24 勉強してただけなのに
がらがらっ
「……ねー純兄、何でこの教室だけ誰もいないんだろ」
「俺に聞くな」
じゃあ誰に聞けというんだ。
忍でーす。
ただいま学校の自分の教室に着きましたー。
現在8時ジャスト。
いつもなら殆ど誰もいない時間なんだけど、テスト前だから勉強しに来てる人がそこそこいるんだよ。
えらいえらーい。
あたしはやんないのに。
でもよくよく聞き耳立ててみるとゲームの話とか漫画の話しか聞こえないんだよね。
……勉強してる人いるのかなぁ?
「ひーまだー」
「いきなりか」
毎朝言って毎朝突っ込まれてるからもう日課的なものになってきてるんだよね、コレ。
んーっと、筆箱出ーして、本出ーして……あれ?
「……本忘れたっ!」
「あそ」
酷いよ純兄。
本無しで朝過ごすなんて出来ないよ。暇すぎて。
……今、あたしが本読むことを不審に思った人?
あたしも本くらい読むからね?
今日持ってこようとしたのはムダ知識の本だけど。
「純兄、暇だ」
「あそ。邪魔すんな」
……なんて酷い扱いだろう。
ちょーっと純兄のワークに落書きしただけなのに
は~、暇だ。
暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ!!
……たまには勉強するか~。
「ボソボソボソボソボソボソボソ」
「何ボソボソ言ってやがる」
「え? 英語って声に出してやった方が効率的なんでしょ」
なんかの本に書いてあったよ。
「……今何をやってた?」
「英語だけどそれが何か」
「…………」
……あれ?純兄がフリーズした。
「最近少し暖かくなってきたと思ったけど」
けど?
「明日はまた寒くなって雪なのか……」
「マテヤ」
何であたしが勉強したら雪が降るのさ。
「テスト直前の直前の直前の直前の直前まで勉強しないテメェが勉強してんだ。これが驚かずにいられる訳が……何か憑いてんのか?」
「ひっでー言い方」
テスト直前の直前の直前の直前の直前って言ったらテスト前の休み時間の事じゃん。
テスト直前(二週間前)の直前(一週間前)の直前(三日前)の直前(前日)の直前(テスト10分前~3分前の休み時間)って感じね。
「見た感じ何も……あぁ、憑いてた」
……え゛?
「後ろ」
くるん。
……何か、いるねぇ。
もやもやしててわかんないけどさ。
どかっ
「殴り飛ばしたからもう何も憑いてないでしょ」
「……憑かれてたせいじゃねぇのか……。病院行くか? せめて保健室」
「ちょっと!? 何でそーなんの!?」
「だって……なぁ?」
なぁって。
「よっす」
「おは、しーちゃん」
「何してた?」
「何って……テスト勉?」
ぴたっ
見事にフリーズ。
「何か憑いてる? それは無いか、忍だし。頭大丈夫か?」
……何でそーなるかなぁ!?
「おっは! ししじ!」
『ししじて』
「『し』のぶ『し』の『じ』ゅん」
何でそう略すかな。
「んで? 純と篠は何そんな深刻そーな顔してんだ?」
『忍が勉強してるから』
「なにぃっ!? 忍はオレと同類(つまりノー勉)だと思ってたのに! 裏切り行為だ!」
おーげさな。
って言うか何で勉強しただけで裏切り行為になるの。
「忍、毒キノコでも食ったか?」ぽん
どかっ
肩に手を置こうと近寄ったのが運のつき、
「忍の前蹴り、大事なトコへ入りました~!」
丁度いい位置にあったからね。
あたし座ってたから。
「おはよ~! で、何で清君前蹴り食らってたの?」
『忍が勉強してることに下手に突っ込んだから』
「えぇ~っ!? 忍が!?
純君! 昨日の晩ご飯or今日の朝ご飯に変なモノ入ってなかった!?」
……皆さぁ、
どーしてそんな反応しかしてくれないの!?
勉強してたら驚かれる……。
そんな人って意外とレアじゃないですか?