213 溜息の原因はケンカ売ってるのか?
「はぁー」
「ため息を吐くな夏。幸せが逃げる。ついでに言うとお前の陰気がうつる」
「……篠さん、陰気ってうつるモノでしたっけ?」
夏だ。
下校中、今になって思い出したことがあってすっげぇ落ち込んでるトコ。
「何かあったのか?」
ちなみに、一緒に居るメンバーは篠、清、俺。
忍は何か超音波みたいな声出す奴に拉致られて、純はそれから逃げるべく……どこに行ったかは知らんがどっかに行って……と言っても、普段から学校に残ってるが。
「おーい、人の幸せ逃がしといて何も言わずに済むと思うなよ?」
「……清、ため息吐いて幸せが逃げるのに他の人関係あったか?」
「溜息の原因は何か聞いてんだよ!」
最初からそう言ってくれよー。分かってたっちゃ分かってたけど。
「お前等知らねぇだろーけどさ」
「うん、知らないな」
篠さん、話の腰をいきなり折らないでください。
「夏、続き続き。篠はちょっと黙ってろよ」
「ケンカ売ってるのか?」
「何でそうなるんだよ!?」
息が苦しい。なぜなら笑ってるから。大爆笑中につきしばらくお待ち――ぷはっははは!
『夏、お前ケンカ売ってるのか?』
「やるかっ? あはははは」
これでも純やら忍やらたっちゃんやらの相手してきたから、多少はできるぜ?
……あぁうん、純とやったら白星より黒星の方が多いことは認める。
でも、俺の笑いをとぎらせたそこらへんの奴屍にするくらいなら楽勝だ!
「って、だぁから! 何でお前の溜息の原因聞くだけなのに喧嘩になってんだよ!」
「そうだそうだー」
「喧嘩の原因がそうだそうだ言うな!」
「清、お前ケンカ売って「だぁから!」」
このループいつまで続くんだ?
「もう夏! スパッといけ! 遠慮なく!」
「遠慮した覚えは「スパッと行けと言っただろうがぁあああああ!」」
清、そんだけ大きな声出るなら応援団でもやりゃよかったのに。
そしてきっと近所迷惑だ。
「んだから、お前等知らねぇだろーけどさ」
「んむ、んむうむむ」
「……篠さん。あなたは口にガムテはるのが趣味ですか?」
「んーむー」「いや、また話の腰折られたら面倒だからオレがはった」
結果、またも話の腰は折られたと。
「意味ねぇじゃん」
「やっぱ甘かったか……」
やっぱて。そしてさらに出したガムテをどうするつもりだ。
……ってか、持ち歩いてんのか? それ。
「…………ぅ……む」
何かもごもご言ってるけど聞こえないな。
「ほら、今度こそすぱっと行け!」
「いや……十日前、俺誕生日だったのに誰も何も言ってくれなかったなーって……これだけ」
十日前が誕生日だったってのに今更気付いた俺も俺だけど。
「……そーだったの?」
「うん、そーだったの」
「おめでと」
「ありがと」
……何かスッキリした。
「ぷはぁっ!」
あ、篠。口のガムテ取るの早かったな。ぐるぐる巻きだったのに。
「おめでと」
「あ、ありがと」
「幼馴染にさえ誕生日を忘れられた可哀そうな奴」
ケンカ売ってんのか。
……我ながら不思議なサブタイ。
夏の誕生日が夏にあることを忘れてて書いたわけじゃないですよ!
嘘です、忘れてました(汗)