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ただいま暴走中!  作者: 呪理阿
九月だろうが暴走中
230/410

230 プログラム八番

「あおーい空ー、しろーい体操服ー、まっしろーい旗ー」

 白が二つ入ってるんだけど。

「シジミ、何でもいいからその耳に悪そうな歌をやめてくれ」

「高山くん酷くない!?」

 酷くない。だって本当に耳に悪そうだったから。

 純だ。

 午前の部の得点は高い順に、青342点、白311点、赤298点、黄296点だ。

 これからムカデ競争だけど……こけなきゃ良し、って感じだしなぁ……。大丈夫か?

 ちなみにコースは、まっすぐ走って途中でおいてあるコーンを回り、戻って来るって感じ。体育の教師が言ってた。『カーブを制する者はムカデを制す!』確かにそうだがこけたら終わりだな。

「いやったぁあああああ! 一位!」

 ん、一年が戻って来たな。次は二年か。

「……白組三年! 円陣組も! 絶対勝つぞー、おー! ね!」

 花上の言葉で思ったんだけど。全校生徒で円陣組んだらどれくらいの大きさになるんだろう。

 いや、ほんとどうでもいいけど。

「おい高山兄ぃ! 杖置いてテメーも入んだよ!」

「何で?」

 参加できないのに。

「えー……て、手当て係!」

「怪我人出る事前提かよ」

「いーから来い!」

 はいはい。

「いいぞー、花上」

「いくよ? 絶っ対っ勝つぞーっ!」

『おぉおおおおお!』

 痛っ。何踏み込んでんだ俺。怪我したこと忘れたか? 周りの雰囲気に流された……。

「純って意外と馬鹿ねっ!」

「うっせ。とっとと足の紐つけやがれ、玲奈」

「わ、わかってるわよっ!」

 あ、こら、適当なのつけるな馬鹿が。順番狂う。

「あーっ!」

 こっちは何だ。

「二年全クラスこけやがった」

 怪我人は出してくれるなよ?

「純に、純に」

「んだよ忍」

「純兄が先導したら確実に一位とれると思うんだけど」

「餌か俺は。反則だろうが」

「やっぱり?」

 やっぱりとか思ってたなら言うな。

「あ、二年は二位みたい」

「ちょっ、これであたし等四位だったらダサいじゃん!」

 さっき絶対勝つぞの円陣やろうと言い出したのはお前だろうが。何で今更マイナス思考になってんだよ。

『スタート一分前』

『きゃぁあああああ!』

「なんでテメェ等叫んでんだ?」

『何か緊張して』

 緊張したら叫ぶのか、端迷惑な奴らだなおい。

『三十秒前』

『ぎゃーっ!』

 やかましな。

『十秒前、九、八……』

「ちょっ高山兄、助けて!?」

「何から」

「緊張から!」

 無茶言うな。

『五、四、三』

『ぎゃっせーのーで!』

 ちゃんと走れんのかこいつ等。今更ながら。

『いっちにっ!』

 あ、ちゃんと走れてる。ダントツで。

 ダントツでドベだけど。

 奇跡が起こらん限り勝つのは無理だな……。

『わぁあーっ!』

 お、赤組がこけた。やっぱカーブは難しいもんな。

 黄組はまぁ足取りが危なっかしくなってきてるからいいとして……あ、こけた。

 問題は青組だな。いちいち強い。総合得点もダントツでトップだし……。

 っと、やっと白組もカーブ終わったか。

 …………あれ。

 何か、妙に速くなりだした?

 ゴール地点に居る、俺に向かって、クラス全員が、全速力で向かって来……。

「い、い、い、いやっっったぁああああああ!」

「一位!? 一位なのあたし達!?」

「見たか! 俺のゴールする時の滑り込み!」

 あぁ、蔵元の奴ヘッドダイビングするのかと思った。つまり潜る気かと思った。額から血ぃ出てるぞおい、気付いてるか。

 ……ところで。青組、抜いたのか?

 四分の一位差つけた相手を?

 すげぇ……とか思いきや、な。ゴール直前でぎりぎりゴールしきれずにこけてる青組が目に入ったりしてな……俺の褒め言葉を返せ。

 運の強さは褒めるけど。

「奇跡だ……。奇跡が起こった……」

「うんうん! 亮、やったねっ!」

「忍~っ! やったね!」

「うんうん! やったやった!」

「みんなぁーっ! 円陣組むぞぉーっ!」

 またか、とは思うけど……まぁ、悪くないか。

「ムカデ優勝ーっ!」

『やったぁあああああっ!』

 よく見たら、泣いてる奴も居た。

 テンションに任せて、何か背負い投げとかやってる奴が居た。余計に怪我人を増やすな。

 ……これ見ると、ちょっと、ムカデに参加できなかったのは寂しかった、かな。

「おい! 高山兄ぃ!」

「蔵元、血だらけの顔を近づけるな」

 包帯残ってたっけ……。あ、テープの方が残り少なかったかな。

「いや、あの。まぁとりあえずだな!」

 とりあえずだな、じゃなくて傷口洗ってこい。

「一人でシケた顔してんじゃねぇぞって事だ!」

「……そんな顔してたか?」

「少なくとも俺にはそう見えた」

「あたしにもー」「私もっ」「おれも」「僕もーっ」

 あー……ん、よし。

「じゃあそれはいつまでたっても怪我した奴等が傷口を洗わんせいだな。俺は手当て係なんだろ?」

『え゛っ』

 ちょっとまてやこら。今『え゛っ』っつった奴全員が怪我してんのか? ほぼ全員じゃね?

 ……今年の体育大会は怪我人祭りか。

「傷口洗ってきたらお前が全員の手当てするんだな!」

『行こーっ』

 え、ちょっと待て、俺一人で? 全員?

「よかったねぇ、純兄」

「何がだよ……」

「ちゃんと参加できてるじゃん」

「…………ま、な」

 ……今はめんどくせぇの方が上回ってるけど。

「じゃああたしも傷口洗いに行ってきまーす」

 大事な事だからもう一度言わせてくれ。

 今年の体育大会は怪我人祭りか。

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