286 2011.11.11. 細長いのがいっぱい
「あ、一が六つ並んでる」
「賞味期限今日なんだ~。早く食べよ~」
二千十一年十一月十一日
うわ分かりにくっ。数字で書くよ? こゆこと。
2011年11月11日
今日は、ポッ〇ーの日だよ!
忍でーす。
1111年11月11日を過ごした人はちょっと感動しただろうな~、と思ったけど、その頃の日本は天永二年、平安時代。カレンダーなんて広まってなかったよねー、きっと。気付いたかな、その日に生きてた人。
「ポッ〇ーおいし~」
「あっ、あたしが食べようとしてたのに!」
「はい~、ニ本~」
何でニ本? これだけだよって言う意味? もうあげないよ、二本もあげたでしょって言うの?
まぁいいや、いざとなったらもう一箱開けよう。何でこんなにポッ〇ーあるの、うち。
「……ところでなっくん、君はさっきから何をしてるの?」
すっごくね、真剣な顔してるの。ちょっとかっこいいくらいに真剣な顔してるの。
で、凄く慎重に、慎重に……
「見りゃ分かるよな?」
鉛筆立ててるの。ずらぁりと。うちのテーブルのど真ん中に一列。
なんか、なっくんが居るのと反対側では岳が同じ事同じくらい慎重にやってたりね。
純兄は自分の椅子に胡坐かいて座って、呆れた目でそれを見てる。
……終いにはテーブル叩いて全部倒すんじゃ……。
いや、テーブルの下でごそごそやってるはーちゃんが倒すかな?
「なっくんの慎重な顔、こんなときしか見ないなぁ」
「そりゃあ、俺の席は教室の一番後ろなんだから、授業中は顔合わさねぇもんな」
「その言い方、なっくんが授業中マジメな顔してるみたい」
「してるよ。俺、授業中は凄くまじめな顔してるぜ」
『嘘だ』
「皆でハモんなっ!」
あ。一本倒れた。
「なっくん! 頑張って百十一本立てるんじゃねーのかよ!」
そんな目標立ててたの!?
「あ、悪い!」
「アホだろ、テメェ等」
「現実逃避くらいさせろ」
現実逃避? 現実逃避って言った今!?
「もーな、円周角とか嫌い! 漢文とか知るか! 天王星はばったり倒れてて同じ所ばっかり太陽の光当たるとか俺にゃ関係ねぇよ!」
「最後のは本当に関係ないね」
天王星の自転軸が公転面に対してほぼ水平に傾いてるって言うのでしょ?
四十ニ年間、かたっぽだけずっと日の光が当ってるんだって。いやだな、それ。日が当たってるところに住んでたら眠れ無さそう。
「漢文面白くねぇか?」
「何処が!? 意味不明なだけだろあんなん!」
「それこそ何処が?」
「あーあー、もういい。もーいい。俺ぁこっちに集中する」
岳は黙々と鉛筆を立てている。端から見ればただの暇人。
あ、本当に暇人か。そうでなきゃこんなことしない。多分。
「純お兄ちゃん~、かんぶんって何~? カン・ブンさん~?」
「名前じゃねぇよ。中国の文」
「そんなのやるの~!? なんで~?」
「知らん。義務教育だから?」
ヤだなそんな理由。
「ひーちゃん、忍ちゃん、見てみて!」
おぉ、はーちゃん。さっきから何やってたの? テーブルの下で。
覗いてみると……うわおう。
ロープがいっぱい。
「お兄ちゃんがとりあえずどっかのロープに引っかかれば、他のが一気に絡みつくように作ったの!」
ある意味才能だよ、これ。どうやったらそうなるの。
「うおっと。誰だよ、こんなとこにロープ張ったの!」
あ、岳が先だった。
「うわぁっ!?」
おぉ、一気にロープが岳に絡みついた! これはもう、網って言った方が正しいかもしれない。
なっくんはなっくんで大爆笑してるし。
『あ』
鉛筆は全部倒れたけど。
11時11分に投稿しようとして、23時と表示される事に気付いた時のこの虚しさ。