267 ハロウィンパーティーをしよう 夢の中
「ねぇねぇ、はっちゃん!」
「それ、ウチの事?」
そうだと思うよ。佐紀ちゃん、思いっきりはーちゃんの方見て言ってるもの。
……美代です。
初めに言っておきます。心の中では結構普通にしゃべります。口に出してないけど……。
えっと、それはともかく、放課後です。今から帰ろうとランドセルを背負ったところです。
ひーちゃんは眠気マックス、ぽやっとしててなんだか可愛い。
それもともかく、佐紀ちゃん……何の用だろう?
「明後日、ハロウィンパーティーしよ!」
もうすぐだものねー。何かおかし作るのかな?
「ハロウィン? ハロウィンは明後日の次の日だよ!」
明々後日って言うんだよ、はーちゃん。忘れちゃったの?
「ヤダな、明後日の次の日は学校があるから、日曜日の明々後日にするんじゃんか」
だから、明々後日だってば。……あ、声に出してないんだから、聞こえてないのか。
「あぁ、そか。ひーちゃん、みーちゃん、どうする?」
「……賛成」
うー、なんでもっとはっきり言えないかなぁ、美代。家族にもこんなのなんだよ……。
「みーちゃんは賛成か。はーちゃん、どうする?」
「ゆめうらら~?」
疑問形なのは何故? ひーちゃんってたまに不思議。
「ハロウィンパーティー! 起きて!」
今の寝言なんだ。というか、立ったまま寝てるんだ。
「…………お腹いっぱい~」
「そんなベタな寝言言ってないで起きてってば!」
本気寝なの? これ。
あ、呼吸ゆっくりだから、本気寝?
「す~……」
立ったまま熟睡してるよ、ひーちゃん! ……凄いなー。どうして倒れないんだろう?
「ひぃいいいいいちゃぁああああああん!」
「……五月蠅い」
「ミックスちゃん、そりゃ言いすぎじゃ……」
ミックスちゃん? 美代の事? 佐紀ちゃん、前は美代の事みよよんって言ってたのに。
それに『み』しか合ってないよ。
「う~、家着いた~」
「ワープでも使ってたの!?」
「夢の中でね~、ユーフォー見つけてね~、それに乗ってね~、地球一周しよ~って事になったんだけど途中で飽きてね~」
飽きたの!? 地球一周する途中で!? そもそもユーフォー乗ったの!? いいな、いいな! 美代も乗せて!
「それでね~、家に帰るためにワープ使ったの~。そしたら『ひぃいいいいいちゃぁああああ……』って音と共に隕石が落ちてきてね~」
不思議な音立てる隕石だね……突っ込んじゃ駄目だよね、夢なんだから。
「で~、起きたの~」
「なんで隕石が落ちてきたところで起きたのに『家着いた~?』なの!?」
「佐紀ちゃん~、そんなところに突っ込んじゃ駄目だよ~」
「えぇ!?」
こんなところで駄目出しー。
「で~、何の話してたの~?」
あ、ハロウィンパーティーの話してたんだったよね。
「ハロウィンパーティやろって話だよ!」
「やろ~!」
「……即答」
気持ちいいくらいに即答だったよ。
「明後日なんだけど。ピカちゃん空いてる?」
「午後ならね~」
ひーちゃんは確か、日曜の午前中にピアノやってるんだよね。
「じゃあ、決まり! どこでやる?」
「佐紀ちゃん家でやろ~」
ひーちゃん、ノリノリだね。やる気満々だね。さっきまで寝てたのが嘘みたいだよ。
「あたしの家は駄目! 狭いもん」
「じゃあみーちゃん家は~?」
「父上……多分、嫌がる」
お祭り騒ぎ嫌いなんだもの。楽しいのにー。
「ひーちゃん家は?」
「お姉ちゃんが勉強頑張ってるから控えてって言われるよ~」
……忍さんが? 勉強? 頑張ってる? ……会って半年くらいとはいえ、想像できないなぁー。
「じゃ、消去法ではっちゃん家は?」
「大丈夫だよ! お兄ちゃんがもし勉強するなら、ひーちゃん家に行ってもらえばいいんだし!」
便利だね、お隣さんって。しかも家族ぐるみのお付き合いしてるような家って。
「決まり! じゃあ、明日……何時にしよ」
「ご飯食べ終わった人からはーちゃん家に電話して~、それから行ったら~?」
「オッケー!」「りょーかーい!」「それでいい……よ」
ちゃんと電話するの、忘れないようにしないと。
「…………ぅにゅ?」
「あ、起きた?」
うー……、揺れるぅー。
「どこ?」
「兄上様の腕の中」
あい? あ、そう言えば足が床に付いてない……。
「ゆーうーかーいーさーれーるー」
「人が運んでやってるってのに何ちゅー事言うんだよ」
つい、言ってみたくて。ごめんね兄上。
「おらぁっ!」
「ぴゃぁあっ!」
酷いよ! どうして投げるの!? 布団の上だからいいけど……あふ、お布団きもちいー。
それにしても、妙にはっきりした夢だったなぁ……。昨日の放課後、そのまんまだったよ。
「美代、お前な、寝るのはいいけど居間で寝るのは止めろよな」
「あぅ?」
「あぅじゃなくて、運ぶの俺なんだから、居間で寝るのは止めろよなって」
「……はい」
あ、また眠くなってきたー。
「兄上、今、何時?」
「十二時」
眠いわけだよー。
「……兄上、お風呂入ってない?」
普段着姿、パジャマじゃないし……。あ、兄上のパジャマってジャージだった。
「勉強してたから」
ほぇー。
「……受験?」
「うん、まぁ……」
今までずっと部活部活でやって無かった分のツケが溜まってたんだね。もしかすると。
「……兄上、ハロウィン……しないの?」
「それは毎年やってねぇし」
そういえばそうだった。
「はーちゃんとね、ひーちゃんとね、佐紀ちゃんと一緒にね、ハロウィンパーティーする」
「……自慢け?」
ううん。
「兄上も、行こ。言っとくから」
「や、俺は流石にその中には入れねぇだろ……むしろ入っちゃダメな気が」
なんで?
「いいの。純さんも、なっくんさんも居るんだよ?」
隣の家に。
「……いやいやいやいや。やっぱ行かね」
「うー」
なんでー。
「早く寝ろよー」
「……兄上もね」
頭の整理するのに睡眠大事って、ひーちゃんが言ってたもの。
……寝まくってる口実に。
あ、そうだ。兄上は、こっそり伝えて無理矢理連れて行こっと。
「あーうー。楽しみ……」
明日の、あ、今日になっちゃってる。ハロウィンパーティー。