250 私に食べただけで相手の言葉が分かるコンニャクを下さい
「・・・・・ー」
何語だろう。聞き取れん。
せいぜい最後の音を伸ばしてる事しか分かんない。
あ、もう一個あった。分かること。どっさりキムチ乗っけたご飯食べてるんだ、この人。
忍でーす。
学校から帰ってきたら、椅子に座ってぱくぱくもりもりキムチご飯を食べている変な奴が居ました。
背中をこっち向けてるから顔は見えないけど……金髪。外国人? いやでも、今時金髪の日本人なんかいっぱい居るしー。
会った事はないけど。
「・ー・、・・・・・・・……」
この人どうしよ。えーと、えーっと……。
「ハロー?」
英語じゃなさそうだけど、とりあえず……。
「Hell」
何か笑顔で返してくれた。
あ、綺麗な青目ー。
見かけで人を判断するものじゃないけど、大人しそうです、この人。
「……ここ日本だよね。なんで英語?」
「日本語喋れるのかアンタ!」
「……ごめん、早口は聞き取れないんだ」
日本語ペラペラなのに? いや、ちょっとぎこちないんだけど。
「誰?」
「俺に言ってる?」
「うん」
アンタ以外に誰が居ると。
「俺はリオン・カラスって名前だよ」
「誰」
「リ・オ・ン」
いや、それは聞こえたんだけどね……。
「純の妹?」
「あ、純兄の知り合い?」
「うん。……じゅんにい? って?」
「いや、えー……純兄ちゃんの略ね」
「……日本語って難しいねー」
……いったいいつどこでどーやってこの人に会ったんだ、家の兄貴は。
「純、どこかな」
「えーっと、学校かな? ……あ、違う。今帰ってきたよ」
玄関開く音したし。
「お帰りー」
「お帰り」
「……・・・リオ・・・・・」
「・・・」
おーい、あたしを置いていかないでー。
純兄までいったい何語を話してるの!? リオしか聞き取れないよ!?
「ほら、純、妹ちゃんが困ってるよ? ここは日本だから日本語で話そうよ」
「……テメェは日本語研修にでも来たのか?」
「違うよー。キムチを食べに来たんだ」
何で!? わざわざキムチ食べに!? 韓国行けよ!
「美味しいねー、これ」
またキムチご飯をパクパク。
「純兄、誰、この人」
「死神仲間」
「人間じゃんか」
「人間化してんだよ」
人間化? あ、あの純兄が首にかけてる奴でか。
「何しに来たの?」
「キムチ食いに来たって言ってただろ?」
「……マジで? キムチ……ってか、キムチご飯食べに?」
「マジで。辛党なんだ、あいつ」
辛党甘党関係ない気がするけど。
「キムチうまー」
あ、最初の奴ももしかしてキムチうまーって言ってたのかな?
「間違えた」
ん? 何を?
「辛党、じゃなくて辛いのが大好物、だ」
「同じようなもんじゃん」
「リオ、八つ橋食うか?」
何で突然……。
「ヤツハシ? 何それ」
「食ってみろって」
あれ、何か純兄が企んでる表情に。
「……純が企んでる表情になってるから遠慮……」
「すんなよ。弟が土産で買ってきたんだ。……辛ぇぞ?」
「いただきます」
単純! 何この人! すっごい単純! いくらなんでも単純すぎる!
「・・!?」
あ、何か今の言葉は分かった。きっと『甘っ!?』だ。
「・・・・・・……。・・・・・・」
「・・・・・・・・」
あーもう! 人に分かるように話しましょう!
「胸焼けする……。気持ち悪い。だってよ。俺は単純すぎだろって言った」
「通訳ありがと、純兄。いつどこでその言語覚えたの」
「小学ん時に妙羅に叩き込まれた」
…………そか。…………そっかー。
また原因妙羅かよ!
「何処の言葉?」
「霊界、だと思う」
思うって。
「・・ー、・・・・・・・・……。・・・・・・」
「・・。もう帰る、だって。ちなみに後のは覚えとけよって言われたからヤだって返した」
ふんふん。
翻訳コン○ャクが欲しい。ドラ○もーん!