287 霊界にも色んなのが居る
「じゅん、リオン知らないでしゅか?」
「リオが何処にいるかよりも、ミュウがなんでここに居るのか知りてぇんだけどな、俺は」
「リオン知らないでしゅか?」
スルーか、おい。
純だ。
最近、用も無いのに霊界に来ることが増えた気がする。実際増えたんだけどな。今、学校はニ時間目当たりかな……。
「リオン知らないでしゅか?」
三度目。ほっといたら何回言うんだろ。
「答えないと実体化できないようにしましゅよ?」
ん、それは少し困る。
リオが行きそうな所……
「リオの故郷は?」
「行ったでしゅ」
「飯屋」
「行ったでしゅ」
「カジノ」
「行ってないでしゅ! ありがとでしゅ!」
すっ飛んでった。
……居るって保証はねぇんだけどなぁ。まぁいいや。
「おぉっ! 純!」
俺が今居るのは、霊界の中でも大きい商店街。
売ってる物はどれも激安。たまに例外でやたら高いものがあるけど、基本激安。真ん中は無し。極端な商店街。
名前が『極端商店街』だからか? 素直すぎやしねぇか。
えっと、今こっちに走って来てるのは……。
「橋本さん?」
「誰が橋本さんだって? 私はハシモンって名前だぞ」
ちっ、惜しい。
「何か御用ですか?」
「冷たいな、死神学校の同期卒業生じゃないか」
周りが年上ばっかりだったからなぁ……同期って言われてもピンと来ねぇ。でも多分、俺のことだから敬語使ってただろうな。
ハシモンさん、いい年したおっさんだし。少なくとも見かけは。
「まぁ、今日は久し振り……一年半前後か? に会ったんだし、飲もうじゃないか」
「……朝からですか?」
しかも俺未成年。死神だから法律関係ないけど、未成年は未成年。
「大丈夫! この時間からやってる店知ってるんだ」
「すみません、俺、ちょっと用あるんで。少なくとも今日は空きそうに無いです」
「そうか……じゃあ、またの機会に」
次この人見かけたら逃げよう。
「おっ、純じゃねぇか! トマトはもう食えるかー?」
「おかげさんで」
八百屋のおっさん。本名知らん。
なんて言うお化けかも知らん。
「そうかそうか! まぁ、この季節、トマトは無いが、かぼちゃとか、山芋ならあるぞ!」
「今は足りてるよ。買う前に家にあるのさっさと食わねぇと」
「そうかそうか! 無駄買いはいかんからな! じゃあさっさと帰って食いな!」
今?
「で、ウチの買いな! 安くしとくから!」
ただでさえ激安なのに、これ以上安くするって言ったら……日本円でも一桁になるんじゃ。
よし、絶対来よう。
「ん。無くなったらまた来るわ。んじゃ……」
「そうかそうか! また来いよー!」
行くって言ったとこじゃねぇか。
おっさん、人はいいけどたまに人の話し聞かねぇんだよなぁ。
「あら、純。今日はリオンと一緒じゃないんだ」
「リオはカジノかどっかで遊んでんだよ。多分。いつも一緒に居るわけじゃねぇし」
仕事ん時は一緒だけど。
花屋の姉さん。子供の頃に、どこぞの小学校の七不思議のひとつになった事が自慢らしい。
ちなみに、ハロウィンに、ジャックランタン作ったかぼちゃはこの人に貰った。
「リオンがカジノ……? あんまり想像できないな」
「いっつも負けて戻ってくるぜ」
「あぁ、よく分からないけどちょっと安心」
本当によく分かんねぇな。安心要素が何処にあったんだ? 心配要素もねぇけど。
「あぁら、純ちゃんじゃない」
あ、口裂け女。……じゃなくて、名前なんだっけ。
「茜さん?」
「そうよぉ、ちゃんと覚えてたからべっこう飴あげる」
何で名前覚えてただけで飴くれるんだ、このお化け。
「あ、そうそう、お菊ちゃんに会ったら、菊の花ありがとうって伝えておいて。何処にいるか分からなくてぇ」
何処かの家のお手伝いさんやってると思うぞ。
お菊さんだから、皿の扱いにはめちゃくちゃ気を使ってる。そっちに気を使いすぎて、他がおろそかになる事がたまにあるらしいけど。
「純」
「あ、リオ。何処行ってたんだ?」
「見てこれ!」
……チラシ?
『新発売! キムチと唐辛子、激辛パター蛇(食用の蛇、異世界の産物)の激辛パフェ!』
「おいしいと思う?」
辛いと思う。