229 プログラム七番です
「白組ぃーっ! おーえーん! 始めます!」
ドン、ドン
さぁ、始まりました、応援合戦。
演技、声の大きさ、タイミング、完成度、等が審査されます。
ちなみに審査員は各学級の学級委員長です。
私ですか? 美香と申します。
応援団です。きちんとエールをする位置にスタンバっています。
何事も楽しまなければ意味がないのです。体育大会で一番楽しそうな役割と言ったら、やはり応援団でしょう。
「白組のーっ! ゆーしょー願ってーっ! エールをー! 送ります!」
ドン、ドン
本当は団長の座を狙っていたのですがね。悲しいかな、女子は団長にはなれないのです。
男女差別だー、と叫びたいところですがバランスを考えれば仕方のないことです。
ですので、確実に優勝できるような声を出すように、団長の迅谷さんを脅しておきました。ぬかりはありません。
優勝は白組のモノです。
「フレーッ」
っと、私も声を出す時が来ましたね。
『フレーッ! しーろーぐーみっ!』
『そぉーれっ!』
団席の声、期待以上に大きいです。特に……何と言うのか忘れましたが、一年生の男の子の声がとてもよく聞こえてきますね。
「三っ、三っ、七びょぉーしっ!」
ドンッ
っと、いつの間にかエールが終わってました。
体が勝手に動くので意識がどこかへ飛んでいました。今なら寝てても演技できるような気がします。流石にしませんが。
ドン、ドン、ドン
『はっ』
ドン、ドン、ドン
『はっ』
ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン
腕を前後左右、動かします。たまに肩からポキッと聞こえてくるのは気にしない方向で。
手に持ったポンポンがくすぐったいのです。ちょっと裂きすぎましたかね。ビニールテープが髪の毛のように細いです。よく丸坊主にせずに出来ましたね私。
『はぁあ~っ』
ドドドドドドドド……
ドンッ、ドンッ、ドンッ
『はっ!』
ポンポンを持った手を思い切り上に突き出して、シメッ!
私的には少し納得のいかない終わり方です。
最後に組体操の一つや二つ入れてもいいのではないでしょうか。
三三七拍子なんだから。
意味が分からない方は勝手にストーリーか何か作ってください。私も意味わかりませんから。
さて、次は自由演技ですね。
私もバク転マスターしましたよ。高山兄さん、厳しいですが意外と教えるのは上手いですね。
体中あざだらけになりましたけど。正直言うと今も痛いです。
「頑張ろう、日本!」
『おぉぅ!』
自由演技の掛け声に何でこれを入れたのでしょう。
提案したのは私ですけどね。
頑張れ日本、頑張れ東北。
ちなみに太鼓のリズムは、童謡『小さい秋見つけた』を少しアレンジしたものです。
案外応援っぽくなりました。ずっと同じ音程だと。
太鼓団が『意外と難っ!?』とか言っていましたが、そこは無視です。
さて、まずは前から順々に女子は側転です。男子はその間、空手の型を組み入れたような踊りをしています。
地面に置いておいたポンポンが若干風で吹き飛ばされてしまいましたが、とりあえずは成功です。 今度は側転した先に置いてあるポンポンを手に持ち、中央に集合します。男子は変わらず、空手の以下略。
縦一列に並んだら、ポンポンを上に掲げ、後ろから順に散らしていきます。おろすんじゃないですよ。パッと放り投げるんです。
退場の時行方不明になるかもしれませんが、そこは気にしては負けです。
ちなみに、応援席は応援席で簡単に手を躍らせたり、たまに何かセリフを叫んでいます。
さて、ここからが本番です。
まず、女子がロンダートやバク転、倒立……何と言うか忘れましたが、バク転の逆の奴で端へ寄ります。
そこへ一年男子がヘッドダイビーングッ! ってダイビングしてどうするんですか埋まるんですかあなた。
失礼しました、ヘッドスライディングしま……何か技しようとしてしくじりましたねこの子!
その上を飛び越えるように二年男子がバク転の逆の奴を……あ、手をつくところがしっかり一年男子の背中ですね……。ぐっじょぶです。
さらに、三年男子二人がまるで交差するようにロンダート→バク転を決め、ポーズ!
これにて演技終了です。
「白組ぃーっ! おーえーん! 終わりますっ!」
ドン、ドン
ふぅ、達成感いっぱいです。やはり楽しまなければ意味がありませんね、こう言う事は。
『白組の演技に、問題点がありました』
それを放送で言いますか普通。
何ですか、問題点って。
『自由演技では、応援団による危険な技は禁止されています』
……ぱーどぅん?