235 信頼性
「おはよー。……あれ、純は?」
「あ、おはよなっくん。純兄ならここ」
「……居ねぇじゃん」
見えないだけだよ。ちゃんと居るよ!
忍です。
純兄が霊体化してしまいましたどうしよう。
とりあえず鞄は持ってきてあげたけど……だってほら、純兄が見たら他の人にはカバンが浮いてるように見えちゃうでしょ?
ちょっと気付いたこと言っていい? 服は霊体化するんだね! 何このご都合主義。
「ちょっと忍! ふざけないでよ!? どこに純が居るのよっ!」
おー、玲奈。ようやく純兄の名前をするっと言えるようになったかー。
「だから、ちゃんと自分の席に座ってるよ」
「居ないじゃないっ!」
「そこで編みかけミサンガが浮いてるでしょ? しかも現在進行形で編まれていってるでしょ?」
柿の種がはさみで切っちゃったっぽい。いつの間に。
「……きゃぁっ!」
気付いてなかったんかアンタ。
「これやってるのが純兄だよ」
『きゃぁあっ!』
あら? 別にホラーじゃないでしょ? 知り合いでしょ?
「この反応を見てどう思います、純兄」
「え?」
「いやえ? じゃなくて」
「後もう少しでできるから話しかけないでくれるか?」
早っ。
「編むスピードが半端ねぇな……。鬼早い」
鬼? 純兄は鬼じゃないよ。
「高山さん、高山兄って何モン?」
「高山家の長男」
「いやそうじゃなくて」
言っていいのかな、駄目なのかな。
「よし、できた」
もう!?
早すぎでしょ。
「人間、やればできるもんだな」
あ、そのミサンガ端っこに留め金ついてるんだー。
「純兄人間じゃないでしょ?」
「今人間に戻った。だから人間でいんだよ」
『高山兄っ!?』
おー、ミサンガ付けた途端皆に見えるようになった。
「高山くん、あなた何者!? 幽霊!? 悪霊!? 悪魔!? 大魔王!?」
「何でどんどん悪くなっていくんだよ」
『いいから答えろ!』
ちょっとみなさんいいですか?
もう朝のSHRはじまってます。担任来てないけど。
「死神だよ」
っておーい!
「純兄!? 何あっさり言っちゃってるの!? 隠してたくせに!」
「いや、なんかもう、霊体化するとこ見られたしいっかって」
開き直るな!
なんであたしははぐらかしたんだよさっき!
「ほら、先輩も言ってたから。『どーせそのうちバレんだから、あんまりピリピリしない方がいいよ』って」
知らんがな。
『ぅぇええええええ!?』
あ、何かクラスの皆さんが叫んだ。静かだとおもったら驚きのあまり沈黙してたのか。
「純、頭大丈夫か!? 病院行けビュイン!」
ビュイン?
「脳の精密検査受けておいで! ほら早く!」
「頭大丈夫だし行かねぇよ」
『頭大丈夫な人間が死神宣言なんかするかぁあああああっ!』
クラスの皆は正論を放った!
「じゃあ別に信じなくていいよ」
『へ?』
「いやだから、信じなくていいってば」
『あ……そう』
何かさっきまでの騒がしさが嘘みたいに静かになったなー。
ざわざわとはしてるけど。
「おい純」
「ん? 夏か」
「何で今まで言わなかった?」
あ、清まで。
「そうだよ~!」
「しかも一度はぐらかしたな?」
桜としーちゃんも。
さぁどうする純兄。半眼になって……。
「言って信じたか?」
『いや』
即答!?