266 かきかき
「お姉ちゃん~。見てみて~」
「んー?」
忍です。
冷蔵庫を開けて、中におかーさんの物だと思われるビターチョコレートを発見し、ほくほく顔で食べようとしたところに光が走ってきました。
チョコうま。
光は手に、白くてテカってる板とペンを持ってます。
「どしたの、それ」
「てってり~! ホ~ワ~イ~ト~ボ~オ~ド~」
いや、それが何かを聞いたんじゃなくてね。
「これに~、この黒い水性ペンで落書きしても~」
何描いてるの? 竜巻?
黒い竜巻、なんかリアル。
「簡単に消えるんだよ~! 凄いでしょ~」
「そう?」
「まるで学校のホワイトボードだよ~」
「いやだから、ホワイトボードなんでしょ」
「そうだった~!」
今気付いたんか!?
「で、どしたの、それ」
「迷子になってたの~」
「迷子のホワイトボードがそんなに綺麗なわけないでしょ」
どっからどう見ても新品だよ。
「も~。ノリが悪いなぁ~」
やれやれって仕草されても……。どうノれと?
「お父さんが買ってきてくれたんだよ~」
「おとーさん? 帰ってたの?」
全然気づかなかった。
「ただいま」
「お帰りー」
今分かった。
「ど?」
「何が?」
「ホワイトボード。気に入った?」
気に入った? って言われても……まだ使ってないし。
「お姉ちゃんも何か書く~?」
「うん」
うーん、と。よし。
『ビタチョコ万歳』
「ビタチョコってそんなに長生きなの~?」
万歳の読み方違うから。
「ばんざいだよ」
「なんだ~。万才かと思ったよ~」
そんなんだったらたしかに長生きだけど。
「あ~、お姉ちゃんこんどは何描いてるの~?」
「今時ワン○ースの中でしか食べてないような肉」
「なんで~?」
食べてみたいじゃん。ほら、骨持って、がぶっと。
あ、ト○とジェ○ーでも食べてるな、この肉。
「気に入った?」
「なんとなく」
さら~っと描けるから楽しいやこれ。感触とかが。
「おとーさんにも貸して」
「ほい。何描くの?」
黙々黙々……。
「よし、できた」
「絵上手~! 昔のギャグ漫画みたい~」
それ、褒めてるの? 古いってけなしてるの?
「パイはパイでもパイ投げのパイ」
「どう違うの?」
同じじゃないの?
「パイ皿にクリーム盛っただけ」
それパイじゃないじゃん。
「これもパイなの。パイ投げ用のパイはこんなのなの。……たしか」
覚えてないの?
「あれ、何だそれ」
「あ~、岳お兄ちゃん~。何かかく~?」
「え? あ、ホワイトボード……どうしたんだよ、これ」
「おとーさんが買ってきた」
「納得」
早い。文句はないけど。
「何かくかなー。あ、よし」
ん? 何かくの?
「マッチョ!」
くるっとひっくり返して見えるようにしたホワイトボードには……。
ハゲの、むっきむきの男の人が描かれてた。何気に上手い。
「なぜにそれ?」
「パッと思い浮かんだのがこれだったから」
何でマッチョがパッと思い浮ぶの!?
「なんか、ねーちゃんだけには言われたくないこと思われてる気がする」
岳、アンタはエスパーか。