273 のんびり帰り道
「……あれ?」
あれ? ここ何処? 教室?
忍でーす。
あ、紙切れみっけた。純兄の字で何か書いてある。
『起こすの悪い気がしたから先帰る 純』
「起こしてよ!」
ってか、起こすの悪い気がしたからって、どんだけ熟睡してたのあたし!
あーあー、なんか暗いよ? 外ちょっと暗くなってきてるよ? いや、文化祭前に残って、帰るようなときに比べたら相当明るいけど。
部活も終わっちゃってるみたいで、校門前には色んな服の人がいっぱい。
あっこに溜まられると校門の外出にくいんだけどなー。
「あら、私以外にも残ってる子居たんだ」
「うん?」
一組の後ろの扉のとこに、鞄持って帰り支度した女の子が。
えーと、ちょっと待ってね。思い出すから。
スカート短くて、黒いセーター着てる、黒髪ストレートな女の子……あ。
「ゆうちゃんだ!」
本名風上夕菜ちゃん、だったかな?
「えーっと……ちょっと待って。今思い出すから」
忘れられてるし。あたし、忘れられてるし。
しかもこの人、あたしが心の中で言ったこととおんなじこと言ってるし。
「あ、もしかして、忍?」
「そうだよー」
「彼氏は元気?」
「そんなの居ません」
ついでに言うといりません。
「純って彼氏じゃないの?」
「ちょっと待って、このやり取り小学校の時にもまんましたんだけど!?」
「ふふっ」
あ、分かっててやったな! 確信犯か!
ゆうちゃんは、小学校の時の友達……まぁ、元々べったりしてなかったし、中学なってからクラスはなれて、全然話してなかったんだけど……。
「ゆうちゃんって何組だったっけ?」
「四組。『起こしてよ!』って声が聞こえてきて、何となく見に来たんだけど、まさか忍だとは思わなかったわ」
どんっだけ響いてんですかあたしの声は。扉閉まってたのに。
「ゆうちゃんって耳いいよね」
「私たち以外、誰も居ないこの階で叫んだ人の声が聞こえないわけ……」
あるとおもいます。流石に。
「ゆうちゃん、何してたの?」
「勉強」
ほー。
「あたしなんか熟睡してたよ」
「『起こしてよ!』で分かるわよ」
「……あの、そんなに何回も言わなくても」
「『起こしてよ!』」
「しつこいわ!」
「ふふっ」
もー。
「あ、さっさと帰んなきゃいけないんじゃなかったっけ」
「完全下校はとっくに過ぎてるけどね」
嘘ッ!?
チャイムにも気づかなかったのか、あたしは……。
「一緒に帰る? ゆうちゃん」
「そうね。たまには誰かと帰ろうかな」
よし、そうと決まればぱっぱと筆箱だけ鞄に入れて……教科書類? 置き勉です。
「行こっ」
「うん」
廊下の途中で教師に見つかって軽く怒られましたとさ。
で、校門を出て……溜まってた人たちはいつの間にか帰ってた。で、ゆうちゃんが鞄をごそごそやって取り出したのは……銀紙で巻かれて、さらに青い紙が巻かれた、板ガム?
「食べゆ?」
何かもう、学校の前にもかかわらず口に入れちゃってるけど。
「貰うー」
貰えるものは何でも貰う。それがあたしですから。……意地汚い? ほっとけ。
「不良だねぇ」
ん、ミントガムか。
「不良小っちゃー」
そう言って笑うゆうちゃんと一緒の、ちょっとのんびりな帰り道でした。
帰るの遅いって、あたしの事放って帰った人に軽く叱られましたとさ。
『青空の帰り道』って短編を登校しました~。
ゆうちゃんはそれに出てくる主人公、という設定です。一応。
少女とか、彼女としか書いてないですけども。
だらだら~っと書いた話ですが、よろしければそちらもお願いします。