296 自転車に乗るときは気を付けましょう
「純に」
「あ?」
「こけた」
「あそ」
……奥さん、どう思いますこのバッサリした対応。
いや、心配されても困るんだけどさ。
忍でーす。
本屋に立ち読みしに行ったら、帰りに自転車でこけました。手のひら痛い。血は出てないけど皮むけた。
……受け身って確か、手のひら出すんじゃなくて腕出すんだよね。
いや、腕って言っても、手首から肘の部分。前腕とか、下膊とか、前膊って言うんだって。これから先使うのかどうかは知らないけど。
「……忍」
「あーい?」
「血ぃ出てる」
「え」
どこ?
手のひらと膝しか打ってないよ。膝も別に痛くないし……。
「気付いてねぇのか? 膝。ズボン破れてる」
あら。ホントだ。
……おかーさーん、ズボンと皮膚と血管破けたー。
意外と気づかないもんだねぇ。手のひらはすっごい痛いのに。膝よりダメージ受けてないくせに。
「純兄、絆創膏あったっけ」
「ん、絆創膏探すよりも先に傷口洗う事をお勧めする」
「大丈夫。舐めるから」
えーっと、確か階段下の物入れに入ってたはず、救急箱。
「獣かテメェは」
「自然回復万歳だよ」
「絆創膏付けようとしてる時点で自然回復じゃねぇ」
しまった。
「じゃあ使うのやめた」
「何でこだわる必要があるんだ?」
さぁ? 傷口舐めよ。
あ。ズボンに血ぃ付いてる。そらそうか。血ぃ出しっぱなしのまま自転車こいでたんだし。
…………洗っとかないと取れにくくなるよねー、コレ。
もういいや。ズボンだけ着替えよ。
「お姉ちゃん~、なんでかたっぽだけズボンのすそまくってるの~?」
「傷口が速く乾くように」
「こけたの~?」
「何でわかったの」
「本当にこけたんだ~!」
おい、分からんで聞いたんかお前は。
「何してたの~? 一輪車~?」
あー、そういえば一輪車でこけてズボン、皮膚、血管破ったこともあったなー。
「惜しい、タイヤが一個足りない」
「自転車で~? 何したの~」
「つまずいたの、歩道に。横から」
「つまずくって言うの~?」
知らん。
たまに歩道って、低くなってるのに結構分厚かったりするよね。
で、そこに横から乗り上げようとすると、タイヤが上手く乗り上げずに傾いて、勢いでそのままころんじゃうよね。…………ね?
……ジーンズ洗って来よ。
「そのジーンズも破けたの~。お姉ちゃんはダメージジーンズ量産機~?」
量産はしてない。『機』が付くほど作っても無い。……少なくとも中学になってからは。
って言ったら『中学生になる前はそうだったこと認めるんだね~』って言われた。別に認めた訳じゃないよ?
それにしても……、手荒いってめんどくさいよね。洗濯機考えた人凄い。
血の汚れ取れないけど。