195 皆大好き? 肝試し! になってるか? の巻
「怖いよー怖いよーひーちゃん怖いよー」
「ね~、満ちゃん~。それって私が怖いって事かな~?」
こんに……間違えた、こんばんは、忍です。
いったい何がどうしてこうなったのか、純兄と一緒に光、はーちゃん、満ちゃん、なっくんをビデオで撮影しています。
えー、もう一度言います。何がどうしてこうなったのでしょうか。
皐月姉にやれって言われたからだけどね。理由は分かってるんだけどね。
「ひーちゃんは何でそんなに落ち着いてられるの!? お墓だよ!? 夜だよ!? お化けとか幽霊とか妖怪とかあとえー……とにかくそんなのがぶらぶらほっつき歩いてんだよ!?」
不良か、そいつら。
「そんなところを土足で踏み荒らしちょんよ、満達」
「墓に土足で来るのは当たり前だろ」
純兄、一応隠れてるんだから小声にしてよ。激しく同意するけども。
「ねー純兄、なんであたし達二人でやんなきゃいけないの? これ」
「皐月姉に聞け」
皐月姉ー、なんでこれ二人でやるのー?
『きゃぁああああああッ!』
え? 何? 何かあったの?
「はーちゃん~、満ちゃん~、どうしたの~?」
『あれっ!』
二人の指差した方を見ると……んと、
「ん、あんまんだな」
どこが悲鳴あげるポイントなのあれ!?
『ちっちゃな幽霊が出たぁっ!!』
ちっちゃすぎるだろ。
「大丈夫だよ~、ほらほら~、パクッ、もぐもぐ、ごっくん。ほらね~」
『ひーちゃんが呪われるぅッ!』
「罰当たるぞ、ひーちゃん」
「なっくんも食べてるじゃん~」
お供え物食うなっ! 罰当たる前に腹壊すわ!
「全く、問題児だらけだな。さっさと行くぞー」
お前も問題児の一人だろうが!
「わ~、凄いよあそこのお墓~。コーンスープがお供えしてある~」
どんな家だよ。会ってみたいな。
「ひーちゃん、このスープ固ぇぞ? 茶わん蒸しじゃね? これ」
「スープ皿なんだけどな~、これ~」
しかも平たい。
「ますますそこの家の人に会ってみたい」
「おい忍、よく見ろ、墓の名前」
ん?
“枝里家”
「なるほど」
「な」
なんっかよく分からんけど納得してしまった。
「二人ともッ! 早く行こうよーッ!」
「ただでさえ怖いんじゃけぇ、祟られるかもーっ! なんて余計に怖くせんといてよ!」
そもそも人ん家の墓に勝手に入るな。
「おー、はいはい」
「早く行こ~」
早く行こ~、って言われてたのはアンタだ、光。
「じゅぅうううん!」
「あ?」「ん?」
あれ? 背後から何か声が。
背後から、すぅっごい恨んでるようなこっわぁい声が。
「てんめぇ仕事サボるとはどういうこっちゃ!」
「何か訳の分からんことに引き込まれて」
龍城……さん? どうやって引き込んだんだろう。
「この真面目くんのくせして、サボるとはどう言う事だ! 俺に仕事が回ってきたやんけ!」
関西の人? にしちゃ標準語も混ざってるなぁ。
「にしても……純兄、仕事も真面目くんなの?」
「『も』って何だ、こら」
だってぇ。夏休み入ってからほぼ毎日勉強してるし。
……あ、しなきゃいけないのか、受験生。えー。
「お前、家でも真面目くんなんか?」
あ、何かすっごい呆れたような顔してる、この人。
「だから、『も』ってなんだ、こら」
『だってぇ』
「だってじゃなくて。何しに来た、忍」
「あたしいちゃいけないの!?」
軽くショックだよ!? しかも今来たわけでもないのに!
「……妹ちゃんも忍っていうと?」
あ、忍ってこの人の事か。
「あぁ」
「ふーん、よろしく、忍ちゃん!」
ニパーとか言う効果音つきそうだなー、この笑顔。そして胡散臭いなー。
「え、あ、よろしくです」
で、この人は結局何しに来たんだよ。
「忍、結局テメェは何しに来たんだ」
「あ、そうそう。てんめぇこの、真面目くんのくせに仕事サボるとはどう言う事じゃぁああああっ!」
楽しそうだね、怒鳴るの。
「ん。妙羅は何て?」
「部隊長なら座布団枕にして寝てる」
……何だろ、想像するのが難しい。
って言うか部隊長って何の部隊長? それって偉いの? いや偉いだろうけど。妙羅の態度からして。
「流石置物。そのままゴミ捨て場にでも捨ててやれ」
「おぅ。 ……って違う! 早く来い!」
「んー。何処?」
あ、すっごいめんどくさそう。
「ずっと東の方じゃ、オラ行くで!」
あのさ、さっきから思ってたんだけど。この人どこ出身?
「……わぁったよ」
「えーっ、ちょっと、皐月姉達に何て説明しろと!? 純兄行っちゃったら……」
最後まで言う前に行かれちゃったよ。
「お姉ちゃん~! ついて来てるんでしょ~? 早くおいでよ~!」
うー……まぁ、いっかぁ。