23 トラウマの歌
「くわっ、くわっ、くわっ、くわっ♪」
純だ。
今日は近所(?)に住んでる従弟妹が遊びに来ている。
で、さっきから兄妹4人+αで従妹の歌を聞かされているという状態だ。
「けろけろけろけろくわっくわっくわ~♪ ありやとでちた~!」
ぱちぱちぱちぱち。
礼をしたら拍手してやら無いとすっごく不機嫌になるからやっておく。
あ、ちなみにこいつ等はなっちゃんこと仙波奈津叔母さんの子ども。
兄の神谷(5歳)と妹の菜美(3歳)。
「つぢゅきまちて~、どんぐい(どんぐり)の歌~!」
……まだ続くのか?
「まだやんの……? 八曲目だよ」
「ねーちゃん、あきらめろ。小さい子には勝てないものなんだっ!」
「いいぞ~菜美ちゃん~。もっとお兄ちゃんやお姉ちゃんを困らせちゃえ~」
待て光。煽るな。神谷は既にぐてっとしてんだから。
「じゅ、じゅんにいちゃん……もうだめぽ……」
それは大げさだ、神谷。
「どんぶりこよこよどんぶりこ~♪」
なんで『どんぐり』は『どんぐい』になるのに『どんぶり』はちゃんと言えるんだ?
「どんぶりって同じところでぐるぐる回るだけじゃ……」
岳、突っ込んだら負けだ。
「おいけにはまってさ~だいべん♪」
「大便違うから! 大変だから!」
忍も突っ込むな。効かないから。
「ごじょうがでてきえこんいちわ~」
悟浄が出て消えコン一羽?
違うか。
「おっちゃんといっちょにあそびまちょ~♪」
『誘拐か!?』
だから突っ込むなって。
「どんぶりこよこよよよこんれ~♪」
「どんぐり結婚したの~?」
血痕?もとい結婚?
……あぁ、最後の『こんれ~』が『婚礼』か。
「ちばやくいっちょにあちょんらが~♪」
……おぉ、久し振りに突っ込みが無かった。
「やっぱいこやまがこいちいと~♪」
『小山って誰!?』
「こーくんのともだち」
『いるの!?』
「ないれはごじょうをこまらちた~♪」
頑張れ悟浄。
「ありやとれちた~!」ぱちぱちぱち
「三番は!? どんぐり帰したげて!?」
「悟浄も大変だね~」
悟浄と俺等を重ねてねぇか、光。
「それれはつぢゅきまちて~ぶんぶんぶん!」
「なわとびの歌?」
「お姉ちゃん違うよ~。はちのやつだよ~」
「うげっ」
……あれか……?
「ぶんぶんぶん~はちがとびゅ~♪」
……これか……。
「といれのまやいにのはやがしゃいたよ♪」
「トイレの間や胃に野原が咲いた!?」
「すげー」
「野原って咲くって言うのかな~?」
「ぶんぶんぶん~はちがとびゅ♪」
一息すって……?
「ぶんぶんぶん~はちがとびゅ~♪」
……二番に入った。よかった、小っこい頃の光とは違うみてぇだ。
「あさちゅゆぎやぎや♪」
「朝露がギラギラってどーなってんの!?」
「水銀の朝露とか~?」
いやそれかなり危ねぇから。
「のはやがゆえゆよぶんぶんぶん~はちがとびゅ♪」
『地震!?』
野原だけがピンポイントで揺れる地震てどんなだよ。
「ぶんぶんぶん~はちがとびゅ~♪」
……ん? 三番なんてあったか?
「といれのまやいにのはやがしゃいたよぶんぶんぶん~はちがとびゅ~♪」
一番と同じじゃねぇか。
「といれのまやいにのはやがしゃいたよぶんぶんぶん~はちがとびゅ~♪」
……何か同じ所をぐるぐる回ってる?
これじゃまるで……
「小さい時の私みたいでしょ~! お母さんに聞いたの~」
「……ねぇ光? まさかとは思うけど……」
「菜美ちゃんに三番って言って教えたよ~」
『マジか……』
「ん? どういうこと?」
あぁ、神谷は知らなくて当たり前だ。
光が菜美くらいの頃、一日中歌を歌ってた事があって……。
それが『ぶんぶんぶん』だったんだな。
同じ歌の一番ばかり何回も何回も続けて歌うんだ。あんな風に。
『ぶんぶんぶん~はちがとびゅ~ といれのまやいにのはやがしゃいたよ ぶんぶんぶん~はちがとびゅ~ ぶんぶんぶん~はちがとびゅ~ といれのまやいにのはやがしゃいたよ ぶんぶんぶん~はちがとびゅ~ ぶんぶんぶん~はちがとびゅ~ といれのまやいにのはやがしゃいたよ ぶんぶんぶん~はちがとびゅ~ ぶんぶんぶん~はちがとびゅ~ といれのまやいにのはやがしゃいたよ ぶんぶんぶ……』
誰か、止めやがれッ!!
『どんぐりころころ』は私の、『ぶんぶんぶん』は妹の小さい頃に歌ってたものを参考にしています。
『ぶんぶんぶん』のループは最初大丈夫でも後々ぐてってなってきますよ、ホントに。