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ただいま暴走中!  作者: 呪理阿
十二月なんだって暴走中
303/410

303 老けた二十歳の幽霊

「ね~、おじちゃん~」

『なんだい、お嬢ちゃん? ……俺はまだおじちゃんって呼ばれる年齢じゃないぞ』

「おじちゃん~って言ったのに反応したからおじちゃんだよ~」

『あ』

「馬鹿だな~、も~」

 言ってること逆じゃ~ん~。

『……で、なんだい?』

「おじちゃんはどうして死んじゃったの~?」

 光で~す~。

 お昼寝しようと思って~、日当たりのいいベランダに面した和室に来たら~……先客が居ました~。

 日本の狩人さんみたいなかっこうしたおじちゃんの幽霊~。ちゃんと背中に鉄砲持ってます~。

 よくうちのベランダに幽霊居るな~。

 お姉ちゃんも岳お兄ちゃんもここで幽霊に絡まれたことあるって言ってたし~。

『おにいちゃんはねー、むかぁああし昔、ここがまだ山だったころに』

「ここって昔山だったんだ~」

『……いや、今も山じゃないか? 斜面いっぱいあるだろう?』

「うん~、ここに木がいっぱい生えてた頃にどうしたの~?」

『足滑らせて崖の下に落っこちちゃったんだ』

「ドジ~」

『……ドジで悪かったな』

 いいのいいの~。

 あれ~? 何か私エラそう~?

「崖の下に落ちた後どうしたの~?」

『熊に食われた』

「昔々で始まったんだから~、そこは熊に助けられたって言わないとダメでしょ~」

『いや……そう言われても、そこで助けられたら俺、ここに居ないのだが』

 それもそうか~。

 ええと~、慰めてあげないといけないのかな~。

「よかったね~! 熊さんの役に立って~」

『え、えぇ? よかったの、か?』

「知らな~い」

『えぇ!?』

 折角慰めてあげてるのに質問なんかしてくるからだよ~。

「おいちゃーん、どうしておいちゃん、成仏しない?」

『……俺ってそんなに老けて見えるかなぁ、まだ二十歳なんだけどなぁ』

 びっくり~! どう見ても三十路超えてるよ~?

『なんで二人して驚くんだぁっ!』

 二人~……そういえばさっきの『おいちゃーん』って私が言ったんじゃなかった~。

「誰~?」

「久しぶり、ひーねぇ」

 斬くん~?

「びっくり~。大きくなってる~」

「せーちょーき」

 成長期なのか~。表情もなんだかすごく明るく豊かになってる気がするよ~。

「なんでこんなところに~?」

「仕事に付いてきた」

「そっか~。……何の~?」

 誰の~? の方があってるかな~?

「おじさん、何の未練があって五十年も無駄にぶらぶらしてるんですか」

『ねぇ、そんっなに老けて見える!?』

 あれ~? ……純お兄ちゃん~……。

「大丈夫大丈夫、三十くらいには見えますよ」

『俺は二十歳だぁああああっ!』

「えぇ?」

『何びっくりしてんだ!』

 お兄ちゃんが何か上着から出した~。紙~?

「あ、ホントだ。斬、おいちゃんだとかおっさんだとか言ってやるなよ」

『お前もな!』

 あの紙、何書いてあるんだろ~。

「大丈夫です、俺は二十一の奴何回かおっさん呼ばわりしたことありますから」

『だから何!?』

 ほんと~。だから何~? 何が大丈夫~?

「じゅーにぃ、何て読んだらいい? この名無しの権兵衛」

 酷い言われようだね~。名無しの権兵衛さん。

「ごんにぃとでも呼んでやれば?」

 名無しのが名字か~。

『確かに名前は権兵衛だが、俺の名字は『名無しの』じゃなくて七夜しちやだ!』

「はいはい、分かってます。で、七夜さん、五十年もこの世さまよって何したいんですか」

 お兄ちゃん~……投げやりだね~。

『む……俺の未練か?』

「そう」

『未練は……あったような気がするのにいつの間にか忘れて思い出せない未練を思い出すこと』

 …………そんなのが未練なの~?

「ごんにぃ、未練忘れたの?」

『あぁ……何だったのかな』

「だいじょーぶ、未練、普通は死んだら忘れる」

『え? そういうものなの?』

「純お兄ちゃん~、そういうものなの~?」

 何で手招き~?

 耳かせって~?

「そういうものだけど、たまに覚えてる奴もいる。でも、今はあのおっさんにそう言うもんだって思わせてぇから、言うなよ」

 はいはい~、了か~い~。純お兄ちゃんは酷い人なんだね~。

『じゃあ……もう、いっか。いまいちすっきりしないが』

「成仏する?」

『あぁ』

「自分で行きますか? 俺等で送りましょうか?」

『お願いできるか?』

『普通そこ遠慮しねぇ(ない~)?』

 ……と、私と純お兄ちゃんは心の中で思いました~。

「斬、やりてぇか?」

「一応、俺見学しろ言われてるから」

 その割には後ろに氷の刃が~……。

「……そっかー、じゃあ俺やんよ」

 あ、お兄ちゃん分かってて言ってる~。

 斬くんすっごくやりたがってるの分かっててやってる~。

『え、何?』

「大丈夫大丈夫。プロだから。光はあっち行ってろよ?」

 大丈夫じゃないように聞こえるよ~、それ~。

 純お兄ちゃんの言う『あっち』に行って見てよ~。

「冥界でどうぞごゆっくりー」

 斬くん~、冥界ってどんなところなの~?

 あ、斬くんに気を取られて、純お兄ちゃんが何してるのか見てなかった~。

 おじさん消えちゃってるよ~……

 あ~、あの人の事おじさんって言っちゃいけないんだった~。二十歳だもんね~?

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