262 ちょっとずっこい衣装係
「すっげーな。もうこんなに衣装できてんのか」
「おー、清。手伝いに来たの?」
「いんや。ちょっと見に来ただけ」
見に来る暇あんなら手伝えや。
っと、つい本音が。
忍でーす。
「衣装係って、おめーと、純と、鈴木と中森しかいねーんじゃなかったっけか?」
「そうだけど」
純兄は衣装の小物担当だけどね。
「何着作るつってたっけ」
「んと、十着くらい?」
「多っ!?」
え、少なくない? うちのクラスは三十五人だよ?
「何の服だよ?」
えーっと……。
「ミイラの服でしょ」
「ミイラの服ってなんだよ」
一着目から何で突っ込むかな。
「体に包帯まくのは時間がかかるから、包帯まきつけた様に見える服作るんだよ」
「あぁ、はいはい。んで? 他は?」
「ガイコツ服でしょ」
黒地に骨の絵。はっきり言ってガイコツには見えない。
「魔女の服と帽子に……」
竹ぼうきは学校にあったからそれつかうつもり。ぶっちゃけ邪魔なだけなきがするけど。
「フランケンシュタインのネジとか服とか」
「どんな服だよ」
「肌色に傷だらけ」
「…………どやって?」
Tシャツに傷のお絵かき。あ、絶対フランケンには見えないな。
「ゾンビのぼる服とかもあったな。あと、ドラキュラとか白頭巾とか」
白頭巾は、あれね。よくある足が無くてふよふよ~って出て来るやつ。
「へぇ。何着位出来てんだ?」
「八着はできてんじゃないかな」
「早ぁ!?」
ちょっと部外者にも手伝ってもらってるからね……。
「……なぁ純、なんで俺がこんなことせないかんと?」
「忍に頼まれて即OKしたからじゃねぇか」
「いや、だって……なぁ? 忍ちゃん美人やしー、まず女の子に頼まれたら断れんじゃろ?」
純だ。
死神の方の忍の言う事はいまいち分かんねぇ。
「でもねー、純? 他人に仕事押し付けるのはどうかと思うよ?」
……人聞きの悪い。いや、そんなん気にしたりしねぇけど。
「リオ、激辛キムチご飯五杯」
「喜んでやらせていただきます」
ほら、自分からやってんじゃねぇか。俺は押し付けたんじゃねぇ。
戻って、忍です。
死神さんたちやってくれるからとっても楽なんだよね。
皆何気に器用だし。滅茶苦茶縫い目綺麗。ぶっちゃけ言うと全部任せちゃいたい。
「忍、純は?」
「ちょっと霊界に」
「……ちょっと?」
いいじゃん。ほいっと行ってほいっと帰ってきてるんだから。ちょっとで。
「…………あのさ、純ってマジで死神なのか?」
「さーね」
なんて答えたほうがいい?
『忍ちゃーん』
「あ、お菊さん」
今日の着物は何気に黄色が薄い。
『はい、頼まれてた服。出来たよ』
「ホント何着もありがとうございます。お菊姉さん」
『やぁね、気にしないで。好きでやってるのよ』
あー、いい人だ。
「忍、お前何と話してるんだ?」
「お菊さん。何とか言わないで。立派なお化けだよ」
「……マジで居んの?」
マジで居ますよ。ほら、清の後ろ。たった今実体化したよ。
「清!」
あ、しーちゃんの声でびっくりしたのか霊体化した。
「清! 勝手にサボるな!」
「……清、アンタサボって来てたの?」
わー、サイテー。
「え、さっき休憩っつったじゃねーか!」
「一分はとっくに過ぎてる。早く来い!」
……え? 休憩、一分?