238 テストは敵
「純、忍!」
あり、清?
「ん」「何?」
「今切羽詰まってんだ!」
そうか。
『まぁガンバレ』
「助けてくれって言ってんだよ!」
言ってないじゃん。
忍でーす。
間もなく中間テストです。きっと清が助けてほしいのはそこでしょう。
「数学? 二次方程式位解けなきゃー」
「ん、二次関数位簡単だろ?」
「おめー等ぶっ飛ばすぞコラァッ!」
それ頼む奴の態度じゃなーい。
「忍~! お願~い、理科教えて!」
桜まで。
「あー、イオンややしいよねー。あ、酸とアルカリも入ってたっけ。アルカリは人間溶かすんだってー」
「タンパク質だろ」
あれ? 実験の時に理科の先生が『溶けないように気を付けて扱ってねっ★』とか言うから人間溶かすのかと思ってたよ。
「しぃいのぉおぶぅう!」
「ぎゃぁっ! しーちゃん! 怖い!」
いきなり突進なんかしてくるなっ!
「英語教えろ!」
命令形!?
「純兄に言った方がいいんじゃないの?」
「純は間違いなく清だけで手一杯だ。アレの数学の苦手さを侮ってはいけない!」
別に侮ってはないけどさぁ……一応二年半は一緒に居るんだし。
「てか清、こんだけきっぱりと言い切られといて何も言わないの?」
「いやー、だってほら、事実じゃん?」
うわー、認めてるー。
「でもさ、数学できねーと受験ヤバいじゃん?」
「何でそれを一年前に気づかなかった」
そだよ、純兄の言う通りだ。
「オレは今しか見ねーんだよ!」
『開き直るな』
「と言うか~、さっき受験って言ってたから未来見てるよね」
「あ゛」
ざ・矛盾。
「と、とにかくっ! 教えろっ! っつかテメーの脳味噌寄こせ、純!」
怖いこと言わないで。
「俺の脳味噌やったらテメェが俺になるぞ? つまりテメェの存在がなくな「やっぱいいっ!」」
そんな慌てて取り消さなくても。本当にやるわけじゃあるまいし。
「ちなみに清、意味わかってる?」
「分かんねーけど何かぞっとした」
生存本能とか言うやつか。
「と、とにかく! 数学教えてくれ! ついでに他のもよろしく!」
「他のやってる暇があんのか?」
「そこには突っ込むな!」
無いんだ。
「何処が分かんないんだよ。数学なんか覚える事少しだろ?」
「計算が無理! 暗算とか超遅い!」
「帰れ」
「今まだ昼休みだぞ!?」
大丈夫だよ。五時間目家庭科で、六時間目総合なんだから。何がどう大丈夫かは知らんけど。
「んだからさー、二児法律なんかどうやって解くんだよ!」
「何だよ二児法律って。二児の法律か?」
どんな法律、それ。
「忍、イオンって何?」
「桜!? 何、そこから!?」
「まさか~。数学中の清くんじゃあるまいし」
良かったー。
「で、イオンって何?」
「分かってないんじゃんか! 電気を帯びた原子だよ!」
+の電気を帯びたのが陽イオン、-の電気帯びたのが陰イオン!
「あ~、あの、先生が丸かいてその周りにさらにぐるぐる書いてたあれか~」
……原子核と周りの電子の事かな?
「忍、これ何語?」
あたし等の生活の中で、しかも授業で配られた宿題に書かれてるのは日本語か英語のどっちかでしょうが。
『I know how to play the piano.』
私はピアノの弾き方を知っている、か。
「んと、英語だけどどこが分からない?」
「全部!」
「いーい、これがĪで、私は、私がって意味」
「それは分かってる!」
だって全部分からないって言ったじゃん。
「knowは分かるよね」
「知っている」
「そ。んで、how to」
「何語?」
英語だってば。
「~の仕方、でしょ。こないだやった~。ね、忍、物体を上に持ち上げる仕事をした時、持ち上げる力と同じ大きさの、下向きに働く力って何?」
重力でしょ?
ってか、いつイオンから仕事に変えたの。
「桜、なんで今地球に立ってられる?」
「立ってちゃいけないの!?」
そうじゃなくて!
「地球でさ、ジャンプしてもすぐ落ちるでしょ? 何が働いてるから?」
「えーと」
「ほら、なんで筆箱は下に落ちるの?」
「重力だ!」
「そゆこと」
「お~」
ところで桜、何やってるの? ワーク?
「このワーク、わたしまだ二十ページもあるんだよ! テスト終わった後に提出とか酷いね~」
「ソンナノ、アッタッケ」
「何だ忍、忘れてたのか?」
ピンチ。