232 天体観測の恐怖
あのね、確かにね、体育大会の応援と総合両方優勝したのはあたしだって嬉しいんだ。
んでね、じゃあせっかくだし皆でなんかするかー、見たいな流れも分からない訳ではないんだよ?
でもね、
何でその内容が天体観測なのかなっ!?
忍です。
どっかキャラが変わった気がするのは気のせいです。
最初に言ったとおり、優勝記念に、裏山へ天体観測に来ています。何で!?
あぁいや、皆一回家には帰ったよ? 晩ご飯も食べてきたよ? どうでもいい事な気がするけど私服だよ。
「やー、雲も無いね。天体観測日和だ」
「月も出てないしねー。あ、金星!」
「あ、夏の大三角!」
皆最初は何で!? って突っ込んでたのに……普通に楽しんでます。まぁいいや。あたしも混ざろ。
「桜ー、しーちゃーん」
「あ、忍~、太陽系の惑星って何だっけ。水金地火木……?」
土天海冥ね。あ、冥王星は違うんだった。すらっと言っちゃうけど。
なんか、海で終わると物足りないんだよね。
「どうだ皆! オレ、天体望遠鏡持って来たぜ!」
『早く出せよ!』
清がぱぱぱぱっぱぱーとだした望遠鏡、突っ込まれながらも大人気。
順番はジャンケンで決めようね~。
「天体観測といえばもっとしっとりしたイメージがあったんだが」
「しーちゃん、それ言っちゃダメ」
ちゃんと虫の声が聞こえてるんだからそれでいいじゃないか。
「早く変われ!」
「やぁーっ! もーちょっとーっ!」
……いや、周りの声で余聞こえないか。
そして何望遠鏡取り合ってるの。小学生かあんた等。
「じゅ、純っ、北極星ってどれなの!? べ、別に分からない訳じゃないわよっ!?」
分かるんなら普通聞かないでしょ。
「はいはい。あれだろ」
……なんか純兄、玲奈の取扱い慣れてるなぁ。でもって北極星見つけるの早っ。
「玲奈って何座?」
「え? 何よ突然っ」
「探すものがなくなってちょっと暇になった」
見るだけじゃダメなの純兄!
「ペ、ペガサス座よっ」
「んな星座ねぇだろ? いやあるけど、誕生日の奴にはねぇだろ?」
「あ」
玲奈、君は何がしたかったの。
「べ、別に忘れたから適当に言ったわけじゃないんだからねっ!」
「理由を綺麗に言ってくれてるなおい。誕生日は?」
「し、四月二十二日……」
あれ? 純兄と同じなんだ。
よし、後で玲奈姉って言ってからかってみよう。
「んだよ、同じか。おうし座はさっき見つけたから……よし、今度はいっそペガサス座探すか」
結局そうなるの?
「み、見れるの!?」
「星さえ出てりゃ、多分」
「ど、どれ?」
純兄って星好きだったっけ?
「……ああいうのをいい雰囲気って言うんだねぇ~」
「どわっ! 桜、何で地面にしゃがんで膝なんか抱えてるの!?」
「しーっ、気付かれるでしょ!」
気付かれるも何も最初からここに居るんだから……。
って、何か後ろに変な光景が見えた気がする。
恐る恐る振り向いてみると……。
「どぴゃぁ!」
全員が桜と同じ格好してた!
『しー、気付かれるだろ!』
この声とこの変な行動で気付かれると思います。
「あ、あれだ、ペガサス座」
「え、どこ? 見えないわよっ? べ、別に見えないわけじゃないわよっ!?」
「どっちだよ」
見えないって言ったじゃん。
「高山兄の野郎~、俺、鈴木の事密かに狙ってたのに……」
何か少し殺気を感じました。返り討ちにされるから手は出しちゃダメだよ?
「……小熊座ってどれ? わ、わからないわけじゃないわよっ! 確認よ確認!」
「北極星の隣の星と……後、その更に隣の四つの星が小熊座。あれ」
「あ、あれねっ! ……や、やっぱりあれだったのねっ」
間があったよ、不自然だったよ流石に。
「あ、ところで玲奈。ちょっと聞きてぇんだけど」
「な、何よっ?」
あ、このパターンは……ちょっとあたしは……
「な、何かな何かなっ」
「きゃーっ」
女の子がそわそわし始めた。何で?
「俺の……」
『きゃーっ』『あんにゃろ……(もてない男子、恨みの声)』
「あ、俺等の……」
『何々?』『……うん?』
「後ろで体育座りしてる奴等、どう思う?」
「えっ?」『げっ』
ほらねっ! やっぱりね! こう来ると思ったよあたしは!
逃げといて良かった! 木の上に!
何かなっくんも一緒だけど。
「俺は皆を地面に寝かせて星を見させてやるのが一番だと思うんだけど」
「そうねっ! やっちゃえっ!」
何か今回だけは素直だな玲奈!
「……誰から寝る?」
『ごめんなさぁああああい!』
「遅ぇな」
あーあ、片っ端からこかしてってるし。本とにねっころがしてるだけじゃん。
ってか器用だな、杖と足と片手でやってるよこの人。
「なっくーん。おーい」
「も、やべ、あは、腹筋、マジ、やべぇ。あは、あはは、壊れる、腹筋壊れるっ! あははははっ!」
くれぐれも木から落ちないようにしてください。
あたしの危機感地能力が三メートル位のところまで登っちゃったんだから。
「忍ー、夏ー、おーりとーいでー」
「純兄怖い! ハンパなく怖いよその言い方!」
「ん? 何か言ったか?」
……なんか、登ってきた。一瞬で。両手と片足だけで。三メートルの高さまで
さぁ、なっくん。ご一緒に?
『ぎゃぁああああああっ!』