211 眠った人での遊び方
「純兄、寝れん」
「そうか。俺は寝る」
「寝れんって言ってるの」
「お休み」
「寝れないんだってば」
「……すー」
「だから相手してよ」
寝たふりはいいから。あたしが眠くなるまででいいから。
忍でーす。
純兄が相手にしてくれません。暇です。
「純兄、妙羅呼ぶよ?」
「止めろ」
あ、起きた。
「んだよ、もう十二時過ぎてんじゃねぇか……」
眠そー。半眼になってる。
「その眠気あたしによこしなさい」
「妹にそのような言葉を使われる筋合いはねぇ……」
「ごめんなさい。その眠気あたしにも分けてください」
「できねぇもん……だから寝る。おけ?」
ぜんぜん『おけ』じゃない。
「つまりは寝れるまで相手してってことなんだけど」
「布団に入って目ぇ瞑ってたらそのうち寝れる……」
「無理」
「即答するな」
十一時から一時間それやってて無理だったんだもん。
「しりとりしよー?」
「キリン。あぁ残念、終わったな。お休み」
腹の上でジャンプしたろか。
「マジカルバナナしよー」
「嫌」
「とりあえず何か相手してよ」
「妙羅達の相手で疲れた」
えー。
「何してきたの」
「タイの尾頭」
えーと、
「タイの尾頭付き食べてきたの?」
「いや、タイの尾頭」
結局何してきたの!?
「すー」
いやこんな気になる事言い残して寝ないでよ。
「ねーってば、純兄」
「薬草採りの手伝いなら今日は無理……」
誰が薬草採りの手伝いなんか頼んどるか。斬じゃあるまいし。
「おーい」
「書類ならそこにおいてあります置物……」
誰が置物だ。妙羅じゃあるまいし。何で敬語?
「もしもーし」
「ここはラーメン屋じゃないですよ……」
電話の相手誰だよ。
……何この純兄。面白い。寝てたらこんな事なるんだ。寝てなかったら言わなさそうなことばっかり。そりゃそうか。
「なっくん呼ぼうかな」
「たいした度胸だ……」
何でっ!?
「ぶくぶくぶくぶく」
「ふぐ? うん、毒あるぞ」
いやいや、聞き間違えてるよ。
「ごぼごぼっ」
「水の中でよくこんなに生きてられるな……」
どんな場面!? 何が起きてるの!?
「深爪~、深爪ぇ~」
「大変ですね……」
誰相手に話してるの?
それより、何で嫌な夢見そうな事ばっかり言ってるのに全部かわすの!?
ってか、どうしてかわせるの!?
よし、次の手!
「滝だー、目の前に滝がある~。落ちる~」
「跳べる事を忘れましたか?」
だから誰相手に話してるんだよ。
うぅーん、他には……。
「このKYめ!」
「んぐっ……」
あ、効果あった! 何か嬉しい。
「空気読めない奴ー」
「んっ……すみませんね……」
謝ったぁ!?
ちょっと拗ねてるような声だけどっ!
うーん、他に何か無いかな?
「あ……真面目くんとか?」
「真面目……? そうでしょうか……」
さっきからずっと敬語だね。何で?
聞いてみよう。
「何で敬語?」
「頭カラッポそうでも上の人ですから……」
皮肉を混ぜるなよ。上の人相手に。
「大きなカブー」
何か突然思いついた。
「おばあさんは孫をどんぶらこ……」
話変わってるよ!? そして何か怖くない!?
「怖い、怖い怖い怖い怖い」
「玲奈、手、痛い……」
玲奈が登場? しかもなにやら摑まれてる? いい雰囲気?
「玲奈、玲奈、玲奈、玲奈」
「俺にサメの歯を向けっぱなしにしているのにはどういう意味があるか言ってみろ……」
悪霊退散! かな?
なんでそうなるの!?
……あ、何かちょっと眠くなってきたな……。
「眠い眠い眠い眠い」
「とっとと寝ろや……」
そうします。