248 とある中学生の一日
よぉっす、元気かーっ? ラジコンカーだぜっ!
今日はなー、オレの持ち主っ、忍の一日を見てみようと思うっ!
『ストーカーじゃなぁい? へぇんたぁーい』
ラビット、違う! これはストーカーじゃない! ストーカーは人間を指すものだ。
『ラジコンカーストーカーですね』
ニンサツ、それも違う! てか語呂悪っ。
と、とにかく、行くぞ!
――6:00 起床
「うー、あー。カーテン閉め忘れてる。誰だ開けたの」
閉め忘れたって言ったじゃねーか。自分だろ。
しっかし、起きるの早いなー。いつもは起こされるまで起きないくせに。
「今何時ー。六時ー。そら眠いわー。お休みー」
あいお休み。……寝るのかよっ!?
「……寝れん。誰だ起きたの」
自分だろ。何言ってんだ。そして眠いんじゃねーのかよ。
――6:30 本当に起床
「うわ、三連休今日で終わりじゃん。どーしよ。どうもしないけど」
じゃあ何で『うわ』って言ったんだよ。
「お姉ちゃん~、おはよ~。みみちゃん知らない~?」
あん? ラビットならさっきあっちに居たけど……。
「階段の手すりの上に居るよー」
「あ~! も~、勝手に出てっちゃダメだよ~?」
『だぁってぇ、あたしだって遊びたいしぃ?』
ラビット、お前一回耳つかまれろ。んでウサギに戻れ。
「光、おもちゃは勝手に動かないの」
「分からないよ~? もしかしたら夜中に遊んでるかも~」
鋭い。正解だ!
「そんなことあったら怖いよ」
持ち主に怖いって言われた!?
――8:00 朝食
なぜこの日の朝飯が遅いかというと、休みの日はとーちゃんかーちゃんが起きるの遅いからだ!
「なんか日曜の気分」
「あ、オレもオレも」
「岳お兄ちゃん~、目玉焼き貰うね~」
「ダメだっ!」
目玉焼き……あっ! おもちゃ屋に置かれてた時に見かけた、ままごとセットの中にあったあれか!
黄色くてぐるぐる巻きのあれか! ……違う?
「もう少し静かに食えねぇのかよ」
ひぃっ! ごめんなさい! 何でオレが謝ってんだよ!
「おとーさん、目玉焼きのベーコンちょうだい」
「駄目」
目玉焼きのベーコン……? ぐるぐるの中に巻き込んであるのか? うーん……。
――9:00 勉強?
「うーん」
ペン回し、クルリ。お見事!
クルクルリ。おぉ、すげぇ!
何だ持ち主、分かんないのか? いや、オレも絶対分からんけど。まず文字読めねー。
「めんどくさい」
そっちかよ!
「何で勉強すんのかなー。別に勉強しなくても高校位受かるって」
おぉ、余裕の態度! そして全国の受験生を敵に回すような発言!
「馬鹿校なら」
どこが余裕だっ!?
「うー、でもやっぱり馬鹿校じゃ詰まんないかなー。やっぱやっとこ」
結局やんのか。
しっかしシャーペンの動き方がさっきまでとまるで違うぞ。
……いや、単純に本来の使い方をし始めただけなんだけど。
――13:00 昼食
今日の昼飯はー? 芋のつるスパゲティー。へるしー……らしい。
理由は?
「ちょっとめんどくさくて~」
という事らしい。
「あんまりお腹空いてないからこれでいいよ」
……岳が居ないな?
「母さん! 昼飯できてる!?」
おぉ……ただいまくらい言えよ。あと外から帰ってきたら手洗いうがい! ……って、ニンサツが言ってた気がする。外行かねーのに。
「お帰り~、岳~。出来てるわよ~」
「よかった。十分後に修也達と待ち合わせしてんだ。いそがねーと」
遊んで食ってまた遊ぶか。おー、健康的。
「五分で食い終わる癖に。ちゃんと噛めよ?」
「んぐ、ぐん」
答えられてねー。
「…………」
そして持ち主無言ー。
「あ、そうそうおとーさんこっそり買ってきた肉まんがあるんだけど」
言ってる時点でこっそりじゃねー。
『食べる!』
「内緒だよ?」
誰に!?
――14:30 勉強飽きた
「ねぇ純兄ー」
純と岳の部屋を見るがー……居ない。何で!? 純、この部屋に入ったの見たぞ!? 出てねーぞ!?
「何だ、居ないのか」
何で流す持ち主よ!
「おっじゃましまーす!」
「……します」
「あ、はーちゃんと美代来たんだ。光昼寝してるんだけどなー。起こすか」
光、よく寝るな。夜もしっかり寝れるんだから凄い。ほっといたら何時間でも寝れるんじゃねーの?
「光ー、はーちゃんみーちゃん来たよ」
「後五分~」
「いや、学校遅れるから起きなさーいって言ってるんじゃなくてね」
「後ご飯~」
「ご飯食べ残したの?」
「後五輪~」
「五輪咲くまで待てばいいの?」
……持ち主、どうやったらそんな風にほいほい返せるんだ。
――17:00 お八つ
「純兄、大変」
ちょっと待て、そこには誰もいねーんだけど。
「いや『ん』で終わらせないでよ。大変なんだって。お八つ食べそこねた」
こっちからしたら持ち主が独り言を空中に向かって話し始めたのが大変なんだけど!?
「あ、じゃあお八つ一緒に食べよ」
何だ、純は何を言ってるんだ!? 居るのかどうかはともかく、持ち主の頭の中はどうなってるんだ!
「八つ橋まだ残ってたよな」
『ぎゃぁああああっ! 出たぁっ!』
ふぅ。本気で叫んじまってぜぃ。
だって何もない所から突然純が出たんだから。
「焼き八つ橋旨いよねー」
「ん」
食ってみたい……食ってみたいけど……口がねぇっ!
――19:00 夕食
「でな、翔の奴、自分で掘ったくせにその穴に落っこちやがってな……」
岳、どうやったら食べながらそんなにペラペラ話せるんだ。
何やら、山で遊んでて、落とし穴を作ってたら翔がハマったらしい。
「…………」
持ち主、なんで食べてる時は無言なんだ。
「忍、どこ受けるんだっけ? 勉強どう?」
「さー、第二水高でも受けるんじゃない? 勉強? 飽きた」
どこだ、第二水高って。
そして勉強って飽きていいのか!?
「白銀高校見てたじゃない~。あそこは~?」
「一応考えとくー」
一応て。めんどくさそっ。
「純は?」
「さぁな」
何に関しての『さぁ』だ。受けるか受けないかの所だったりしてな。
「岳お兄ちゃん~。から揚げ一つちょうだい~」
「絶っ対に駄目!」
「お姉ちゃん~……もう無い~!?」
「盗られない一番の方法でしょ」
ごもっとも。でも早すぎる。
「純お兄ちゃん~」
「ん。一個な」
「わ~い~。優し~」
優しっ。珍しっ。怖いだけじゃねーんだっ。
「……小っちゃい~」
でも地味にセコイ。
「純兄、あたしにもー」
「テメェは元々一個多かっただろ?」
「何で知ってるの!?」
数えたのか……? わざわざ。
――21:00 お風呂
流石に付いて行けん。だって濡れたらオレ壊れるじゃん。
――22:00 就寝
「寝れない」
カーテン閉め忘れてるぞー。そこは関係ない?
「うーん。ゲームしよ」
どういう流れでそうなった!?
「……駄目だ。持ってる奴全部全クリしたから面白くない。光の借りよ」
棚の隅にさ、勉強のソフトがあるのがちらっと見えたんだ。
そいつらがさ、『僕らまだ全クリされてないよー!』とか言ってたんだ。
「……駄目だ。女の子のはよく分からん。あれ? 何か自分で言ってて哀しい気が」
知らんて。
「純兄どっか行ってるしー。岳のソフトは遊びつくしたしー」
純のソフトは? あ、こないだ遊んでみてゲーム機壊してたな。ちょっと待て、じゃあ今持ち主が持ってるゲーム機は誰のだ。
「……純兄のゲーム機、直るかなー?」
あぁ、壊れたのは純のか。
「ま、いか。もう寝よ」
いいのか!?
『ラジコンカーストーカーさん』
『名前なげーよ』
『今日一日、忍さんをストーカーしてどう思いました?』
え? どうって……。うーん。
『運動してねーよなって思った』