244 バス内の四人組
「ひゃっほー」
「暗い声でそんなこと言われたら戸惑うだけだぜ? おーい、岳、聞いてんのか」
「昨日ちょっとはしゃぎすぎて」
「ガキか」
「オレ等ガキじゃん」
「認めなくもない」
認めたくもない?
奈那子だよっ。一文字違うだけで大分違うんだねって今ちょっと実感したよ!
それはともかく、今日はやっと! 修学旅行なんだ! バスに揺られてどんぶらこ~ってこれは桃だね。
もうそろそろお菓子食べていい時間だよね? ね? 聞いても分からないか。
んとねー、あたしと、修也と、岳くんと翔くんは一番後ろの横並び! くじで決めたのに凄くない? むかって右から、翔くん、あたし、修也、岳くん! ……と、眼鏡で超大人しい、クラス一頭いい子、雄川くん。ここだけの話、雄川くんは運動音痴だよ。
「なぁなぁ、飴食う?」
「貰……何だよ黒い物体X飴って!?」
「うめーぞ、エク飴」
「エクレアみたいに言うな!」
普通に怖いんだけど、その飴。何この黒さ、まるで弾丸。弾丸って黒いのかどうかは知らないけど。
あれ、前にアニメで見たのは金色だったなぁ。
「奈那子さんいる?」
「居るよ! 何でそんな事聞かれなきゃいけないの!?」
そんなに影薄い!?
「そんなこた誰も言うちょらん。エク飴いるかって聞いてんだ」
「あ、それなら欲しい……何処の人?」
「およ、知らなかったか? オレってば山口に住んでたんだぜー。二年始まるまで」
…………あっ、そういえばそうだった! 山口から~とは聞いてないけどね。
それはそうとエク飴、意外と美味しいんだなー。
「修也~、美味しいね、これ」
「うん」
「へへ、だろー? 毎回ちょっぴり味違うんだぜ、コレ」
へぇ、どうやって作ってるんだろう。機械で作ったら同じ味になりそうなのに。
「……うぷっ」
「ちょ、ちょっと翔くん大丈夫!? バス酔い?」
「エチケット袋なら目の前席の網にあるぞ」
あ、ホントだ。ありがと修也っ! ってあたしじゃないのよ!
「何この飴……、まっずっ」
『嘘っ!?』
こんなに美味しいのに!?
「うぇ……っ」
雄川くん!? 不味いの!? って言う前に食べてたの!?
「雄川もか? ほれ、エチケット袋。吐くか頑張って押し込むかどっちだ!? あぁっ!?」
「何の脅迫してんだよ、岳」
「やって見たくて」
やって見たくてって……。
「あふ、ふ、ふぅ……ありがと奈那子さん、もう大丈夫……の筈、おれ寝るわ……」
「そ、そう。お休みなさーい?」
「うー、お休み」
「気持ち悪ぅ」って呟いてから寝るんだ。わざわざ。
「ちょっと岳くん、この飴どうなってるの?」
「ほれ、見るかー? 袋」
あ、おっきいパック……ちゃんと二百円に収まってるの? えーと、確かこの白い表に名称とか賞味期限とか原材料名とか書かれてるんだよね!
『名称:黒い飴』
何て!? 黒い飴!? 『黒い』はいらないでしょ明らかに!
『原材料名・自分の舌で当ててみな』
「無理よっ!」
「どうした奈那子」
あ、声に出てた……。
「この飴の、原材料名」
見せてみたら、何かイラっとしたような顔になって……何で岳くんを殴ったんだろう。
「おぉい、危ねーなー。仮にもバスん中だぞ!」
本当にバスなんだけど。危ないとか言いながらもちゃんと受けてたよね? そしてノリでバスの中で追いかけっこしようとしかけたよね!?
「もー」
でも見てて楽しいし、強大な敵(岳くん)に立ち向かう勇者(修也)がカッコいいから『やれやれー』って言いそうになったのは内緒。
んと、何か続きがあるなー……。
『味の感じ方には個人差があります。次作をお楽しみに。
あ、そうそう、分量適当なので毎回味が違うかもっ☆ でも一回目で旨いと思った君なら大丈夫!
ではでは^^』
何処から突っ込めばいいの!?
もう順番に箇条書きで行くよっ!
・個人差って何!?
・アニメの次回予告じゃないのよ!
・分量適当で飴って出来るものなの!?
・何がどう大丈夫なの!?
・誰に向かって話してるのよ!
こんなとこかな。
えーと、次の項目は……。
『賞味期限・あはっ』
怖っ!? 何で笑ってるの!? ねぇ何で!? 何で!? 修也ぁっ!
「岳くん嫌い!」
「何でっ!?」
これでも喰らえーっ! 飴入り袋アターック! 顔面に綺麗に決まりました! はい良かったねうん良かったよ、これで強大な敵は倒せたよ何処が強大だったのそれはともかくよかったね私の勇者様その名も修也ぁ!
「……いろいろな意味で奈那子が暴走してる」
「修也、飴って結構痛ぇんだな」
あはっ。