29 毒ってこあい
「はい~、剣くん~♪」
「………………ども」
いやぁ、見事なまでに怪しすぎる物体だねぇ。
とても食えるとは思えねーよ。
岳だ!
ちびっ子死神トリオが来た次の日、光がトンデモナイモノを剣に食わせようとしてんだ。
……たしか材料にかたつむりが居たような気がする。
あと、何か霊力? ってやつをトリオが分けてくれたからオレもねーちゃんも光もはっきり見えるようになった。
「……光、これ生きてるのか?」
「だって新鮮な方が好きなんじゃないかな~って思って~」
まっさかー。
「焼いてください、煮てください、何でもいいからマズ生きたものは勘弁してください本気でお願いしますから!」
「大体なんでこんなことになったの!?」
「あ~、お姉ちゃんおはよ~」
光、ねーちゃんはさっきから起きてたぞ。
「ホラ、剣が『この世界の食い物全部制覇してやる』とか言ってたろ」
「だからまずはエスカルゴ作ってみた~」
「何でまずエスカルゴなの!?」
ごもっとも。
「植木鉢の下でかたつむり見つけたの~」
「なんて理由だ……」
「だから~、どうぞ~♪」
「カンベンシテクダサイ」
真っ青だ。
「斬、居候させてもらってるんだ。文句つけるものじゃないぞ?」
「天酷むぐ!?」
おぉ~、口の中に問答無用で突っ込みやがった。
天、結構ひっでー奴だな。
「……おばさん、手伝う」
「あら~、ありがと~」
斬は責任放棄してるし。
「あ、斬、くれぐれも周りのもの凍らせないように……」
「……分かっている」
天、天、凍るとか何とか言ってないでさ。
斬もちょっとむすってしてないでさ。
まず剣の心配をしてやってくれ。
マジで冗談抜きで死に掛けてるから。
「わ~、死にそうになるほど美味しかったんだね~!」
「光、それ絶対違うから。これ以上毒を与えないであげて?」
調理器具とかも毒付きそうだしな。
「う……うぅ……」
「……クスリ、いる?」
「カンベンしてくれッ!」
すげー、斬の一言で復活した。
「うっ……「斬、あげるか。クスリ」やめろやめろやめろ! 大丈夫だから!」
すげー。
斬のクスリとやらもそんなに危険なのか。
光の料理とどっちが危険かなー?
「……はい」
……絶対クスリの方が危険だ! 間違いない!
だってな?
明らかに毒な色をした液体が入った小瓶で、気体が泡となって発生してるんだぞ!?
「ちなみに解毒剤は」
「……ない」
危なさ過ぎるだろ!!
「……オレは逃げる!」
しゅぱっ!
おぉ、窓から飛んでった。
「逃がすか!」
天もその跡を追って……。
「うぎゃあああああ!!」
しばらくしないうちに剣の悲鳴が。
よーく見たらふっつーに食器を片付けてる斬から氷の鎖が出てるし。
「子どもは元気が一番だよね~、斬くんも行っておいで~」
で、母さんは何か煽るようなこと言ってるし。
『いってらっしゃーい(~)』
ねーちゃんと光は完全にギャラリーと化してるし。
にーちゃんは……何か天にエスカルゴもどき渡してるし。
多分あれを処分してもらわないとこっちに回って来るからだろう。
「剣! 覚悟!!」
「無理! 水護盾!!」
エスカルゴもどき片手に突っ込む天、手を前に突き出して水の盾を作る剣。
……これって何のまんがでしょーか?
「甘い!」
「ぐぬっ!?」ずぽ
あ、突っ込まれた。
南無阿弥陀仏。
にしてもコレって何も知らない人に見えたらすっげー怖いよな。
水を操るのとどっから見ても怪しいブツを持った4,5歳児が向かい合ってんだから。
向かい合ってるだけならまだしも戦ってるんだから。
オマケに浮いてるし。
……あれ、斬は何処行った。
「きゃあああー! お皿が浮いて……あぅ」
あ……通りすがりの主婦Aが斬の手刀で気絶させられた。
なるほど、お皿&エスカルゴもどきは一般人も見えるのか。
「わっ!」
どさっ
……剣が降ってきた。
あー……白目むいてる。そんなにキョーレツなのかあれ。
あ、そっちじゃなくて全身強く打ったからか?
て、
「大丈夫か!?」
「大丈夫。3分もすれば元通り」
「お湯かける~?」
いやいや、カップラーメンじゃねーから。
にしても、まー。
死神って丈夫なんだなぁ。
天が全然女の子してくれない……。
それよりこの三人全然子どもやってくれない……。
ちなみに斬は3歳、天は5歳、剣は4歳のはずです。
……筈です。