301 相変わらずの六年ニ組
「しゅーうやー、ちょ、聞いてくれよぉ」
「何だよ、机旨い?」
いくら机とおでこがハグしてても、机なんか食わねーよ。
「で、何だ?」
「あんな、昨日な、四人で遊んでたじゃん」
「うん」
「帰ったらな、帰ったらな……」
「溜める必要あんのか?」
えぇい、突っ込むんじゃねーよ。
「クリスマスツリーが完成してたんだよッ!」
「…………え?」
「だ、か、ら! 帰ったらクリスマスツリーが完成してたんだよ! 飾り付けまで完璧に!」
オレもやりたかった! 特にてっぺんの星!
台ねーと届かねーけどさ。ついでにそんな丁度いい台ねーけどさ。
岳だ。
昼休み、今日の給食はから揚げだった。ジャンケンに勝って、他の人より一個多く食べる事が出来ただけに、いつもよりもっと旨かった。
……でも、昨日のこと、って言うかクリスマスツリーのこと突然思い出して、旨かったの忘れちまったよォー。
「そんだけか?」
「そんだけって言うな!」
「いや、だって……なぁ、奈那子」
「え……、あたしはツリー飾りたいな」
さっすが奈々子さん、分かってる!
「……まぁいいか。うん、で?」
「え?」
「続きは」
無い。
っつったら、話途切れてシーンってなっちまうからぁ……。
「クリスマスツリー飾りたかったぁ!」
「駄々っ子か」
「それさっきも言ったじゃんかぁー」
うわ、さっきから野菜炒めと格闘してた翔まで『うんうん』とか言って頷いてるし。
翔……いつまで食ってんだよ、いくら野菜炒め嫌いだからって。
「あーあ、何かなー。なんだろなー」
「岳てめぇ、何ぐだーっとしながら人のリコーダー盗ろうとしてんだ」
ちぃ、ばれたか。いや、ばれるも何も堂々と盗ろうとしてたんだけど。
こうなったら、シュパッ! と素早く盗って、シュパッ! と素早く逃げるのが普通だよな。
逃ーげろー!
……うん、続いてんだ、この、毎日恒例おっかけっこ。よく飽きねーなオレ。
「おーにさーんこっちら、手ーのなーるほーぉへ」
「ぶっ飛ばすぞお前!」
「やれるもんならやってみやがれ!」
……あれ、何か『空気を読んだらしいクラスメイト』が机退かし始めてるんだけど。
「赤コーナー、高山岳!」
「はい?」
何言ってんの、こいつ。こいつイコール翔。
「青コーナー、風上修也!」
「は?」
「レディー、ファイッ!」
『ファイッじゃねーよ!』
何本当に始めてんだよ! 何で試合形式?
「え、だってぶっ飛ばすだのやってみやがれだの言ってたから、これは周りが準備……」
「しなくていい!」
『えー』
何でクラスの奴全員からそんな声が上がるんだ!?
「仲良き事は美しきかな」
せんせ、絶対違う。






