234 教師がおかしくなった件
変なのが居る。……変なのが居る。
大事な事なので二度言いました。
忍でーす。
朝、学校に来たら変なのが居ました。
んーっと、頭には『粛正』って書かれた鉢巻、手には竹刀、ジャージに何故か下駄。
……と言う姿の柿の種もとい牡蠣野胤(先生)!
何があった!?
「純兄、あれどう思う」
「壊れたんだと思う」
「純兄以上の壊れ方だねー」
「いや、あれはまだ人間だから俺以下だ」
どーゆー基準なのそれ。そしてなんか張り合ってない?
……よく見てみたら、何かあれだね。今の牡蠣野、よく漫画で見かけてる生活態度の強面先生だね。筋肉ついてないのが残念。
「ねぇ、純兄」
「門を通らずに学校に入る方法なら五通りはあるぞ?」
「ちょっと待て。何で門を通ったらまずいかのような言い方なの」
ってか五通りって? そんなにあるの? それでいいの学校として。
「あ、ちょうどいいのが来た。ちょっと柿の種の方見ててみろ」
ん? あ、学校一の真面目ちゃんと噂の……四組の誰かさん。
普通に挨拶して門通ろうとしたら、あれ? 何か呼び止められた。手首掴まれた。
スカートは別に短くないし、カバンに何かちゃらちゃらがちゃがちゃついてるわけでもないのに……むしろ、これ以上真面目な格好できないような姿なのに、何で?
「永田、これは何だ!」
……? あ、永田って言うんだあの人。じゃなくて、これって何?
「え? 髪留め用のゴムですけど……体育の時要るので」
今、体育マット運動だもんねー。
「そんなモノ鞄に入れておけばいいだろう!」
えぇ!? それだけ!?
「えぇ!? だ、駄目なんですか!?」
「当然だ」
もっとちゃらちゃらしてる子いっぱい居るじゃん。今はまだ時間早いから来てないけど……。
「……そ、そうですか」
永田、ちゃんと言われた通りにするところが真面目だね。
「な? 通ったら絶対何か言われるだろ?」
「え? 別にあたし、変なモノ付けてないけど」
…………あれ、何か純兄がじと目でこっち見てる。
手首? あ。
「しまった……ずっとつけてたから忘れてた。ミサンガの存在」
いつか純兄に『死神予防』とかでもらった、不思議な石のついたミサンガ。……どーしよ。これ取れないんだよ。直接手首に結んだから。
「やっと気付いたか。それ、絶対引っかかるだろ?」
「あれ? 純兄は引っかからないんじゃ……っと、何か首に付いてんだった。取れないの?」
今まで純兄の一部としてスルーしてたけど、純兄の首にも石が編み込まれたー……ミサンガでいいのかな。首に巻いてるけど。
「一応取れるけど、取ったら俺霊体化する」
「嘘っ!?」
「いや、ホント。だから取れない」
へー。へー。ちょっと取って見たい。
「取ったら怒るよ?」
「ごめんなさい」
エスパー? エスパーなのこの人。
「おーい! じゅし!」
『誰が樹脂じゃ』
「おは、忍と救護係」
「おはよー、しーちゃん」「誰が救護係だ」
「だって体育大会ずっと救護係だったから」
救護係でもいいじゃん。
「何やってんだ? おめーら」
「柿の種がおつまみの分際で生活態度の教師気取ってんだ」
酷い言われようだな、ホントに教師なのに。
「小っさい事にもいちいちケチ付けてくるっぽいし……どうやって入るかな。隣の保育園から入るのは最後の手段にしてぇんだけど」
そらそうだ。
「おいこら高山ぁ! いつまでそこに居るつもりだ!」
あ、気付かれた。
「行ってらっしゃい、純兄」
「何で俺だけなんだよ。明らかにテメェもだろうが、今のは」
やっぱり?
「いつまでそこで話しているつもりだと言っている! ちょっとこっち来い!」
どーしよ。
『いってらっしゃーい』
清としーちゃんは何で見捨てる気満々なの!? 何でご丁寧に手まで振ってくれちゃってんの!?
「よしテメェ等、覚悟しとけよ?」
『い、いってらっしゃーい……』
冷や汗かきながら頑張るねぇ。
「おい高山妹、手首のこれはなんだ!」
「ミサンガですが。見て分かんない?」
「何で学校にこんなものを付けてくる!」
「だって取れないんだもん」
「切れ!」
「願い事叶わなくなっちゃうじゃ~ん」
「何を願ったんだ!」
え? えーっと……。
「霊にとりつかれませんように」
「切るぞ」
「駄目!」
何真面目にはさみ出してるの!? 何で持ってるの!? 光じゃあるまいし!
あ、純兄、先生の手首掴んで……捻る。痛いよ、これ。
「あいたっ」
「駄目っつってんでしょうが。耳聞こえねぇんすか?」
あ、純兄の敬語にあらが。そもそも純兄って柿の種に敬語使ったっけ。
「あっ、高山兄! 首のこれはなんだ! 今まで気付かなかった!」
シャツに隠れてるもんねぇ。そりゃ見えんわ。
「お守りですが何か?」
「何かじゃない! 取れ!」
あの、手首が変な方向に曲がり始めてるけど、大丈夫?
「これは無理」
「今までつけてなかっただろう!」
「アンタが気付かなかっただけだろ?」
あ、敬語使うのやめた。
「いけいけー! 誰かは知らないけど怪我の手当てしてくれた先輩!」
「頑張れセンパーイ」
「いいぞ高山兄!」
何か、純兄応援されてるし。
何の応援? このままもうしばらく門の方がお留守になるようにって意味?
大分いろんな人来てるもんねぇー。野次馬だらけだもんねぇー。
「いけいけ救護係!」
「救護係は定着してるのか?」
多分。
「高山兄……お前のせいで俺はピーナッツなんか混ぜられたんだぞ! 誰が柿ピーだちくしょー!」
酔ってるの? ショックでおかしくなったの? 何か今更感しかしない。
「大丈夫だよ先生! 僕がピーナッツ食べてあげる!」
『そーゆー問題じゃないだろ』
「てへっ☆」
誰?
「教頭先生、なんでそこで見てるんですか?」
「何か、見てたくて」
だからって何野次馬に混ざってるの教頭!
「純兄ー、もう柿の種こかせば? 天体観測の時みたいに」
「ん」
あ、今顔色が変わった人、三年一組だ。
どたん!
あ、ホントにこかした。……あれ?
…………柿の種の手に、純兄が付けてたミサンガが。
「あ、やべっ」
霊体化しちゃった。
『消えたっ!?』
あー、純兄ピンチ?