191 お墓参りはお静かに
「おー、色々久しぶりだー」
「色々も何も墓しかねぇぞ」
「いやほら、肝試しよくやってし」
お墓一周してくるの。結構広いからホントに出そうだったなぁ。
いや、ホントに出てたんだけど。
「あまり感心出来ないがな」
「何故に妙羅さんがこんなところにいらっしゃるのでしょうか」
「私の仕事エリアだからな。お盆は霊が多くて死神が一人一エリア任されるからサボれない」
真面目な顔して何を言うか。
普段サボってんのかアンタ。
「あーっ! 高山家! 帰っちょったん?」
まとめたな、女の子……って。
「おぉっ! 皆の妹香ちゃん!」
「古」
にっこりばっさり。
枝里香ちゃん、たまに不思議な行動をすることからあだ名は不思議ちゃん、とは誰も呼ばないけど。
えりかって読めるけど、そう言ったら怒るので要注意ー。
でもよかった、あたしの方がぎりぎり背、高い。なんとなく香ちゃんに身長では負けたかない。
「香ちゃんもお墓参り?」
「ううん。墓参りは昨日したけん、暇つぶしに来ただけ」
暇つぶしにお墓へ? やっぱり不思議ちゃん。
「ここ、空開けてるから好きなんよー」
入道雲がもくもく。あ、あの雲狸に似てるー。
「でも、予定変更! 皆に帰ってきたこと教えちょくけん、後で来ぃよ! んじゃっ」
おー、足速い。
……あれ。
「にーちゃん、今香ちゃんどこに行けばいいのか言ってなかったよな」
「そのうち気付くだろ」
おぉ、あっさり。
「三人ー、水!」
『は-い』
おばーちゃん元気だなー。何歳だったかは忘れたけど。
「返事は短くしぃよ!」
『ん』
「…………」
あれ、なんでおばーちゃん黙るの?
短くしたよ? 一文字だよ? 一音だよ?
「わっ!」
『わぁっ!?』
「やっほー。元気か者ども!」
『…………』
心臓に悪いのでやめてください、…………えっと。
「誰だったっけ?」
「酷っ!? 皐月! 水無月皐月!」
「あぁ、順番が逆な奴」
「あいっかわらず口悪いな、純ちゃん」
あいっかわらず突然出るね、皐月姉。今大学生のハズなのに。
……あれ、浪人生だったかな。
「おりょっ、この可愛ぇのはまさか光たん!?」
「そうだよ~」
おぉ、可愛いの否定しない。いや、あたしも否定しようとは思わないけど。姉馬鹿?
「おっきくなっちょんなー。追い越されたらいかんな、牛乳調達させにゃ」
いったい何に調達させる気で?
「まずは牛じゃな」
『そっからか!?』
「ビバ★生乳!」
ダメだこの人。色々突っ込んじゃダメな気がする。
「と言う訳で、行きんさーい! ゴー!」
今何に命令した、この人。
何か向こうの草むらでがさがさって音がしたけど。
「たけー!」
「おぉおおおっ! たく! 誰が竹だっ!」
「誰が宅版だ!」
『誰もんなこた言ってねぇっ!』
はいはい、息ぴったりだね。
会うたびにこんなことしてて疲れないのかなー。
たくって、七草卓也って言うんだけど……何か岳と仲良かったんだよね。同い年だからかも。
……ところで、あたし等はわざわざ墓で何をやっとるんだ。