241 給食中の四人組
いただきます。
「むむむ……」
「どうした岳、毒キノコでも食ったような顔しやがって」
「真剣な顔してんだよ馬鹿っ!」
真剣な顔が珍しすぎて、つい。
修也だよ。
かったりぃ午前の授業が終わって、給食の時間。
いつもみたいに突っかかってこないと思ったら……あん? いつも追いかけてるのは俺だって? そうなるようにけしかけてくるのは岳だから。
今はまだ給食の時間だからだって? いつもはこの時間に挑発してくるんだよ。で、給食終わりのチャイムと同時に追いかけっこが始まるんだ。
「ねぇねぇ、修也。岳くん、おかしいよ」
「おかしいのはいつものこったろ」
「真剣すぎておかしいよ!」
「激しく同意」
さすが奈那子。
「なー、修也、翔、奈那子さん」
「岳くん、なんであたしにさん付けなの?」
此間、奈那子を名前で呼ぶようになってから気になってたんだ、俺も。
そして今は何でにやにやしてるのかが気になってるんだ。
「いやー、ほらさ? 彼氏以外に呼び捨てされたくねーかなーっと、オレなりの配慮な訳よ。んだから、大人しくさん付けされといて。そっちだってくん付けな訳だし」
余計な配慮だ! いらん! 全く持っていらん! イランは関係ないぞ。
「おーい、岳何言おうとしてたんだ?」
「あ、そうそう。それそれ。あのさ、オレ等さ、小六じゃん?」
うん、そうだな。
「んでさ、今、もう十月じゃん?」
あぁ、うん、そういえば。
「後何気に小学校生活半年しか残ってねーじゃん! って思った訳よ」
うわ、本当だ。六年もあるのに。
「んでさ、おめー等、中学行ったら何部入んの?」
『今までの話関係なくね!?』
どうやったら『小学校生活残り半年しかねぇじゃん!』から『中学で何部入んの?』になるんだ!?
「だって気になったから」
『…………』
岳の思考って分かりにくい。
「翔は?」
「おれは野球部かな」
「あんなん投げて打って走るだけじゃね?」
「はぁ!? 聞いといてなんだよそれ!」
「奈那子さんは?」
「スルーか!?」
そして翔の扱いが最近酷ぇ。
「うーん、あたしは……」
何でこっち見るんだよ。
俺は別に入りたいのなんか……あ、いや、んえと。
「す、吹奏楽……かな? 決めた訳じゃないんだけど……っ。しゅ、修也は?」
「俺も同じ」
「ほんとっ?」
「ほんと」
……おい岳。何で半眼になってんだ?
おい翔、何で牛乳でむせてんだ?
「ちょっと、お二人さん、ラブラブなのは結構ですがね、もうちょっとそのピンクオーラをね、抑えて、ね?」
「何言ってやがんだお前!」
別にそんなんじゃ……。
「げほっ、げほっ! あのげほごほっ、しゅがほっ、あのなっ、おれ言いたい事あんだけど、言っていい?」
「何だよ」
「リア充爆発しろ!」
はぁ?
「リアルに充実してる奴、略してリア充だよ!」
聞いてねぇよ。何だそれとは思ったけど。
「たたた、岳くんはっ?」
よし、ナイスだ奈那子。よく分からない、でもってからかわれそうな話はさっさと終わらせよう。
「ん? オレ? 参考に聞いたんだよ。兄ちゃんも姉ちゃんも部活やってねーから、中学のはよく分かんなくってさー」
兄さん姉さんから以外にも情報は手に入るんじゃ……。
「岳って何部入ってた?」
「一応バスケ部だぜー。でもオレ、球技はそんな得意じゃねーんだよな。野球とかやったことねーし」
『マジで!?』
野球やったことない奴なんて居たのか!?
と言うかそれ以前に、岳に苦手なものがあったのか……。あ、いや、兄さんも苦手なんだっけ。自分にプレッシャーかけるのにに使うくらいだし。
えぇっとー、純さんだっけ?
「んじゃーさ、一緒に野球部入ろうぜ! そしたら球技得意になるかもしんねーじゃん」
「うん、考えとく」
考えるだけか、おい。
「それにしても、岳くんがスポーツで苦手なモノなんてあったんだね!」
「ん? 球技はうちの家系全体的に得意じゃねーんだよなー。兄ちゃんも姉ちゃんも妹も」
『嘘!?』
以外だ……。
岳の姉さん、三年の時に見たことがあるんだけど……ゴキブリにテニスボール投げつけて潰してたぞ? なのに球技得意じゃない? ありえねぇ。
「お手玉はできるんだけどなー」
『それはあまり関係ない』
「あ、やっぱし? まぁうん、オレん家は武闘派なんだな、きっと」
それはまぁ、五百%認めるが。きっとなんかじゃねぇぞそれ。
「水中って格闘技の部活ないんだよな」
そういえば。
「ってか、あったら兄ちゃんも姉ちゃんも入ってんだろな」
勧誘されまくってそうだな。
「あ、そーそー、そういえばな。兄ちゃんと姉ちゃんが迷惑してるっていうオカルト部ってのがあるらしいぜ」
オカルト? ……オカルト、部?
「ま、自称部活のオタク集団らしいけど」
あぁ、なんだ。本当にそんな部活があるのかと思った。
「勧誘には気を付けろだってさー」
「そんなんされるのはお前だけだろ」
見えるんだろ? 奈那子が怖がるから口には出さないけど。
「あ、奈那子さんの右隣に……」
がたんっ!
痛い痛い痛い、しがみ付くところ間違えてるぞおい。
「なな、何!? あたしの右隣が、何なの!?」
「空気がある」
「怒るよ!?」
「おー、んじゃ、今日は修也じゃなくて奈那子さんと追っかけっこするか」
……ちょうどチャイムも鳴ったし、ってか?
ごちそうさまでした。