258 編み編み中ですが、なにか
「なんで腹巻が必要なんだろ」
忍です。
なんでか知らないけど、うちの展示『オバケ喫茶』の衣装の腹巻を編んでいます。これくらい誰か持ってこれるだろ。なんで一から編まなきゃいけないんだ。
「とゆーか、なんであたしが家に帰ってまで文化祭の取組みしてるんだろ」
編み編み。
えっと、これでいいんだったかな。編んでたらなんか訳わかんなくなってくる。何も考えずにやってたせいで。
編み方説明書ー……しまった。学校においてきた。
「おかーさーん」
あ、毛糸球。持ってかないと。
「は~い~?」
「これ、どーなってんの?」
「忍が聞きに来るなんて珍し~!」
そんなことで感動しないでよ。
「どーなってんの?」
「え~っと~。これがこうなって~? あぁ~、はいはい~。こうね~」
これとかこうとか、言葉だけじゃ絶対理解できない。手元の毛糸の塊、もとい網掛け毛糸の腹巻(ちょっとこんがらかってたりする)をちょいちょいやりながら言われると何となくわかる。
「はい~」
「あんがと」
「はいはい~」
「……今日の晩ご飯、魚?」
においがする。
「楽しみにしててね~」
魚は骨刺さると痛いから好きじゃないんだけど。
それさえなければいくらでも食べるよ。イクラは苦手だけど。
プチプチが! あのプチプチが! あと中の汁が嫌い! 全体的に魚の卵は無理だー。
岳も光も好きなのに。純兄は好きでも嫌いでもない、らしい。
「お姉ちゃん何してるの~?」
「腹巻編んでるの」
「アンデル~?」
「デンマークの童話作家じゃないの」
「それはアンデルセン~」
突っ込みに突っ込まれるとはこれいかに。
「うーん、暇だ」
「編み物してるじゃん~」
「手と目以外が暇」
「器用だね~」
褒め言葉だよね?
「リンゴ食べたいなー」
「今日の朝食べつくしちゃったよ~」
むぅ。明日買ってこよう。
「私は焼き芋食べたいな~」
「石や~き芋~」
「あんまり見かけないよね~」
ほくほくおいしいよねー。
うーん、焼き芋も食べたくなってきた。あと干し芋も。
「芋も桃も桃のうち」
「訳わかんないよ~」
芋は桃のうちじゃないしね。
「何となく頭んなかに浮かんできて」
「どんな頭してるの~?」
「こんな頭」
ですけど何か?
「そうじゃなくて~」
「ミディアムヘアといいます」
ショートというほど短くもないし、ロングというほど長くも無い。うん、ミディアムってここだよね?
「そうでもなくて~」
じゃあ何さ。
あ、腹巻編みあがったはいいけど終わり方がわかんない。
……おかーさんに聞きに行ってもいいけどー。
めんどくさいから、明日学校に行ってからやろう。