311 ただの休み時間だよ
「玲奈ー、おーい玲奈ー」
「ぴぇっ!?」
おぉ、ぴぇなんて悲鳴初めて聞いた。
忍でーす。
提出してて、さっき返された……と言うか、いつの間にかどーんって教卓の上に置かれてたノート配ってるんだけど、玲奈が受け取ってくれません。
いや、普通に机の上に置いときゃいいだけの話なんだけどね。
「な、何よ忍っ!?」
「兄に好意を寄せる女の子に興味を持たない妹が……居そうだなぁ」
どこに居るって言おうかと思ったんだけど。
「べ、別にっ! 別に好きなんかじゃないんだからねっ!」
「今更すぎない?」
「ほっといてよっ!」
あい分かった。
「忍……何で純は学校来ないのよ? 来てもすぐ帰っちゃうし……」
帰ってません。そのまま霊界へ行っちゃってます。逝っちゃってます?
帰ってこないこともあるようになっちゃって困ってるんだよー? こっちだって。
……あれ、あんまり困ってない気がする。居なくても大丈夫って事? あれ? 純兄って結局その程度って事? いやいや。……いやいやいやいや、きっとないよ。
「はぁ、私、嫌われてるのかな……」
「なんでそうなるの? 嫌いな奴一人で純兄が不登校になるわけないでしょーに」
授業だけ受けて休み時間はどっかに消えるよ。その時は。
「ねぇ、なんで来ないのよ?」
「色々忙しいんだよ」
多分、きっと、恐らく。
「……中学生が授業受けないで何するのよ」
……うん、思ったよ。あたしも思ったよ。言ってから。
それでもなぁ、多分忙しいんだろうなぁ。仕事無きゃ学校来るだろうし。
いや、たまに、仕事でもないのに霊体になってることあるなぁ。なんでだろ。
「まぁ、そのうち来るよ!」
「……何か隠してない?」
鋭い。そして、刺さるような半眼がなんか痛い。
「ねぇ、何隠してるのよ?」
「シラナイヨ」
あ、しまった。これじゃわざとらしい。
「純兄に聞かないと……」
「その純は何処に居るのよ?」
「それこそ知らないよ!」
絶対あれだよ、異世界か何か行っちゃってるんだよー。だって、昨日も変なおっさん……もといクローズさん追っかけて死神やって来たんだから! そういやあの中に純兄居なかったな。
あ! しまった! チョコスナック返してもらってない!
もういいんだけどさ、昨日の事だし。たった一つだったし。
「何やってんだー、お前等」
「なっくーん、純兄知らなーい?」
巻き込む作戦。やったからと言って何も解決しない。
「知らねぇよ、学校来てなかったんだから。それより、俺の消しゴム知らねぇか?」
もっと知らないよ。
「海中、あんたって純の幼馴染よね」
「あん? あぁ、まぁ……」
生まれた時からお隣さんだったもん。
はいはいしながらケンカしたことあるらしい。純兄の全勝、あたしとは引き分けらしい。おかーさん達曰く。覚えてるわけながろーが。
「純が授業サボってまで行きそうな場所とか、分からない?」
「はぁ? そんな急に言われても……あ、心当たりが」
あるんだ……。え、あんの!?
「皐月姉んトコじゃね?」
ここ何処だと思ってんだ。皐月姉居ないよ。
「誰よ?」
「近所の姉ちゃんだった人。あ、こりゃないな」
気付くのおそいよ。
「じゃ、あっこじゃね? 屋上」
「生徒行けないわよ」
いや、純兄だったら普通に扉すり抜けられるけどね。
「じゃあ、屋上前の階段!」
「行ってくる!」
早いな。単純ともいう?
「ねー、なんでなっくん、純兄の行くような場所の心当たりあるの?」
「そりゃー……幼馴染だし?」
「理由になると思ってんのか」
あたしは分かんなかったんだよちくしょー。なんかヤダ。張り合う必要まるでないけど。