284 占い代金はお弁とのおかず
「忍~、純く~ん」
「あーい?」「あん?」
「おいでおいで~」
いや、おいでも何も、あたし等の席は桜のまん前だから、これ以上行きようがないんだけど。
忍でーす。
昼休み、弁当を取り出したところで桜においでおいでされました。僕ぁ一体どうすればいいのでしょう。
「どうしたの?」
「お弁当忘れちゃったっ★」
「購買行っといで」
「お金持ってないよっ★」
その可愛い笑顔は、あたし等に『よこせ』と?
「ちょうだ~い?」
素直に言いやがりましたこの娘。
「トマトならやる」
「わ~っ、ありがとう、純くん!」
嫌いなの押付けたね?
嫌いじゃないけど食べなくて済むなら絶対食べないもの押付けたね!?
「あたしもきんぴらあげる」
「わ~い。ありがとう、忍!」
やった、きんぴらごぼう食べなくていい!
「占いって意外と当るよね~。もぐもぐ」
「占い? どっから飛び出たの、その話題」
床下あたりから突然飛び出たような木がするよ? 我ながらなんて分かりにくいたとえ。
「さっきね~、今日のわたしのお昼ご飯がどうなるか占ってたの」
さっきって……社会の時間? 授業中?
「そしたら、友達が譲ってくれるでしょうって出たの~」
「当るねぇ、その占い。でもそれって占い?」
予言の類に入りそう。正確だし。細かいし。はっきりしてるし。当るし。
「忍、占ってあげようか~?」
「うん。お願いします先生」
ちょっと興味はある。
「おかずもう一品ね♪」
あたしのおかずがなくなるだろうが。全部で三品+トマトなのに。
「チーズの海苔巻き一つでどう?」
「おっけ~」
いいんだ。
……あぁ、チーズの海苔巻き好きなおかずの一つなのに。
「んっとね~……忍は~」
あれ? 何か道具使うんじゃないの? いきなり語りだしたよ?
「今頑張ればちゃんといい結果がでるよ~。でも頑張らなかったらそこで終わり~。取り返しつかないから気をつけて」
……あの、真剣な顔で言われると怖いんだけど。もうちょっと気楽に聞きたかった。
「あたしの何を占ったの?」
「あはは~。頑張れば分かるんじゃない?」
何で引っ張るの? ねぇ、何で引っ張るの!? すっごい気になるじゃん!
「純くんには教えておいてあげるね~」
よし、桜の小声は意外と大きいから聞ける!
……と、思ったのに何で机に、しかもあたしから見えないようにわざわざ手で覆って書くの?
純兄にだけ見せたりして、すぐに消すって酷いよ。
「あたしのチーズの海苔巻き返せー」
「ちゃんと占ってあげたでしょ~?」
うぅー、頑張れって事しか分かんない……。
「チーズの海苔巻きくらいやるから、すねんな」
「わー、純兄ありがと。何企んでんの?」
「無償でやっちゃダメなのか?」
何が起こるかわかんないからダメ。
「でもくれるものは貰うのがあたしだから貰う」
あーおいし。チーズの海苔巻き、オススメよ? スライスチーズを海苔で巻くだけだし。おいしいし。
「純くんも占ってあげようか~」
「いい」
「わたしが気になるから占っていい~?」
「占えねぇと思うけど?」
「やってみなきゃ分かんないでしょ~」
あたしは桜がどうやって占っているのかが分かんない。
「……う~ん、何かぼんやりしてる」
「だから言っただろ」
いつ占ったの?
「あ、あ、でもね! 危ないことはやめたほうがいいよ?」
「俺にとっては危なくねぇよ」
「何? 危ないのって」
「忍は知らなくていい事」
死神関係か。
「桜、危ないことって?」
「ノー勉で期末テストに望む事~」
あれ!? 違った!?
「そっちか?」
純兄も分かってなかった!
「やめたほうがいいよ~、危ないよ」
「授業時間あるし」
「よく居なくなってるじゃん」
リオって人とか、忍くんとか、妙羅とかに呼び出されて。連れ去られて。
「ノート見れば大体分かるからいんだよ」
いいの? 最近数学難しいのに。
「むぅ~、天才を見せ付けられていやな気分になったからもう一品ちょうだ~い」
「もうねぇよ」
「がーん」
……くぅって、お腹がなる音が聞こえた。