに仲間要るか?」
おいおいおい、言っちゃダメだろそう言う事。
「バラバラに逃げるのが普通じゃ」
「あたりめーだろ、わざわざ一緒に逃げるわけねーじゃん」
「じゃあやっぱり仲間要らねぇじゃん」
わぁったよ。
「じゃあお前も敵だぁっ!」
「極端すぎるだろ!」
仲間イコール味方。
味方の反対は敵だろ!