275 おうどんの間に
「お兄ちゃん~、お姉ちゃん~」
『あん?』「あい?」
「宿題手伝って~」
『断る』
三人そるって酷いな~。
光です~。
お昼御飯中~。今日のお昼ご飯はおうどんです~。
東京のおうどんは汁が飲めないほどに味が濃いって本当ですか~?
私はお母さんのおうどんしか食べた事無いの~。外食の時におうどん頼むこと無いからね~。
「何の宿題なの~?」
「えっとね~、俺俺詐欺とか~、とにかく電話の詐欺があったらどうするか、家族に聞いて来いって~。お母さんはどうするの~?」
「う~ん……かかってきたこと無いからな~……」
かかってきたときの対処法なんだけど~。経験関係ないよ~。多分。
「お父さんはどうするの~?」
お母さん~。考えるのやめないでよ~。
「たとえば、どんな風な電話?」
どんな風~? え~っとね~……。
「息子さんが自転車で妊婦さんにぶつかってその人が生死の境をさまような大変なことなっちゃってますよ~って警察とニセお兄ちゃんと妊婦さんの夫役の人からかかってくるようなの~」
「設定細かっ」
考えやすいでしょ~?
「ってか、オレかよ!? 兄ちゃん自転車乗らねぇし!」
「よく分かったね~、岳お兄ちゃん~」
「認めんのかよ!」
駄目なの~?
「そうだなー、息子って奴に名前聞くな」
「それで~?」
「終わり」
それだけ~?
「多分相手は困るはず」
名前知ってたらどうするの~。
「じゃあ岳お兄ちゃん~、お兄ちゃんが事故起こして大変だ~って電話どうする~?」
「うちの兄ちゃんは事故起こすような乗り物乗んねぇよって返すな」
言い返しようがないね~。
「お姉ちゃんは~?」
「んむ?」
「うどんがなくなってる~!?」
早いよ~! 食べるの早すぎるよ~!
まだ私半分しか食べてないのに~。
「んっとねー。そっかー、大変だねーって返すかな」
「怒られるよ~? ニセ純お兄ちゃんに~」
「純兄ってそんなに気ぃ短かったっけ? って返す」
「何か言われるよ~」
「この電話はただいま出ることが出来ません」
「今まで話してたじゃん~」
「電話番号間違えてません? って言って切る」
「そっか~」
一方的に切っちゃうんだね~。
「で、着信拒否に設定しとく」
「普通非通知じゃない~?」
「じゃあ電話線抜く」
「忍、本当にはしないでね」
「しないよ、多分」
多分はよけいじゃないかな~。
「じゃあ純お兄ちゃんは~? えっと~……お父さんが……」
るるるるる……るるるるる……
電話の話してたら電話がかかってきた~。
「純~、出て~」
「ん」
ちなみに電話は純お兄ちゃんのすぐそばにあります~。
「はい……あ?」
なんだかすごく切羽詰ったような声が聞こえてくるな~。
「純兄、スピーカー、スピーカー」
「ん」
『ど、どーしよ……まじでやべぇよ』
「落ち着いてもう一度説明しろ」
『お、落ち着けるかよ! だからよぉ、俺、俺、大通りで事故起こしちまったんだよっ! 相手の人、すっげー血ぃ出ててさ、救急車で運ばれていったんだけど……俺、どうしよ……』
お~、まさに俺俺詐欺~。
「馬鹿兄、一辺刑務所入ったらー?」
お姉ちゃん~……。
『はぁっ!? おまっ、妹のくせに何言うんだよ!?』
「テメェこそ、弟のくせに何泣きついて来てんだよ?」
純お兄ちゃん~……。
『兄貴は頼りになるからっ! だから、俺っ……俺!』
この人もいちいち反応してくれるんだね~。
「廉兄ちゃん、だっせー」
『何て事言うんだよ!?』
岳お兄ちゃんまで参加~? しかも相手に命名~? じゃあ私も何か~……。
「家族の縁切っちゃお~」
『なんでそこまでされなきゃいけねぇんだよ!』
『自業自得』
『な、なんて兄弟だ……酷すぎだろ』
私もそう思うよ~。
『ってか、この廉って奴もどんだけ兄弟に馬鹿にされてるんだよ……』
実在しないけどね~。
「あ、電話切れた」
「参考になった? 光」
「相手を思いっきり馬鹿にすればいいんだね~」
……違う?