249 とまれの交差点
「……何だこりゃ」
「何だろうね~」
「変なのっ!」
光です~。
朝学校に行こうとしたら~、何やら交差点にペンキで落書きがされてました~。
四つの方向へ伸びている道の一つに~、通せんぼみたいに横線が引かれてて~、そこの下に『トマレ』って書いてあります~。
……何で~?
「何がしたかったんだ、これ書いた奴」
「交通ルール守りましょーっ! って事じゃ無いの? 岳くん」
「何でもいいから道路に落書きしたかったんだと思うな~」
ストレスたまってるのかな~? チョークで何か付け足したいけど~……そのチョークを持ってないな~。
むぅ~、歩く文房具箱一生の不覚~。帰ったら買って来よう~。
「光、はーちゃん、お巡りさんに言うかこのままほっとくかどっちがいいと思う?」
『このままほっとく(~)!』
「だよなっ! んじゃガッコ行くか」
行こ行こ~。
あ~、でもお巡りさんに言ったらどうなってたのかな~?
――次の日
「あっ、増えてるよ!」
今度は昨日書かれてた隣の道に全く同じことが書かれていました~。
黄色ペンキだから目立つね~。
「コレの落書きしてる人に何かメッセージ送ろ~」
「メッセージ? どーやっ……あ、チョークか。それで何か書いとこーぜってか」
その通り~。
何か書こっかな~。今日書かれたさらに隣の道に~……
『ストレスたまってるなら思いっきりやっちゃえ!』
これがはーちゃんで~。
『行け行けゴーゴー!』
これが私で~。
……意味わからない~? もっとやれ~って言ってるんだよ~。
『サツに見つかんなよ!』
これがお兄ちゃん~。お札に見つかったら何か不味いの~? お札じゃない~?
「よし! あ、早く行かねーと朝休み終わんぞ!」
「わっ、早く行かないと!」
「待ってよ~!」
――さらに次の日
『おぉ~』
昨日チョークでメッセージ書いたところに~、何か凄い達筆で『停まれ』って書いてありました~。
やっぱり黄色ペンキで~。
「すっげー。これ何で書いたんだ? やっぱ筆か? 絵筆じゃなくて、あの、習字とかの」
「かぁっこいー!」
……あれ~?
「見て見て~、返事が書いてあるよ~」
この隅の方~。こっちはチョークで~。
「お、本とだ。えーっと……」
『ストレスたまってるなら思いっきりやっちゃえ!』には『やっちゃった☆』それで達筆~?
『行け行けゴーゴー!』には『イぇーイ!』……イエーイ~?
『サツに見つかんなよ!』には『イエッサー!』何で軍隊~?
「ちょ、光、チョーク」
「は~い~」
何書くの~?
『もっとおもしれーの希望!』
……どうするのかな~、落書き犯。
――さらにさらに次の日
最後の一本の場所にどど~んと~。
『トマト』と書かれていました~。
…………何でトマト~!? 確かに『トマレ』とは似てるけど~!
「あ、小っちゃく『どう?』って書いてあるよ!」
「うーん、九十五点!」
判断基準は何~?
――さらにさらにさらに次の日
全部消されていました~。
……うぅ~。
実話率75%です。
ある日、家の近くのかなり人通りが少ない交差点の、家側に『トマレ』と書かれていました。
次の日、同じ交差点の、家から見て左側と奥川に『トマレ』と書かれていました。
さらに次の日、右側に『キケン』と『トマト』と書かれていました。
そして今日、消されていました。警察の方がやったそうです。
『トマレ』に混ざって『トマト』って書かれてても気付かないものですね! 小学生の見送りに出てた母に言われるまで気付きませんでしたよ!