209 全てはノリで進んでゆく
「でもでも~。うぅ~っ……やっぱ、言わなきゃダメかなァ?」
「里山の頭のネジが飛んだか」
「修也、何気に酷いぞその言い方」
何気にどころかモロ酷ぇよ、翔。
岳だ―っ。
オレは見た。里山が俯いたまま背後にいる幽霊と話しているのを。
ってか、皆見てる。そりゃそうだ。里山声でけぇし。
「よ、よしっ! 行ってやるんだよっ! りりは悩まない子だっ!」
『滅茶苦茶悩んでたじゃん』
あ、クラス全員の突っ込みに幽霊も参加。
……ところでこの幽霊、顔が白くない以外は凄く舞妓さんみたいなんだけど、
髪型とか、着ものとか。修学旅行の楽しみが減るからそんなカッコしないでくれ。
「今日の給食、プリンを付けて貰えるように頼んで来よォっ!」
『んな事で悩んでたのか!?』
クラス突っ込みが再び炸裂! まとまってるよなぁ、このクラス。
「と言う訳で先生っ! 行ってきます!」
「いってらっしゃ~い」
「いいのか?」
修也の呟きは聞こえてたようで、せんせはこう言った。
「善は急げ」
『善なのか!?』
プリン付けて貰えるように頼むことが!?
「先生プリン好きなの」
せんせが好きなのはお菓子全般だろが。
「何としても付けて貰うからねっ! 誰か一緒に行こうよ!」
「んじゃオレ行こーっと」
夏休み初め、あんなに幽霊の声怖がってた里山が仲良ししてる幽霊と話してみたいし。
プリンはー……半分ついで、半分本気。オレもプリン好き。
「じゃっ、あたしも行くよ! 璃々」
古閑もなんだかんだでノリいいな。
「じゃーおれもー」
翔はー、どうでもいいや。
「こう来たらやっぱ、お前も来なきゃダメだろ、修也?」
「元から行く気だ」
あれ?
「プリンが付けられることは阻止しないと……」
あ、確か卵アレルギーで食えないのか……。
周りが食ってんのに自分だけ食えないとか悲しいもんなー。
「代わりにヨーグルト」
そこはどうでもいいから。
『ヨーグルトはヤメテ』
「何だよ幽霊。お前食わねぇだろ」
『臭い嫌なの!』
幽霊が何で臭い分かるんだよ。
「大丈夫だよミナコ! ヨーグルトじゃなくて、プリンだから!」
『うん、うん。絶対だね? リリ』
「もちのろん!」
盛り上がってるところ悪いけど。
「里山、ミナコとやらはお前の向いてる方と逆に居るぜー」
「ありゃりゃ? そーなの?」
幽霊の方から動けよ、とか思ったのはオレだけじゃない筈。
「しゅ、修也ぁ……何か、居るのかな……?」
「そこは岳にしか分からねぇっぽいけど……大丈夫」
修也、何が大丈夫なのか三十秒以内で説明よろしく。
「古閑さぁん! 修也様から離れなさい!」
何だよ、今出てきた眼鏡っ子。
「しゅーやさまぁ?」
あ、翔の目が点になってる。文字通り点に。どうやってるんだそれ。
「修也、あれ何?」
「ファンクラブ」
どこの漫画だよ。
「修也ぁっ! 死にさらせ!」
「コラ翔! そんな言葉を使うんじゃない! ちょっと来なさい」
せんせが怒ったぁ!?
「ねぇねぇ! そんな事より早く給食室行こうよォ!」
『私も首をながぁ~くして待ってるんだからぁ』
おぉ、ホントに首がなが~っく……あれ?
「里山」
「うん?」
「そのお前が仲良くしてる奴さ」
「ミナコがどうしたの?」
「幽霊じゃなくて……ろくろ首って言わね?」
「……え?」
いやだって! 首が余裕で結べそうなくらい伸びてるぜ!?
『バレタカ』
「バレるも何も自分からばらしてんじゃねぇか!」
『チッ……仕方ガ無イ。今日ノ所ハコレデ……』
「見つけたぁああああああっ!」
うわぉっ!?
な、何か凄い顔した天が飛んできた!?
……窓ぶち破って。
『キャァアアアアアアアア!』
女子の悲鳴ってどうしてここまで高いのか。どっから出してるんだその声。
「このオバケめ! 私のバナナを返せ!」
猿かお前は!
って、ちょっと待て! 鎌を振り回すな!
「天ちょっと待て、落ち着け」
『そーなのでしゅ! バナナは後でも取り戻せるでしゅ!』
「学舎バラバラになったら、直すの大変だねー」
「霧瑠依は何落ち着いてるでした! 妙羅先輩も!」
「と、とにかく天! オバケは殺すな!」
「クスリ、使う?」
『何煽ってんだよ!』
おー……、何だ、死神様ご一行?
……お化けも流石に引くよなぁ。
っつか、何? このカオスな状況。プリンどこ行った?