表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただいま暴走中!  作者: 呪理阿
十一月でなくとも暴走中
291/410

291 これもある種の集団行動

「……はぁ」

「玲奈さん、溜息ばかり吐いていると幸せが逃げますよ」

「美香っ! あたしがいつ溜息ばかり吐いたのよっ!」

「今日だけで二十四回ほど」

 中森、数えてたんだ……。

 忍でーす。

 食べると眠くなるよね。

 そういうわけで、お弁当を食べ終わったあたしは机に突っ伏して寝ようとして、でも寝付く事が出来なくて目を閉じてるだけの状態です。

 ……こんな状態だと午後の授業がつらいんだよなぁ。でも起きたくないなぁ。

「てい」

 痛い。

「桜ー、実況してー」

「篠の、むぐむぐ、チョップがあむ、忍の背中に落っこちんぐっ」

 ごめん、口に何か入ってたんだね。

 うん、まだご飯中の人何人か居るもんね。

「しーちゃん、何でチョップしたの」

「理由は無い」

 酷い。

 理由無いのにチョップされたんだって、あたし。

「し……忍っ!」

「はーい?」

 今度は玲奈かぁー。純兄関係だな。

 ……たまにさぁ、玲奈が純兄のこと口にすると、嫉妬してるような目線が来ることがあるんだ。何でだろう。

「もう、思い切って聞くわよっ!」

 はい、どうぞ。

「えと……あの……その……じゅ、純の、あの、うん」

 全っ然思い切って無いじゃん。

「し、忍の好きなタイプってどんな人っ!?」

 あぁ、純兄の好きなタイプ聞きたかったんだね。

 いきなり聞くのは気が引けたから、あたしのところをスタート地点にしたんだね。

「玲奈さん、昼休み中に本題までたどり着けますか?」

「つ……着けるわよっ! べ、別にそんなに恥ずかしい事じゃないしっ!」

 本人がここに居たらけっこう恥ずかしいと思うけど。純兄居なくて良かったね。何処行ってんだ、この不良兄貴。

「で、忍のタイプって、どんな人!」

 何か問い詰められてる状態になっています。

「何であたし?」

 分かってて聞くあたしってやな奴? いやいや、これですんなり本題に入ってくれるかもしれないじゃんか。

「純と好み被ってるかもしれないからよっ! 別に、気になってなんかないんだからねっ!」

 そういう割にゃ、すっごい身乗り出してるけど。

「純兄のタイプ言えばいい?」

「ウェルカムよ!」

 素直だな……。

 やー、でも良かった、好きなタイプって言われてもあたし答えられないからね。分かんないから。

「んっとねー、純兄の好きなタイプは……」

 好きなタイプ……好きなタイプ……? 純兄の?

 知らんわ。

「ごめん、あたしも知らなかった」

「何でよっ! 兄妹でしょ!?」

「兄妹だって知らんもんは知らんのじゃ!」

 怒鳴られたので怒鳴り返してみました。

「うっ……う、海中!」

「あぁああああ! ラスク失くしたぁああああっ! まだ食ってなかったのに」

 ラスク? 購買の? 失くしたって……。

「海中! ラスクはどうでもいいから、純の好きなタイプ教えなさいっ!」

 あれ? 恥ずかしがってたのがウソのよう……と思ったら。

「はい?」

「……ぁ」

 顔赤くして走り去ってしまいましたとさ。何やってんの。

「玲奈さん!」

 あ、中森が追いかけてった。あたしも行こ。

「あたしも行く」

 しーちゃんがついてきた。

「じゃあわたしも行こ~」

 桜がついてきた。

「何か知らんが俺も行こ」

 なっくんがついてきた。

「じゃあ俺も」「私も」「え? 何?」「次移動教室だっけ?」

 何かいっぱいついてきた。

 ……皆、暇なんだね。



「何あれ。おまんの学校、変な奴多いんじゃなぁ。一人の女の子クラス全員で追っかえるなんざ、聞いたこと無いで」

「安心しろ。俺も始めてみた」

「……どっか安心するとこあると? それ」

 純だ。

 目の前を玲奈が走って行ったかと思うと、忍含めクラスの奴等が追いかけてきた。

「あれ、元凶純兄」

「何が起こってるかもわからんのに元凶にされてたまるか」

「安心せぇ、お前は全ての凶事の元凶じゃ」

 俺、大物だな。

「純兄、一個聞かせて。それでこの集団止まるから。回答によっちゃ暴走するかもしれないけど」

 はぁ……。

「何だよ?」

「純兄の好きなタイプってどんな子?」

 そんなことで走り回ってんのかこいつ等。

「はーやく答える!」

「一緒に居て落着く人でいいや」

「『でいいや』? ……玲奈は入る?」

「いや」

 あれは『変わった娘』だな。

「即答か!」

「そもそも好きなタイプっていわれてもピンと来るわけねぇだろ」

「うん、すっげー分かる」

「そうか。じゃ、関係ねぇけどこの集団止めて来い」

「努力しまーす」

 努力するだけか?

 聞く前に行きやがった、忍の奴。

「なぁ純、玲奈ちゃんに会ったりよ?」

「何で?」

「……よぉ分からんけど、あの娘応援したなったけぇ」

『よく』どころかサッパリ分からんけど。

「ほら、今すぐ実体化して」

「今日は霊体の気分なんだよ」

「何それ? そんな気分あんのけ?」

 俺はある。

 ……ほら、人間の誰かに見つかったらめんどくさい事になりそうな日。それが霊体の気分の日だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ