196 皆大好き肝試し! 最後なのに腹黒の巻
「上に一反木綿、前にのっぺらぼう。左右に子どもに、後ろに火の玉……ねぇ」
龍城さん、冷静じゃけど……。
何じゃの? このカオスな状況。
香じゃよー。
肝試しに、良雅くんの弟ちゃん妹ちゃん連れて回っちょんじゃけど……。
幽霊に遭遇。おまけに囲まれちゃった。
……どうしよう。このオバケ達で遊んでみたいんじゃけど。
「龍城さん、どうしよ」
「龍城でいいっすよ」
でも年上じゃもん。
「たつきぃー、オバケって本とに居るんじゃねっ!」
「かおりぃー、帰れるよねっ?」
帰れるよ。オバケに対してどんな想像抱いちょるん? 聞いてみたいじゃないか。
「ところで香さん、やっぱり火の玉って熱いっすかね」
「そりゃ熱いじゃろー。仮にも火じゃけん。熱なかったら似非火の玉じゃ」
オバケだから実態なくて熱さも感じませーんっ! って言うんならちゃうじゃろけど。
「たつきぃー、熱くないねっ!」
「かおりぃー、意外とこいつ固いんじゃねっ!」
似非火の玉じゃったんか。
「んっ」
しかも龍城さんの裏拳であっさり撃退されちょうし。
「弱っ」
「笑顔で向こうにとっちゃぐさりと来そうな事いいやすね」
あは。
「龍城さんも、触っただけじゃ自分に害が及ばんってわかった途端思い切り殴っちょんね!」
「バック取られたら殴り倒したくなるんすよー」
わぉ。
「こっちからは殴るけど絶対殴られたかねぇんすよー」
腹黒なんかなー?
「前のと上のも撃退出来る?」
「撃退はしねぇっすよ。捕まえるだけで」
「あーっ! 分かった、何か使えることに使う気じゃろ?」
「御名答ー」
腹黒じゃねー。
「ゆーきぃー、たつきもかおりもこわいものなしだねっ!」
「そうだねなつきぃー、あこがれるねっ!」
こうして腹黒予備軍が出来ました。
うーん、火の玉はまぁ、間違いなく明かりじゃろ。熱くないんじゃったらコンロの代わりには出来んし。
一反木綿はー。うーん。後で考えよ。
のっぺらぼうは普通にお手伝いさん出来そうじゃよね、だって顔がないだけで普通に動いちょうもん。
「さて香さん。一反木綿どうやって捕まえやしょう」
ありゃ、のっぺらぼうぐるぐる巻き。簀巻き。海苔巻。食べたいなぁ……。あ、のっぺらぼうをとちゃうよ!
「一反木綿ウチ任せ?」
「自分が頭使わなくていい時はお休みさせとく派っす」
「そしてどんどん馬鹿になっていくんじゃね」
「寝る子は育つって言うじゃないですか」
「たつきぃー、たつきのあたまのなかでは、おやすみ=ねるなんじゃねっ!」
……あんな事言っちょるけど、人がどうやって捕まえるか見るつもりなんじゃろうなぁ。
どうしよう。
「その前に龍城さん、一反木綿って何か利用価値ありますかね?」
「あの木綿の体で家じゅうの拭き掃除してもらう、とかどうっすか? 他にも気に入らない奴の首絞めに行かせたり、あれに乗って空飛んだりとかもできるんじゃないっすか?」
おぉー、いいね、一反木綿。便利じゃね!
「あっ」
「え?」
「たつきぃー、いったんもめんにげちゃったねっ!」
「かおりぃー、ざんねんじゃったねっ!」
……うん、残念。
「ところで龍城さん、火の玉って譲ってもらえる?」
「一千万ほどでいかがでしょう」
高い。
「かおりぃー、よくかんがえなきゃダメじゃねっ!」
「かおりぃー、おかねはだいじじゃねっ!」
勇気くん、菜月ちゃん。ちょっとだまっちょってもらえるかな?