198 温泉だぁっ!
「皆の者、温泉じゃ!」
「温泉だ~!」
「温泉だぁっ!」
「温泉じゃぁ」
「温泉温泉!」
「温泉じゃね」
「おんせんー、ねっ!」
温泉温泉五月蠅いわ。
忍です。
言わなくても分かるでしょうが、温泉に来ています。
近所だけどね。徒歩三十秒だけどね。
うわ、改めて言ってみると近っ。
「さあ、準備はよいか皆の者!」
『お~っ!』
「飛び込めーっ!」
『おぉ~っ!』
さぁ、誰が最初にあの、アツアツホカホカ気持ちいい大きなお風呂にダイブするのかーっ! って、
「飛び込むな馬鹿がっ!」
『えー』
あ、そこはちゃんと止まってくれるんだ。
「飛び込むのは体洗ってから! おけ?」
「今日のお姉ちゃん純お兄ちゃんみたい~」
純兄が飛び込むことを許可するようなこと言うかなぁ?
いや、純兄はこう言う事痛い目見るまで言わないかな。
「しのぶぅー、ポンポンきれいきれいしたらとびこむねっ!」
そうして下さい。
「菜月ちゃん、頭も洗わなきゃダメ」
小四組メンバーその四、麗美ちゃんことれーちゃん。お姉さんだ!
いや、何かよく分かんないけどこの中で一番お姉さんだと思う。あれ、何か負けた気分。
「そうそう、頭の中身も洗わなきゃダメ」
何を言っとるんだこの小四組メンバーその五、愛弓ちゃんは。
「誰が早く体と頭洗えるか競争じゃよ! よーいどん!」
よーい、の所で何の用意をすればよろしかったのでございましょうか。
「いっちばん!」
「皐月姉、おっとなっげなーい!」
たっちゃんに大人げないとか言われてるぞ皐月姉。いいのか?
大学生として、浪人生かもしれないけどそれでいいのか!? 別にいいんだろうな、この人だから。
「ぼぶぼぶぅー」
「菜月ちゃん、動かんちょって」
「そうそう、カチコチになって!」
菜月ちゃんは凍らされてるのか?
「はーちゃん~、楽しそうだね~、あの全身泡だらけ~」
「そうだね、やったげる!」
「あ、満も手伝うっ!」
「コラそこっ! 石鹸の無駄遣いをしない!」
ボディーソープのボトル、空にするつもりか!?
『はぁ~い』
うん、素直でよろしい。
「れいみぃー、あいみぃー、飛び込むねっ!」
「ダメ、静かに入るの」
「そうそう、どぼーんって行ったらごぼごぼってなって、チーンじゃよ!」
効果音ばっかり。最後のチーンって、おい。
「うぅー」
「菜月たん! ほら! あたいの胸に飛び込んで……目を逸らすな! ちょっ、何でみんなして遠ざかってくん!?」
いや、だってぇ。
「ひかりぃー、こっちろてんぶろ? ねっ」
無理やり『ねっ』てつける必要がどこに。
「そうだよ~、行ってみようか~」
「ひかりぃー、こんよくってかいてあるよねっ?」
『読めるの!?』
天才幼児だ。うん。間違いなく天才幼児だ。
「どうしよっか。混浴って書いてあるとちょっと……」
「そうそう、でれーっな男どもが居たらちょっと……」
愛弓、ちょっと黙っとこ?
「れいみぃー、なつきさきいくねっ!」
「そりゃ菜月たんなら問題欠片も無いわな」
「でも、こんな小っちゃい子だけで行くのは危険じゃけん、ウチも行く!」
れーちゃん菜月ちゃん行ってらっしゃぁい。
止めないよ? 別に。
「えっ!? 行くの!?」
「混浴の意味分かってる!?」
「知っちょーよ、そんくらい!」
『言ってみ』
「大人と子供が一緒に入る!」
何でだよ!
『はいちょっと帰りなさーい』
「え、でも菜月ちゃんが……」
もう行っちゃってます。
「はい、それではれーちゃんに混浴の意味を教えます」
「うん」
「男女一緒のお風呂! 分かる?」
「ふぇええええええ!? あうあうあっ」
うわ、れーちゃんテンパってる。
ほんとにわかって無かったんだね……。
「あれ? ところで香ちゃん知らない? ねえ、忍ちゃん!」
あれ? 居ないの? 香ちゃん。
「知らないよ?」
「香ちゃんならさっき菜月ちゃんに付いて露天風呂に」
愛弓ちゃん、何故止めなかった。
「なら私も行こ~っと~」
「えぇえええ!? ひ、ひーちゃんが行くならウチも!」
「じゃ、あたいも!」
「満も、行こうかな……」
あれ。残ったの、あたしとれーちゃんだけじゃん。
「……れーちゃん、ほかのお客さんもいないことだし素潜り勝負でもしよっか」
「……うん」