222 セコい奴等
「じゃじゃーん! 未理阿ちゃんでした!」
「霧瑠依くんでしたー」
「帰れ」
「酷いでした!」「なんでー?」
うるせぇんだもん。
純だ。あ、またコケた。
ちょうど校舎の陰になるところに置かれた、どこからどう見ても素人の手作り、ちょっと動くだけでガタガタ言うベンチに座って、ちょっと離れたところでうちのクラスがムカデの練習をしているところを見て……あ、またコケた。
こないだはすげぇ息ぴったりだったのに。
「ねー、純セーンパーイ」
「ん、まだ帰って無かったのか」
「酷いことばっかり言ってたら……お金盗るでした!」
……あ?
「既に盗っといて何を言うか。おら、返せ。七百五十リール」
「げげっでした!」「ぎょぎょー」
バレてないとでも思ったか。
リールってのは霊界の金の単位で、七百五十リールは日本円で……大体三千円くらいだったかな。
「贅沢フルーツケーキは旨かったか?」
「何でそこまで知ってるでした!?」
俺は顔が広いんだよ。霊界に限るけど。
「うぅー、返すよー。はい」
「霧瑠依くん! 何するでした!」
「大丈夫だよー、ほかの人から盗ればー」
うん、見事な演技だけど……。
「ニセ札渡すなコラ。しかも何気にクオリティ高ぇなコレ」
ちなみに、リールは全部紙幣。一リールより細かいか、千リールより大きいのは貨幣になってる。
紙幣か貨幣にするかの違いがよく分からん
「何でバレたでした!?」「まさかのまさかりー」
「いいか、あのな。五十リール紙幣は縦八センチ、横七.五センチでちょっと縦長。裏に描かれてるのはテメェ等がサボってる学校の校長と、烏とコウモリ。あと表に描かれてる鳩と鹿。ここまでは合ってる。でも表に描かれてる人物は神校(神の学校の略)の校長で、死校(死神の以下略)の校長じゃねぇんだ」
「……くわしー」
ちょっと知り合いに作った奴が……いや、なんでもねぇ。
「でも、ホントの五十リール紙幣の表面にも、死校の校長が書かれてるでした!」
「似てるけど、ちょっと違うんだよ。死校の方は耳にピアスの跡があってだな……」
「分かるかー!」「分かるわけ無いでしたっ! 汚れだと思ってたでした!」
霧瑠依の叫ぶところなんか初めて見た気がする。
「俺も言われて初めて気が付いた」
「そもそも何で死校と新校の校長が似てるんでしたっ!」
「噂では双子らしいよー。新校の校長は見たことないから噂でしか知らないけどー」
あれ、俺は死校の校長は新校の校長の分身だとか聞いたけど。
まぁ、噂だしな。
「今度校長の耳見てみよー」
「ピアスの跡がきっとあるでした!」
そのまま風のような勢いで去って行こうと……させるか。
『ぐぇ』
こいつ等の着てるようなローブに限らずフードってつかみやすいな。
「なにするでしたっ! 首絞まったでした!」
「殺す気かー」
「七百五十リール、まだ返してもらってねぇぞ」
「あぅー」「気付かれたでしたっ!」
気付かれるも何も。
「今日のところは勘弁でしたっ! お父さんが病気で……」
「最初は生まれたての妹、次は爺さん、その次はお袋でこんどは親父か。次はいったい誰が病気になるんだ?」
「おー、のー」「くぅっ、今日のところは素直に払うでしたっ!」
……よし、これでさっき、ニセ札の中に混ざってた本物の百リール紙幣分設けた。
『わぁーっ!』
あ、クラスの奴等、頭から砂かぶったみたいになってやがる。これで何回コケた?