216 ばたばたでない朝
「にーちゃん」
「眠い、怠い、日光消えてしまえ。何の用か知らんけど忍に言え」
うっわ、聞きました奥さん、あまりにも酷いと思いませんかこの反応。
誰だよ、俺。あ、何か訳分からん文になった。
岳だ!
さっきのにーちゃんの言葉に突っ込みたいことがも一つ!
「日光消えてしまえってなんだよ!?」
「岳の声消えてしまえ」
「人魚姫かよ!?」
「姫? 岳が? オカマは嫌いだ」
そうじゃねぇっ!
「っつか、滅茶苦茶元気じゃんかよ!」
「元気じゃないもん」
子どもみたいな返し方すんなよ!
あれ? 中学生って子供? でも電車大人料金だし、未成年だし……うーん。
何か。年上に子どもって言うと自分が赤んぼみたいな気がする。これはヤだ。
「ったくー。何でいっつも無駄に早起きするくせに今日は寝てんの!?」
「無駄には余計だ」
「質問に答えろよっ!」
っつか、枕に顔うずめてねーでこっち向けよ! 誰かが言ってたぞ!
話をする時は相手の目を見なさいとか何とかかんとか。
「あーもー、ガッコ遅れてもしーらね」
「そうしてくれると助かる」
「何でっ!?」
「……しまった……」
しまった!? しまったって言ったよな今!? 何がしまった!?
「じゅーんにー、学校遅れるよー」
「ん、今何時?」
えーっと、七時三十分。
……こんな時間から起きてどーやって遅刻するんだよねーちゃんは!?
オレだって起きてるけどさ。これはまぁ、にーちゃんに起こされる時間がいつもこんなもんだから起きちゃっただけであってだな。
あれ? オレがにーちゃん起こす側に居るってことは……もしかして立場逆転? 何か知らんけどにーちゃんに9勝った? 何でだよ。でもやったー。
「ほらほら! 起っきろー!」
「岳、今黙ってた間に何を考えてた?」
「何もぉ?」
「嘘吐けや」
ちょっと怖かった、何だよ今の声。ちょっと笑含んだような声だったんスけど。怖いです。おねーちゃん助けてー。
「お姉ちゃ~ん~! ちょっと来て~! ピンチなの~!」
朝っぱらから何のピンチに陥ってんだよ光は。
「宿題真っ白~! 算数~!」
……確かにピンチだ。
「答えは教えないよー。ヒントなら出してあげるから自分でやりなさい」
「あぅ~。超特急でね~」
ねーちゃん、教師かアンタは。
「んでにーちゃん、どーしたんだよ。らしくねーの」
「…………すー」
おとーとが折角兄の心配してんのにシカトかよコラ。
「おーい!」
揺さ振り! でもにーちゃんこんくらいじゃ起きねーよな……。
「止めろ馬鹿!」
……あ、起きたわ。んでもって怒られたわ。
「んと、何かごめん?」
「……ん、凄く謝れ……」
日本語変じゃね?
「にーちゃん、何か声苦しそうなんだけど」
「ほっとけ。今は寝かせろ」
「うー……はぁい」
あれ、時計見たら、そろそろにーちゃんたちは出ないと遅刻な時間だったんだけど?