219 アイスと馬と
こんにちは、お久しぶりですね。
忘れたとは言わせませんよ。ニンジンとサツマイモの甘煮です。
『何でここに居るんだ、デカブツ』
『ぶっ飛ばしますよルービックキューブさん』
『今動いたら不味いだろうが』
そうですね、純さんが目の前で神、じゃなかった紙と格闘してますもんね。
隣では岳さんが『車が走った時間求めろ? 走った後で求めてどーすんだよ』とか言いながら薄い冊子と格闘してますもんね。
「にーちゃん、あぢい」
「ん」
……クールですねぇ、純さん。
「にーちゃん、何か食ってんだろ」
「あいふ」
……違いました。口にモノ入ってて喋れないだけでした。
ころころって、口の中で固いモノが転がる音が聞こえてきます。
「アイス!? アイスあんの!? 何味!?」
「れいほーこみけこひよ」
「ほいさっ」
新たな暗号ですか?
れいほーこって、霊の宝庫でしょうか。みけこひよ……三毛猫こひよさんとか?
『誰だよ』
『突っ込まないでください。真剣なんですから』
『冷蔵庫見て来いよ、じゃねぇか?』
あぁ、なるほど。
……よく分かりましたね。やはりパズルは頭が良いのでしょうか。
『関係なくねぇか?』
『響きが頭良さそうです』
『……分からん』
あら、何か勝った気分。
「にーちゃん! 冷凍庫見たけどアイスなんかねーぞ!」
惜しい。冷蔵庫ではなくて冷凍庫でした。
ルービックキューブさん、舌打ちしないでください。どうやってしてるんです? 舌無いのに。
「んっく。年中あるだろ。白っぽい透明なのが」
あ、飲み込んだんですね。聞きやすくて何よりです。
「氷かぁあああああ!」
「棒がついてない時点で気付けよ」
「アイスの種かと思ってさ……」
何でしょう、アイスの種って。アイスって種があるモノなのでしょうか。うぅん……。
「なぁにーちゃん」
「ひまひほがひひ」
「暇ならいーだろ」
……二個目の氷を口に含みましたね。
『ルービックキューブさん、約をお願いします』
『今忙しい、だとおもう』
岳さん、まるっきり逆の方に捕らえましたね。
「あのさー、このワークになー」
ワーク? ワーク……仕事って意味でしたっけ?
『あの冊子の事だろ。問題集に見えたけど』
何処で見てるんですか。目、無いのに。
私にはちゃんとありますよ。真っ黒なビーズが……
『体の割にずいぶんと小さい目だな』
だまらっしゃい。
「ひまひほがひーっへふぁ」
「わかんねーってば」
岳さん、分かってるんじゃないですか?
「んだからな、このワークの問題でな」
「ん」
あ、あきらめましたね、純さん。流石めんどくせぇ病。岳さんが前言ってたことをまねてみました。
「時速七十㎞の馬が五十mを何秒で走るかってんだけど」
「んっく。偉く変わった問題だな。体力テストか、おい」
三個目の氷に手を伸ばさないで下さい、聞き取りにくくなりますから。
そもそも何で氷がコップの中にスタンバイされてるんですか。溶けるでしょ。
「体力テストかってのはもう突っ込んだ。そうじゃなくてさ」
「ん」
「今時どこに馬に乗って五十mなんか計る奴がいるんだよって方なんだよ」
「昔も居なかったでしょ。そんなん」
「んーま、どちらにしてもどこに馬に乗って……って、ねーちゃんどこから出た!?」
最初からいましたよ。私の陰に。
「ニンサツの裏から出た」
ニンサツって言わないで!
何で忍さんがこの呼び名を知っているんですか! と言うか、私は認めてないですよこの呼び名!
『じゃあデカブツで』
立方体の集合体はだまらっしゃい!
『忘れたとは言わせませんよ』
コレの後に入れる『ニンジンとサツマイモの甘煮』という名前を、
書いた私自身が忘れてました(汗)