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ただいま暴走中!  作者: 呪理阿
十二月なんだって暴走中
306/410

306 夏と野良猫

「にゃぁ~」

「にゃー」

「にゃぁ~」

「はいはい、にゃー」

「みゃぁあ~」

「にゃー……うん?」

 夏だ。

 猫の声がしたから、適当に返事したら……。すぐそばから聞こえてくることに気が付いた。

 見てみたら、居た。茶色のトラ子猫。トラ子猫って言うのか? どーでもいいが。

 …………どうしよう。家に猫が上がりこんでやがる。

「お邪魔します言ったか、お前?」

「…………」

 シカトかよ。

「礼儀は大事だぞ。お邪魔します位言えよな」

 あん? 今、『お前が言うな』って声が聞こえたような聞こえなかったような……聞こえてない聞こえてない。

「にゃぁ~」

「んだぁ? メシ寄こせってか? ガリッガリだもんなお前」

 ……猫って何与えりゃいい? 魚か? 鰹節か? どこにあったっけ。

 あ、ちくわなら冷蔵庫に父さんが買ってきた奴があったな。

 うん、あったあった。チルドルームに入ってた。開いてないが。

「ま、いっか。開けちまえ」

 びりっ

「ほーれほーれ、ちくわだぞー」

「…………」

 シカトされた。

 しかも椅子の下に逃げられた。えぇい、どないせぇと。

 取り敢えずちくわは駄目みたいだな。いただきます。

 うん、旨い。ちくわの味。

 ……さてどうしよう。

 忍呼ぶか? いや、まだ帰って無いな。猫じゃらしか何かねぇかな。あ、春の、猫のぬいぐるみがあった。

「ほれ、母さんだぞー」

「ふしゅっ」

 鼻で笑われた。……くしゃみか?

 猫のぬいぐるみの方は完全スルーされたな。結構リアルなんだが。ぬいぐるみの割に。

「大体どっから来たんだ? 首輪もしてねぇし」

「にゃぁ~」

「そーかそーか、分かる訳ねーだろこの野郎」

 野郎かどうかはともかく。忍じゃねぇんだから猫語は分かんねぇよ。

「家は母さんが猫アレルギーだから飼えねぇぞ?」

「ふしゅっ」

 いや『ふしゅっ』じゃなくて。噴霧器かテメェは。

「気持ちいー」

 撫でてみたら予想以上のふかふか。なんかもう手放したくない。でも飼えねーし。

「そろそろ帰んな。母さん心配してんぞー」

「にゃぁ~」

 ……可愛いって卑怯だ。

 思えば、忍ちゃん香ちゃんひーちゃん、ついでに春。皆皆卑怯だった気がしてきた。

 いや、記憶いまいちはっきりしてないから、勝手に思ってるだけだな。

「……これ、飛びつくかな」

 今着てたトレーナーに付いてる紐。

 フードの端っこに通してあったりする太めの奴。

「ほーれほれ」

「…………」

 見てはいるけど。見てはいるけど……飛びつかない。

「なっくーん、猫見てない?」

「目の前で見てるー」

 って、あれ? 忍? 帰ってたのか。制服着たままって事は、今帰ったとこか?0

「あー、多分この子だ」

「なんだ?」

「家の前にさー、ほら、こんな箱があったの」

 ピンクのかわいらしい箱。何か紙がガムテープで貼ってあるな……。

『お願いします! 猫アレルギーで飼えません! 捨てないで!』

「捨てた奴が捨てないでとか書くなよ」

「拾ったけど飼えないってことかもしれないよ。アレルギーらしいし」

 だったら直接頼めよ。有無を言わさずドーン! じゃなくてよ。

「どうすんだ? この猫」

「野良猫協会にでも預けますかー」

「何処だよ」

「野良猫が集まってできた協会としか言いようが無い」

 さよけ。

「まぁ、たまに拾ってもらえるから、それまで世話してもら……えるといいなぁ」

 おい。急に不安になったんだが。

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