285 自由人コンビ、やってきます
「暇だなぁ……」
「龍城、バイクを運転するときは常に周りに注意を配らにゃならんのに、暇とはなんじゃ」
姉御にんなこと言われる日がくるたぁ思ってもみなかった。
龍城っす。
姉御を後ろに乗せて、山口からオートバイで東へ、東へ。
ここどこか、誰か教えてくれやせんかね。
地図? あったらここがどこかとっくに分かってる。
携帯ナビ? あ、その手があった。でも今出しても今更感しかしないんで、結構っす。
「……前方約二十メートルに見覚えのある二人組を発見。どうしやす、姉御」
「突撃!」
「はねればいいっすか?」
「捕まるのは龍城じゃけ、おっけ」
んじゃあ、はねますか。
「おら」
おぉ、きれいに放物線を描いて飛んで行ったー……。純って言ったっけ。
「てぇ、おぉおおおい! ホンマにはねんな!」
「許可したのは姉御なんで」
「ホンマにはねる奴があるかぁああああっ!」
余裕ねぇっすねぇ、姉御のくせに。皐月姉のくせに。
「純兄!?」
お、起き上がった。純って何なんじゃろうなぁ。肝試しの時、お化けになって飛んでいくのが見えたけど、目の錯覚じゃぁなかったんすねぇ。
「おい、龍城さん、今の俺じゃ無かったら普通に死んでましたよ」
「純じゃ無かったらはねてなかったんで」
「………………」
あぁ、警戒してる。
「ねぇ、なんで皐月姉と龍城さんがこんなとこに居るの?」
「ぶらり旅? うーん、何て言うか、旅じゃ! 旅! 男のロマン!」
姉御が男だったたぁ知らなかった。
「あたいのロマン!」
変えやがった。
「……あそ。龍城さん、仕事は? 警察なんでしょ?」
「クビになって、今は暴力団にお世話になってやす」
「…………何があったの、龍城さん」
特に何も?
交番に届けられたお金をちょろまかしてたら、センパイに気づかれて。その他諸々危ない立場に居たもんだからバッサリクビ。
前に裏路地で暴れてたのを見逃してやった暴力団に誘われて……辞させて正解じゃったなぁ、警察も。
本当には多分存在しない筈だからご安心を。
「暴力団って言っても、麻薬はやってないんでご安心を」
「なんかそれだけじゃ安心できないがするけど……まぁいいや」
そうそう、まぁいいんすよー。
「純ちゃん、忍ちゃん、学校帰り?」
「見て分かんねぇか?」
純は学ラン、忍はブレザー。二人の肩にはカバンがかかってて、どっからどう見ても学校帰りっすね。
「龍城ー、忍ー、純ちゃんが冷たい」
「前からじゃん」「純の言う通りじゃないっすか?」
「忍だけだよ、あたいの味方は!」
しばらく動かなさそうじゃけエンジン切っとこ。
「純、純」
「何ですか?」
皐月の姉御は忍となんかやっちょうし(忍に絡んでるともいう)こっちは純と。
「なんで、はねられてそんなにピンピンしてるんすか?」
「なんで人をはねる気になんかなったんすか?」
「姉御の許可が下りたんで。それよりこっちの質問に答えてくれやせんかね」
肝試しん時から、香ちゃん共々気になってるんすよ、こっちは。
香ちゃんは、ちょっと話したら興味津々で聞いて来るもんだから困った困った。
「ん、運が良かったんだろ」
簡単に返しやがりますな。
「まぁ、あとでじっくり聞きまさぁ」
「……あとで?」
ほら、姉御が言ってるの、聞こえるじゃる?
「今晩泊めてくれない?」
そう言う事っす。
何しろ今まで野宿だったもんで。