282 みかん風呂の被害者二名 犯人は反省の色なし
「おとーさん、何やってんの?」
「みかん風呂の準備」
「……出汁パックで?」
「出汁パックを舐めるな」
舐めないよそんなもの。みかんの味がするわけじゃあるまいし。
忍でーす。
おとーさんが、また何かやってます。
みかんの皮、食ったら干しとけーって言われてたんだけど、このためだったんだね……。
「よし、風呂ん中に放り込んでこよう」
「お風呂、今光が入ってるよ」
「そなの? じゃあ感想聞いとこ」
あたしも行こっと。さっき晩ご飯食べたからお腹いっぱいで、勉強する気になんないもん。
「光ー」
『お父さん~? 何~?』
「みかんの入浴剤があるんだけど、入れる?」
『ちょうだい~』
欲しいんだ。
ドアの隙間をちょっと開けて、手渡し。
「はい」
「寒いから早くドア閉めて~」
ドアの隙間から入ってくる外の空気の方が、ドアを全開にして入ってくる空気よりも冷たく感じたりするのは何でだろう。
「どう? みかん風呂」
「まだ入れたばっかりだよ~。効果出るわけ無いじゃん~」
ごもっとも。おとーさん急ぎすぎ。
「あがったらどうだったか教えてねー」
「は~い~」
ついてきた意味なかった。
それからみかんの頭……てっぺんの事よ? から少しを切り落として、フォークでほじくりながら食べてた頃、光があかってきた。
……あたしがこんなめんどくさい食べ方してた理由? こうやって食べると時間掛かるから沢山食べた気分になれるんだよ。
慣れてコツがつかめると全然そうは感じないけど。
「どうだった? みかん風呂」
「チクチクする~! 痒い~」
「え」
え。
そのお風呂、あたしも入るんだけど。
「シャワー浴びて出たから今はそうでもないけど~……」
「うーん。なんでかな」
「暖かくはなったけど~、あれはちょっといやだな~」
あ、プラスの面もあったんだ。
「ちゃんと乾かした?」
「はず」
「……乾いてなかったんじゃない? からっからになるまでやった方がいいんだよ」
多分。
「じゃあ次はそうしよう」
……やっぱり乾いてなかったんだ。
「試す時は皆があがってからにしてよ~?」
「はぁい。次はセイタカアワダチソウでやるつもりなんだ」
セイタカアワダチソウって……。
あの、背の高くて、黄色いちっちゃな花がいっぱいついてる奴? 雑草?
「ほら、採って来たの」
でっかい袋に四分の一くらい。
「おとーさん、ドジョウ捕りに行くって言ってなかった?」
「うん、酒かすに魚のエサとか色々混ぜて罠に入れておいたら、ドンコみたいなのと海老とモロコが捕れた」
何混ぜたんだろ。
「水槽に入れといたよ」
よし、後で見に行こう。……光はもう走ってってるし。
「ちょっと疑問が浮かんだんだよね」
「何?」
「罠はってる川、ドジョウいるのかな」
知らん。
「父さん!」
あれ? 岳。
「なんか風呂入ったらチクチクしたんだけど! なんかしただろっ!」
あ、みかん風呂被害者二人目。
ちゃんと乾かせばみかんはお風呂に入れても大丈夫らしいです。
私の入ったお風呂に浮かんでいたみかんの皮は乾いていなかったのでしょう(苦笑)