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ただいま暴走中!  作者: 呪理阿
八月だけども暴走中
201/410

201 泥棒を見つけました

 暇だ。

 忍でーす。

 大事な事なのでもう一度言います。暇だ。

 おとーさんは仕事、おかーさんも仕事、岳と光は子ども会の料理教室、純兄は朝起きた時にはもう居なかった。

 と言う訳で、あたしは一人でお留守番。

 うーん……。

 やることやっちゃったしなぁ。

 パソコンちょっといじって、広辞苑ぱらぱらして、おかーさんの隠したお菓子探し&つまみ食いに、読みかけの本読破、メインが納豆ごはんのお昼ご飯。

 やることやっちゃったなぁ。

 一人寂しく勉強してようかな? 何で受験生のくせしてさっきのやることの中に勉強がなかったの、とか突っ込まないで。

 気分じゃないなぁ。

 なっくん家にでも遊びに行こうかな?

 がたたっ

 ……二階から音が。

 はてさて、なっくんか泥棒か。それとも純兄帰ってきたとかかな?



 わぉ。泥棒発見。すげぇ。

 何がすごいって、家の中に誰もいないのかよく確かめずに、それも真昼間から入ってくるその度胸がすごい。

「うぉおおおおお!? ほ、宝石発見!?」

 しかも大声出してるし。珍種だな。写真撮りたい。

 ……の前に通報だよね。はい百十番。

「はい、御用の方は近所の交番までどうぞ」ガチャ

 ……え。

 な、なんかCMの『今すぐ近くの○○まで!』みたいに言われたんだけど。

 どうしよ、とりあえず再チャレンジ。

「御用の方は「泥棒が来ました」頑張ってください」ガチャ

 いやいやいやいや。何のための警察だよ!

「な、なんか声が……」

 あ、泥棒に聞こえてたっぽい。一階で電話してたのに。時刻耳だな泥棒。

 あたしもか。

「確かめてみるかっと」

 相手がナイフか何か持ってたら、あたしピンチだよねぇ。

「よっこらせ」

 泥棒に入った家で座ってたのか? しかもおっさんくさっ。

「……え?」

 うん?

「ぎゃぁああああああっ!」

 えっ?

「で、出たっ、出たぁっ!」

 何が出た?

 気になる。行っちゃえ。



「ひぃいいいいいい」

 みっともなく腰を抜かすおっさん泥棒の側で。

 霊体の純兄が、ルービックキューブ、ビーズのねずみくん、紐でできたボールでお手玉してた。

 ……純兄お手玉三個で出来るんだー。

「お帰り―」

「ん」「ひぃっ!?」

「泥棒はおいでませ」

 震えてる震えてる。

「こ、ここの家の……?」

「長女です」

「い、いつから居たっ!?」

「始めから」

 青ざめてる青ざめてる。

「ねぇ、何かこの人可哀そうになってきたんだけど」

「だ、誰に言って……」

「軍服純にー」

「制服なんだよッ!」

 あ、照れてる。

 死神の制服って軍服なの? いや、漫画で見たそれに似てるなーってだけなんだけど。

 何と言うかね……んと、学ランのボタン全部取って、代わりにチャイナ服の前止めてる奴みたいな紐がついてて、あ、学ランって言うにはちょっと長いかな。全部真っ黒。

 死神のイメージが若干崩壊中。

 あれ? 確か妙羅と最凶トリオは和服だったし、盗人姉弟はローブだったような……。死神って、決まり緩いのかな。

「ぐんぶくじゅんにー……? この部屋には誰も……」

「居るよ、そこに。ほら、アンタの隣でお手玉……あ、もうやめんの?」

 あ、落ちたビーズのねずみくんが泥棒に直撃。

「痛っ。ま、まさかさっきから色んなものが勝手に動いたのは……」

 色んなもの? 純兄何動かしてたの。

「うちの兄さんの仕業ー」

「にいさんって、まさか……」

「幽霊じゃないよ」

「ほ……」

「死神」

「ぎゃああああああああっ! お化け屋敷!」

 人聞きの悪い。こら、逃げるな。

「捕まえろよ」

「純兄が行ったんだもん。だから行かなかったんだもん」

「ぎゃあああああっ! 襟首を死神に掴まれたぁっ!? 死にたくない! 俺には娘が……」

「こら、人を殺人鬼みたいに言うな」

「ひぃっ!?」

 泥棒さん、後ろ見ようよ。

 あんたをつかんでるのは人間の純兄だよ? 軍服も実体化。おぉ、意外と手触りいいなコレ。

「んで、忍、警察は?」

「呼ぼうとしたけど切られちゃって。日本大丈夫か」

「んじゃ、とりあえず紐。ロープ希望」

 無いわい、んなもん。

「……と思ったら何か目の前に転がってたりね。何故に」

「知るか。よこせ」

「ほいさ」

 何か……。

 泥棒縛る動作が馴れてるように見える。死神ってなんだっけ?

「よし。交番にでも届けてくるか? 落し物っつって」

「ちょ、待て! 俺には娘がぁっ! 命だけはっ!」

「テメェは俺を何だと思ってんだ」

「へ? 死神って……さっき……」

「分かった。死神を何だと思ってやがる」

「人を殺す神様」

 様つけるんだ。へぇ。

「人を人殺しみたいに言うなコラ」

「だってぇっ!」

 うるんだ瞳で行っても可愛くないよ、いい年したおっさんなんだから。

「ねぇね、なんで家来たの? それもこんな真昼間に。馬鹿じゃない?」

「本能には従う主義なん――」

 あ、蹴られた。思っ切り蹴られた。

「単なるアホだろ」

「金が欲しかったから……」

 あれ、純兄が何か考えてる。

 あ、考えるのやめた。

「今回特別。次はねぇぞ」

「見逃してくれるんですか!?」

 敬語になった!?

「これやる」

 純兄が渡したのは……ほーせき?

「い、いいんですか兄貴!?」

「ん、誰が兄貴だ」

「じゃあ親父!」

「ぶっ飛ばすぞテメェ」

 手がボキボキ言ってるよー。

 そりゃあね、何が悲しゅうておっさんに親父呼ばわりされにゃならんのだとは思うわな。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

 ほんとに本能に従う主義なんだね。多分生存本能使ったよね今。



 その泥棒。

 連絡先だけ聞き出して帰してあげた。

 純兄曰く、連絡先を聞いたのはいつか利用できるかもしれないとかなんとかかんとか。

「ところで純兄、さっきの宝石。お給料じゃないの?」

「んにゃ、あっちはプラスチック。せっかく苦労して手に入れたモンをそうそう他人ひとに渡すか」

「……詐欺師だ。詐欺師がここに居る」

 純兄の新たな一面を発見。

 セコい。

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