300 ツリーかざろ
「ん。後はどうぞご自由に」
『ありがとー!』
忍です。
箱入りクリスマスツリーを純兄が出してくれました。
箱入り。飾るどころか組み立てさえしていません。そこまでやってくれてもいーのにー。
誰がやる事になると思ってんの。
「お姉ちゃん~組み立てて~」
ほら来た。
「上はめ込むのはやったげるから、枝広げるのは三人でやってよ」
『はーい!』
よし、いい子いい子。はーちゃん、美代、光、妹トリオ。
上下二つに分かれてるクリスマスツリーって、下半分に上半分差し込まなきゃいけないけど、これ難しい。
入った! ……と思ったら、横に抜けてるだけだったり。あれ、あたしがヘタなだけ?
よし、今度こそ入った。
「はーい、枝広げてー」
「行っくよー!」
はーちゃん、一体あなたはどこへ行くつもりですか。
何で三人とも、枝広げるのにこんなに必死なんだろ。
「何本広げた~?」
「十本!」
「九」
「私も九本~。はーちゃんの勝ちだ~」
何本枝を広げるか勝負してたのか……。
「じゃあいよいよー……?」
『飾りつけー!』
クリスマスツリーって、これが一番楽しいよね。……見るよりも。
「何やろうかな~」
「星!」
おいおい、ツリートップはやっぱり一番最後でしょー。
「星は最後だよ~。その方が完成~! って感じがするでしょ~」
「最初、モール。……後からやりにくいし……」
あたしだったら最初に電飾飾るけど。
「とりあえず巻くもの巻いちゃお!」
はーちゃん、全部まとめたね。確かに巻くものって言うのが一番早いけども。
「見てるだけでいいのか?」
「んー、今年は見てる気分なの。純兄は?」
「いつも俺はやってねぇだろ」
うん。転がってきたクリスマスボール引っ掛けるくらいだよね。
……何でクリスマスボールなんか転がっていくんだろう。
「ひーちゃん家のクリスマスツリー、こんなに大きかったっけ?」
「去年お父さんが買ったの~」
通販でね。
天井がまず高くないけど、星つけたら天井まであと数センチってくらいの大きさ。
ある意味夢のクリスマスツリーだったけど。
前のクリスマスツリー、幼稚園とか、小学校低学年の頃は大きく見えたのに、小学校中学年位になったら小っちゃく見えてくるから、毎年毎年『こんなんだっけ?』ってなってたんだよね。
成長期ってすごーい。
「……この小っちゃいプレゼントボックス、何入ってるの?」
金色の紙で包まれて、さらに金色の紐がかけたれた飾り。あたしも美代みたいに気になって、一回開けた事あるんだ。
中に入ってるのがただの立方体の発泡スチロールで、すぅっごくがっかりした。
プレゼントみたいな、四角い立体に四方から、一本の紐をかける方法は分かったけど。って言うか、何回も絞めたり開いたりして、分かるまでやってたんだけどね。
……あと、ついでに小っちゃい石埋め込んだ気がする。
「あ~、ボール待て~!」
何でクリスマスボールが逃げるの? ただのボールよりも転がらないよね。出っ張りあるし。
「ん」
「ありがと~。拾ってくれたのはいいけどなんで投げるの~?」
「なんとなく」
「納得~」
するんだ。
投げたボール、ツリーの奥深くに入って行っちゃったよ。
「よーし、全部飾ったからー、星ッ!」
「私やりたい~!」
「……美代も」
「ウチだって!」
あ、けんか始まった。
『じゃーんけーんポンッ!』
終わった。
じゃんけんって便利よなぁ。
『あーいこーでしょっ!』
またあいこ。
『あい、こで、しょっ! しょっ! しょっ!』
何回あいこが続くんだ。
「勝ったー!」
「あ~」「む」
四回か。
はーちゃんが勝ったけど……
「……届かない」
だよねぇ。
飾りも、上のほうあんまりついてないしね~。
「台ないかな」
「お兄ちゃ~ん~」
「俺は台か」
台探してて、純兄を呼ぶって事は……そうなんじゃない?
「はーちゃん、こっち」
「何?」
「後ろ向いて」
「はーい」
後ろから持ち上げて……はい、肩車。かたっぽだけの肩に担ぐのも肩車だよね? やっぱ純兄台だ。
「ありがと! 純くん!」
「ん、早くやって。意外と重かったから」
重いとか言ったげないの。
『かんせー!』