200 アイスの力
「純兄ずっこい!」「岳お兄ちゃんずるい~!」
「ん、ずるい。だから何」「別にずるくねーよ! 早い者勝ち!」
この辺が違うんだなぁ。
忍でーす。
ちょっと光と買い物行ってて、帰ってきたらなんと六本入りアイス……でもそのうち四本は兄妹四人で食べたから残り二本。が、消えてなくなっていました。
そこら辺に居た子供の霊により、その犯人は純兄と岳という事が判明した!
ちなみにその子供の霊は純兄に見つかった瞬間成仏した。オーラか何か出てるのかうちの兄ちゃん。
「むう~っ、食べたかったぁ~!」
「もう残ってねーんだから諦めろよ!」
「やだ~っ! 岳お兄ちゃんと純お兄ちゃんだけ食べたのが許せない~!」
あたしだったら許してくれたのか? まさかね。
「食~べ~た~い~! 食~べ~た~い~っ!」
見た感じ、おもちゃ屋の前でダダこねる幼児。うん、まだ四年生だしね。九歳だしね。一桁だしね。
「あー、聞こえない聞こえなーい」
「岳お兄ちゃんの馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿~っ!」
「何でオレだけ!? て、ちょ、痛っ、おい」
連続パンチー。一発に大した威力なくても回数重ねると痛いよね。
「馬鹿ぁ~っ!」
「泣くなよっ!」
「楽しみにしてたのに~! ふぇ~っ」
「ん、岳、泣かせたな」
「にーちゃんも共犯だっつの!」
光の大好きな小豆&抹茶バーだもんなぁ。渋い。
「ところでさー」
「いや、なに何もなかったかのように話変えようとしてんだよってうわ! 光、ちょっ、痛い、頭突きしない!」
思いついたときに言わないと忘れるでしょ?
「こないださ、いや、一週間以上前だけど。あたしが楽しみにとっといたバナナチョコアイスが無くなってたんだよねー」
「…………」
あ、純兄だな。純兄に間違いない。
理由? うん、ちょっと小指の先が動いたから。
「純にー。何でだろうねー」
「何でだろうな」
最初の小さなぴくっ以外にはまるで動じないんだから困る。
「食べたでしょ」
「うん」
「ってあっさり認めんの!?」
「悪いか?」
うーん……。
「あたしのバナナチョコアイスを食べたのは悪い」
「そうか」
「うん」
「で?」
え? 『で?』とか聞かれてもなぁ……。
「んー、だから買って」
「買って買って買って買って~!」
「……後ろの声と合わさると怖ぇな」
「じゃ買ってくれる?」
「いや、テメェ関係ねぇだろ」
ばれたか。
「買ってくれるのくれないの!?」
「……よし」
おーっ、買ってくれるの?
……と、思ったら。
純兄が行ったのは冷凍庫。中から出てきたのは……
「パピコチョココーヒー味!」
「一本やる」
やったやった! こっちの方が好きなんだよね、あたし。
「うー、美味し。つべた。ね、純兄」
「ん」
『あ~っ! いいな!』
うん、で、次は『頂戴』でしょ。
『ほい』
『何も言ってないのにくれた!?』
文句あるならやらんぞ。いや、純兄に貰ったやつだけど。
食べさしだけど、いいよね別に。兄妹だし。
「あむ~。おいし~。純お兄ちゃんのも~」
「オレもオレも!」
…………。
「純兄」
「あ?」
「何かいっぱい残ってるじゃん。頂戴」
「あっ。何でいきなり食いつくんだよ! まだあんじゃねぇか」
「あむ~」
「ちゅー」
『あ゛っ』
こうして、パピコチョココーヒー味をめぐる争いが始まった。
一分で終わったけど。