3 アレに似てる
「なー、にーちゃん。
この目玉焼き人みてーな形してるぜっ!」
「とっとと食え。
別にお前が遅刻しても俺は困らねぇけど」
「え~、じゃあねーちゃんっ!ホラッ」
「パク」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!
オレの目玉焼きぃぃぃぃいいいい!!!!!!」
俺の弟妹達は朝飯さえ静かに食べさせてくれない、のはいつもの事だ。慣れてる。
……出来れば慣れたかねぇけどな。
純だ。
会話を聞けば、いや読めば分かるかも知れないけど一応説明しておくと、岳が目玉焼きを見せびらかしていたらそれを忍にパクられた、という普通の朝食風景だ。
……普通じゃない?
うちではこれが普通なんだよ。悲しいことに。
ちなみに光はそれをニコニコして見学している。
何かを振られてもニコニコしながらスルー。
一番楽な位置だな。
「あ、光、純兄。
このスルメ靴そっくりな形してる」
「朝飯ん時に何食ってんだお前は」
「パンに目玉焼き、後キャベツの千切りとスルメ」
「そーゆーことを聞いてんじゃねぇよ」
そこまで細かく言うとは思わなかったけど。
「おとーさんの椅子においてあった」
親父の奴、また食べてそのままほったらかしてたな。
「帰ってきたときに『減ってる!?』って嘆くかもしんないけど自業自得だよね~。はもはも」
何気に光も食ってるし。
「あっ、光!今度は米粒が『の』の形してるぜ!」
「えい~♪」
「崩されたぁっ!」
また箸を使って作り直す。
食えよ。
あ、忍がパンだったのに岳が米だったのは、うちでは朝飯がパンか米かだけは自分で勝手に決めるようになってるから。
たまにパン切らして全員ご飯になったり、逆に米炊くのを忘れて全員パンになったりするけど。
「純~、ほらほら~、たこ~♪」
「お袋まで何やってんだよ」
「え~、みかん食べてるんだよ~」
「オレはもっとすげーぜ、蛇だ!!」
へへーん! そんな声が聞こえたような気がする。
「じゃあ私は~、鮫~!」
『参りました(~)』
ペコリ
……みかんの皮でたことか蛇とか鮫だとか作ってるけど、
「実の安全も考えた方がいいぞ」
「まぐまぐまぐまぐ」
『盗られた(~)っ!?』
……結構甘いな、これ。
「ねーちゃんはともかく、にーちゃんにまで盗られるとは思わなかったぁ!!」
みかんかごの中にはもう入ってなかったんだよ。悪いか。
「お姉ちゃんはいつものことだけど~!」
「流石、一つも離れてないだけあるね~」
ちなみに俺は4月、忍は3月生まれ。
学年は同じ。
「……あ、このみかん親子だ」
小っこいのと大きいのがくっ付いてるヤツな。
「コアラに似てるよね~」
『どこが?』
「だってコアラって親子くっ付いてるじゃん~」
「共通点それだけ!?」
「え~? サルの方がいい~?」
そういう意味じゃねぇだろ。
「……あ」
「どうした?」
「いや、あそこの車の上で寝てる猫さ」
よく見えたな、窓越しで。
「それが?」
「ハムに似てるな~って思って。
ほら、絵とかによくある切る前の」
……食うなよ?
よ~く見たら何かに似てるって事、ありますよね。
……ありますよね?
ご意見、ご感想等お待ちしています!